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令和3年(2021年)5月27日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律の成立について

 「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が5月21日に成立したことを受け、26日の定例記者会見で、中川俊男会長は、都道府県医療計画に新興感染症等への対策が追加されたことを評価するとともに、前倒しでの実施を求めた。

 中川会長は冒頭、9都道府県に発令されている緊急事態宣言を政府が延長する方向で検討しているとの報道に触れ、「緊急事態宣言の期限を日数ではなく、陽性者の減少や病床逼迫度の改善が達成されれば解除するという成果型にすることを提案してきたが、具体的な目標も提示されず、かつ決定打もないまま、更に延長されようとしている」と指摘。医療提供体制の逼迫度を鑑みれば、緊急事態宣言の延長に同意するとの姿勢を示す一方、「多くの国民は度重なる延長に疲れ切っている。今回を最後と心得て、政府には改めて具体的な対応策を示して頂きたい」と要望した。

 今般の医療法等改正法については、1.医師の働き方改革、2.医療関係職種の業務範囲の見直し、3.医師養成課程の見直し、4.新興感染症等対策の5疾病5事業への追加、5.「病床機能再編支援事業」の地域医療介護総合確保基金への位置付け、6.外来機能報告と「医療資源を重点的に活用する外来」、7.持ち分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長―の7点に分けられるとした上で、4.5.6.に対して、日本医師会の見解を述べた。

新興感染症等対策の5疾病5事業への追加

 中川会長は、日本医師会がこれまで都道府県医療計画に新興感染症等への対策を追加するよう主張してきた経緯から、医療計画(5疾病5事業)の6番目の事業として追加されたことを高く評価。改正法の施行は、2024年から始まる医療計画に合わせるため、2024年4月とされているが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大は依然として予断を許さない状況であるとして、医療計画における新興感染症対策事業の検討、施策の実施を前倒しで進めることを国に要請した。

 今後については、平時の対応と有事の対応を整理して具体的な計画に落とし込んでいく必要があるとして、1.マスク、個人防護具、人工呼吸器、ECMOなどの資材の備蓄、2.医療従事者、特に専門スタッフの確保と病床の確保―が重要であると説明。

 2.については、「新興感染症が発生した時に急いで病床を確保するのではなく、重症者病床はどの病院の何ベッドか、中等症はどの病院か、軽症や後方支援病床はどの医療機関かを、通常医療への対応も踏まえて定め、それを毎年更新する。その際に、地域医療構想の病床数の必要量についても、新興感染症への対応いかんによっては見直す必要もあると考える」と述べ、厚生労働省が具体的対応方針の再検証対象医療機関として発表した医療機関約440病院の中にも、新型コロナウイルス感染症への対応において地域で重要な役割を果たしてきた病院もあることから、再検証対象医療機関の役割について、新興感染症対策事業を含めて改めて見直す必要があるとした。

病床機能再編支援事業

 昨年度創設され、今回の法改正で地域医療介護総合確保基金の事業の一つに位置付けられた病床機能再編支援事業(いわゆるダウンサイジング補助金)に関しては、「地域医療構想調整会議が重要な役割を担うが、議論が停滞しているところがある。財政当局は、地域医療構想を病床削減ツールとして利用しようとしているが、地域医療構想は、自主的な収れんを理念としており、調整会議で関係者が地域の実情を踏まえた議論を行うことが重要である」と強調。地域医療構想の理念を確認し、調整会議の議論を活性化できるよう、日本医師会としても支援を続けていく意向を示した。

外来医療機能

 外来医療機能については、外来機能報告を基に、地域医療構想調整会議を活用するなどして、「医療資源を重点的に活用する外来」を基幹的に担う医療機関について協議を行うことになっているが、「医療資源を重点的に活用する外来」は、手上げを基本に自主的に進める点がポイントであると強調。今後、厚生労働省に設置予定の検討会で詳細な議論が行われる見通しであるとして、「データ至上主義ではなく、地域の実情を踏まえた血の通った議論が必要であり、それこそが調整会議の役割でもある」とした。

 最後に中川会長は、調整会議が地域医師会、医療関係者の負担になりつつあることにも言及し、「国には、調整会議の役割を整理して示し、議論がスムーズに進むよう財政面も含めた支援をして欲しい」と要望。

 更に、「今回の医療法等改正法は、医師の働き方改革を適切に行うだけでなく、有事にも強い医療提供体制を構築し、2025年に向け、各地域が"自主的に"医療機能を収れんしていくことを後押しするものでなければならない」と述べるとともに、日本医師会としても、地域医療の現場の声を具体的な制度設計に生かしていきたいとした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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