政府が新型コロナウイルス感染症患者の入院の対象を重症者や重症化リスクがある人とし、それ以外は自宅での療養を基本とする方針を示したことを受け、中川俊男会長は8月4日定例記者会見で、新型コロナの患者にどのような医療を提供するのかを判断するのは、あくまでも患者を診察した医師であることを強調した。
中川会長は、政府が8月2日に、感染急増地域での入院の対象を重症者や重症化リスクがある人とし、それ以外は自宅での療養を基本とする方針を示したことにより、全国の医療現場の最前線から、「中等症の人が入院できないとなると、急変の兆しの発見が遅れて、重篤化するケースが増えるのではないか」などの心配や懸念の声が多数寄せられていることを報告。
入院については、「中等症IIはもちろん、中等症Iの患者についても、現場の医師が重症化のリスクが高いと判断すれば、入院の対象とすべき」との見解を示し、3日に総理官邸で開催された政府と医療関係団体の意見交換においてもその点を確認したところ、菅義偉内閣総理大臣、田村憲久厚生労働大臣から、重症化する患者にしっかりと医療が提供できることが重要であり、医師の判断の下で対応して欲しい旨の回答があったことを説明した。
また、菅総理からは、自宅療養者の状況を往診やオンラインで確認して欲しいとの要請もあったとし、「往診もオンライン診療も、24時間常につながっているわけではなく、看護師が常駐している宿泊療養や、入院中のようにすぐに処置ができるわけではない。政府は、家庭内感染の恐れがない場合は自宅療養を基本とするとしているが、一人暮らしの方の不安も計り知れない」と指摘。通常の診療よりも時間を要する往診やオンライン診療の増加は、通常の外来医療やワクチン接種にも影響を及ぼすとして、「自宅療養への急激なシフトは、患者にとっても医療現場にとっても大きな負担をもたらす。自宅療養への支援はもちろんだが、入院が必要な患者さんは、適時適切に入院ができるよう、政府にも対応して頂きたい」と強調した。
更に、全国の地域医師会において、自宅療養者の健康観察等に関する工夫が凝らされる中で、地域によっては宿泊療養を拡大強化する方が、より効率的で看護師の24時間対応も可能になるとの声も多いことを踏まえ、厚労省に働き掛けていく意向を示した。
この他、政府から「抗体カクテル療法」を入院患者以外も使用できるようにする方針が打ち出されたことに対し、十分な供給量を確保して使用するよう同意したことを報告。一方、本剤は緊急的な必要性が認められ特例承認された経緯から、アナフィラキシーなどの副作用や安全性についての慎重な検討を行うだけでなく、投与後、一定時間の経過観察が可能な病院などで、外来への使用の知見を早急に蓄積・検証した上で、外来や在宅等で柔軟に使用することを要請したことを明らかにした。
その上で中川会長は、「新型コロナウイルスとの闘いが長く続き、全国で感染爆発が始まっている中にあっても、通常の医療との両立は堅持しなければならない」と強調。この難局を乗り越えるために、国、自治体、医療関係者で一丸となって取り組んでいくとした。
問い合わせ先
日本医師会 健康医療第2課 TEL:03-3946-2121(代)