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令和3年(2021年)10月20日(水) / 日医ニュース

ソーシャルディスタンスがもたらすもの

 オリンピック、お盆、夏休みが終わった令和3年9月初旬、ほとんどが感染性の強いデルタ株に置き替わった新型コロナウイルス感染症の第5波は、首都圏において減少傾向に転じている。
 「感染爆発が危惧される中、なぜ感染者が減ってきたのか?」
 京都大学の西浦博教授はインタビューに、四つの仮説を述べ、中でも「1.医療の逼迫(ひっぱく)などのリスクを認識して、人々がハイリスクの接触を避けたこと(行動変容)と、2.予防接種が進んでいることが合わさって減っているのだろう」と答えている。
 幸いなことに西浦教授の仮説の中には、私が考えるような「ウイルスはそれ自体が生命体なので、感染を拡大し過ぎて感染する宿主がいなくなると自己保存が不可能となるため、自らの意思で(?)感染の拡大・減少という波を繰り返す」などという、悲観的で非科学的なものは含まれていなかった。
 「行動変容」と言えば、基本的な感染症対策としてマスクの着用、手洗いの励行などとともに、見直されてきたものの中に換気の重要性、更にソーシャルディスタンスを保つことが挙げられている。
 ブレークスルー感染が確認される以上、基本的な感染症対策に終わりはない。
 人と人との接触を減らすことを目的とするソーシャルディスタンスの保持は、結果としてリアルな人間同士の交流の機会を奪うことになる。
 若者の間では自由な男女交際も憚(はばか)られるだろうし、医師会活動においては会員同士の親睦・懇親の機会が奪われる。疾患としての病原性とともに、感染症が社会にもたらすもう一つの弊害である。
 人間同士の関係性が希薄になり、そして決定的に分断される前にワクチン接種を進めるとともに、1日も早い治療薬(内服薬)の開発・承認が望まれる。

(翔)

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