猪口雄二日本医師会副会長/全日本病院協会会長は、8月18日に田中雅英全国老人福祉施設協議会副会長、前田雅晴全国老人保健施設協会事務局長らと共に厚生労働省を訪問し、正林督章健康局長に田村憲久厚労大臣宛の要望書「新型コロナウイルス感染症における濃厚接触者となった医療従事者、介護従事者の就労要件について」を手交した上で、会談を行った。
新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者である濃厚接触者に対する外出自粛要請への対応については8月13日に厚労省から事務連絡が発出されているが、同要望書は、1.現在、東京都を始め、全国的に感染者が急増している、2.特に介護人材の逼迫度が深刻である―ことに鑑み、日本医師会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、全国老人保健施設協会、全国老人福祉施設協議会の連名で作成されたもので、新型コロナに従事している以外の医療従事者、介護従事者についても、就労要件の緩和を求めるものとなっている。
会談の中で猪口副会長は、「若年世代間で新型コロナウイルス感染症の感染が急拡大したことで家庭内感染も増加し、医療機関や介護施設に勤務する若い従事者(新型コロナワクチン接種済み)が濃厚接触者となり、14日間の健康観察(自宅待機)となるケースが増えてきている」と説明。そのため、各施設において一時的に人員不足となり、とりわけ介護施設においては、そもそも介護従事者数が慢性的に不足気味であるため、業務に支障を来たしているとして、厚労省から8月13日に発出された事務連絡により、医療従事者が濃厚接触者となった場合でも、1.新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療従事者である、2.新型コロナウイルスワクチンを2回接種済みで、2回目の接種後14日間経過した後に、新型コロナウイルス感染症患者と濃厚接触があり、濃厚接触者と認定された者である、3.無症状であり、毎日業務前に核酸検出検査又は抗原定量検査(やむを得ない場合は、抗原定性検査キット)により検査を行い陰性が確認されている、4.濃厚接触者である当該医療従事者の業務を、所属の管理者が了解している―ことという条件を満たしていれば、14日間の健康観察の対象とはならないとされたように、介護従事者についても同様の扱いとすることを要望した。
老施協の田中副会長は、特に東京では介護人材不足が深刻で、募集をかけても集まらない現状があるとした上で、介護従事者は、週1回のPCR検査を受け、感染拡大防止に腐心していることを強調し、14日間の健康観察措置の緩和の検討を求めた。
この要望に対して、正林健康局長は一定の理解を示す一方、新型コロナワクチン接種が進んでいる英国や米国で、感染者数が増加していることに言及。「新型コロナワクチンの発症・重症化予防効果は治験の結果から明らかであるものの、感染予防効果については懸念がある」とするとともに、「両国で感染の中心となり、日本国内でも感染が広がっているデルタ株がワクチン接種者にも感染し、そこから未接種者への感染を拡大させる可能性を考慮すると、要件緩和の対象を介護従事者にまで広げるのは慎重な検討が必要だ」として、理解を求めた。
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