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令和4年(2022年)3月5日(土) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果について【大学病院・周産期母子医療センター(一般病院)】

日本医師会定例記者会見 2月9・16日

産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果について【大学病院・周産期母子医療センター(一般病院)】

産科医療機関における宿日直許可に関する調査結果について【大学病院・周産期母子医療センター(一般病院)】

 松本吉郎常任理事は、大学病院の産婦人科及び周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院の産婦人科に対する調査結果を報告し、その結果に基づいた日本医師会の見解を説明した。
 調査は昨年11月11日~12月6日までの間で実施し、全国の大学病院・周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院225施設(52・3%)から回答を得た。以下は、調査結果の概要である。

1.宿直、日直勤務を行う医師の派遣の有無

 大学病院は9割を超える病院が宿日直の医師を派遣しており、派遣平均医師数は一施設当たり11・3人となった一方で、周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院で宿日直を行う医師を派遣しているのは1割程度、派遣医師数も3・8人にとどまっており、一般病院は大学病院から宿日直の医師の派遣を受ける側であることが明らかになった。

2.派遣先での宿日直の連続勤務

 「連続勤務を行うことがある」と回答した大学病院は約6割に上り、中でも北海道、東北、九州で割合が高かった。
 この要因としては医師の偏在や移動距離の長さが関連しており、連続勤務をしなければ効率が悪くなるだけでなく、長距離の移動を繰り返すことでかえって医師の心身の負担が増大するためと考えられる。
 労働時間の上限規制によって、連続勤務時間制限や勤務間インターバル規制が実施されれば、連続勤務をせざるを得ない地域の周産期医療体制は崩壊につながる可能性がある。

3.時間外・休日労働時間が年間960時間を超える医師数

 約4割(39・4%)の医師が基準であるA水準の上限時間年960時間を超えており、約1割(10%)の医師はB水準、C水準の上限時間年1860時間を超えている状態となり、令和元年に国が行った「医師の勤務実態調査」と同様の結果となった。

4.宿日直を行う医師の派遣を制限する可能性

 「今後も派遣を制限する可能性はない」と明確に回答した大学病院は約1割にとどまり、「最大限努力するが場合によっては制限する可能性がある」と回答した大学病院は約半数を占めたが、現時点で判断がつかないという大学病院も約4割のため、状況によってはやむを得ず派遣を制限する病院が増加する可能性があることが示された。
 このことから、派遣先の産科医療機関が宿日直許可を取得することは自院の診療体制を維持する上で「極めて重要」「重要」と回答した大学病院が9割を超え、大学病院の危機感が非常に強いことが明らかとなった。

5.時間外労働時間の上限規制によって懸念される事項

 時間外労働時間の上限規制によって、「他の医療機関での診療応援に行けなくなること」「収入が減少することで常勤医が離職してしまうこと」が懸念される事項の上位となった。これは、大学病院が地域の周産期医療を維持する上で、他の医療機関への診療応援は無くてはならない重要な役割であるという認識を示していると同時に、大学病院の医師にとって、副業・兼業が生計を立てる上で重要な収入になっていることを表している。
 一方、大学からの応援を受けている周産期母子医療センターの指定を受けた一般病院は、医師の労働時間の上限規制によって、医師の引き揚げや自院の医師の業務負担の増加を強く懸念していることが示された。

6.宿日直許可基準①勤務態様と睡眠時間の確保

 地域の周産期医療の維持と医師の健康確保の両立を考えた場合、どの程度の業務態様と睡眠時間が確保されていれば、宿日直許可の取得基準として容認できるかとの問いに対して、業務態様については分娩等への対応が宿日直中に月3~5件(週1回程度)、睡眠時間については宿日直中の睡眠時間が6時間未満となる日が月3~5回であれば許容できると回答した大学病院がそれぞれ5割程度となった。
 ただし、業務態様について、近畿、中国四国地区の大学病院は、分娩等の対応が1カ月当たり6~10件程度であっても許容できると回答した割合が高く、地域事情による違いが認められた。

7.宿日直許可基準②宿日直の回数

 宿日直基準には、宿日直の回数について定めがあり、宿直は週1回(月4~5回)、日直は月1回が限度とされているが、周産期医療に関わる医療者が、宿日直許可を得られても良いと考える宿日直の回数を調査したところ、大学病院は宿直については1カ月当たり5・9回(週2回となる週が月2回程度)、日直については1カ月当たり2・4回(月3回程度)であれば許容できるという結果となった。
 以上の結果を受けて、松本常任理事は、「現在の宿日直基準が医療者の現場感覚と合っていない」と指摘した上で、医師独自の宿日直基準を設けることの必要性を改めて強調。関係団体と共に厚生労働省へ基準の策定を要望することを明らかにした。
 更に、医療界が2年以上にわたり全国的な新型コロナウイルス感染症の対応に注力していることを踏まえ、今後、コロナ対応と働き方改革への準備という二つの課題を現場に同時に強いることは非常に厳しく、現実的でないと指摘。「厚労省には、医療崩壊が起こる前に、一刻も早く具体的な検討を開始して欲しい」とした。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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