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令和3年(2021年)7月5日(月) / 日医ニュース

「鬼=疫病」

 アニメ「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」は大正時代、東京・山梨・埼玉にまたがる雲取山を舞台としている。主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)が炭を売りに出た後、一家が鬼に襲撃、惨殺され、唯一の生き残りであった妹の禰豆子(ねずこ)も、鬼の血を浴びて鬼になってしまう。炭治郎は妹を人間に戻すため、政府非公認の鬼狩り集団「鬼殺隊(きさつたい)」に入り、鬼との戦いに身を投じる物語である。
 「鬼滅の日本史(小和田哲男監修)」の中に次のような記述がある。「鬼=疫病」。日本の伝統行事である2月の節分は、疫病を祓(はら)うためのもので、季節の変わり目に鬼を祓って健康を祈願している。つまり「鬼は外」であった。
 「鬼滅の刃」の中で、鬼と疫病の関係が象徴的に表されているのが鬼の始祖、鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)との最終決戦だ。日輪刀(にちりんとう)による斬撃だけでなく、鬼でありながら人間側についた医者「珠世(たまよ)」によって、①人間に戻す②分裂「回復」を阻害する③細胞を破壊する④1分で50年老化する─ことができる薬が投与される。
 また、その際に、無惨によって鬼化した炭治郎が人間に戻れたのは、鬼から人間に戻ることができた禰豆子を嚙んだ際に、無惨の細胞に対する抗体を持つようになった禰豆子の血を摂取したことが一因だと語られている。これは正に免疫獲得と、その血による血清治療と言えるだろう。
 コロナ禍、昨年から大ヒットしているこの作品のDVD、映画の描写が素晴らしいことは言うまでもないが、登場する人間・鬼にいろいろな思いを感じながら、全て観てしまった。
 コロナ感染症もワクチンと薬で早く殲滅(せんめつ)したいものだ。

(禿)

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