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令和4年(2022年)6月1日(水) / プレスリリース

財務省財政制度等審議会の建議について

 日本医師会は、財務省財政制度等審議会が取りまとめた「歴史の転換点における財政運営」(いわゆる「春の建議」)について、特に大きな問題があると考える「かかりつけ医の法制化」「給付費の伸びと経済成長率の整合性」「医療法人の事業報告書の電子開示」「リフィル処方箋」の4点に関する見解を取りまとめ、6月1日に公表した。

 下記はその全文である。

財務省財政制度等審議会の建議について
2022年6月1日
公益社団法人 日本医師会

  5月25日に財務省財政制度等審議会「歴史の転換点における財政運営」(いわゆる「春の建議」)が公表されました。
 本建議について、日本医師会は特に「かかりつけ医の法制化」「給付費の伸びと経済成長率の整合性」「医療法人の事業報告書の電子開示」「リフィル処方箋」の4点について大きな問題があると考えており、これまでも繰り返し主張しておりますが、改めて日本医師会の考え方を述べさせていただきます。

 第1に「かかりつけ医の法制化」についてです。
 「かかりつけ医機能の要件を法制上明確化する」ことが医療費抑制のために国民の受診の門戸を狭めるということであれば認められません。
 かかりつけ医は、さまざまな職種の方とも協力して、医師それぞれの特性を活かして、主に医師会活動として地域の健康を支えています。例えば、健康相談、予防接種、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健などの社会的な活動や、警察医などの行政活動に協力するなどです。このようなかかりつけ医機能は、地域でさまざまな形で発揮され、患者さんとかかりつけ医の信頼関係を絶対的な基礎として、日本の医療を守っています。
 患者さんの医療へのアクセスが悪くなり、患者さんの健康状態が悪化するようなことになれば本末転倒であり、国民視点、患者視点に立って検討を進めていくべきです。
 日本医師会は地域の方々に「かかりつけ医」を持っていただくために、4月20日に「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」を公表しました。
 日本医師会は、必要なときに適切な医療にアクセスできる現在の仕組みを守ります。そして「かかりつけ医」として、患者さんにさらに信頼していただけるよう努めていきます。

 第2に「給付費の伸びと経済成長率の整合性」についてです。
 わが国はヨーロッパ諸国に比べて国民負担率が低いという現状があります。仮に経済成長ができなかった場合には、患者負担ではなく、社会全体の負担率を調整することでカバーすべきです。
 現金給付である年金とは異なり、医療については現物給付であることから、その時々の社会経済情勢を踏まえつつ、保険料、公費、患者負担について、総合的に不断の見直しを行うことにより対応すべきであると考えます。その際、低所得者へも十分配慮をしなくてはなりません。

 第3に「医療法人の事業報告書の電子開示」についてです。
 医療法人の事業報告書は、都道府県において誰でも閲覧できる制度になっておりますので、まず、このことを踏まえていただく必要があります。さらには、これをデジタル化する取り組みも行われているところです。
 個別の医療法人の経営状況を、誰でも極めて手軽に匿名で閲覧できるようになることについては、行き過ぎた詮索などの弊害が危惧されます。本来、紙であれ、デジタルであれ、きちんとした本人確認を伴う閲覧申請の手続きがあってはじめて閲覧に供するべきであります。
 この「デジタルでの閲覧」と、今般、財政審で言われているような「事業報告書の詳細化」が合わさりますと、個別の医療法人の詳細な経営状況が、小規模な一人医療法人も含めて、公開されることになります。
 それが本来の政策利用の目的とは全く違うことに利用されることになれば、患者さんも含め医療現場に大きな混乱が生じ、弊害の方が大きいと考えております。
 従って、医療法人の事業報告書の電子開示・データベース化については、 政策利用の趣旨に沿って集計・分析したデータを開示することとし、誰でも閲覧できる事業報告書については、詳細になって行くことがないよう担保した上で、行政に閲覧履歴が残る仕組みや本人確認などの適正な閲覧手続きの整備を、併せて政府に求めます。

 第4に「リフィル処方箋」についてです。
 リフィル処方箋については、今回の厚生労働大臣・財務大臣が診療報酬改定について合意した文章の中で、「医師の処方により」、 「医師及び薬剤師の適切な連携の下」で行うものであることが明記された点が非常に重要です。
 日本医師会は、定期的な医学管理の重要性をしっかりと国民にご理解いただくように努め、かかりつけ医として、患者さんの病状を個別に、かつ総合的に考慮した上で慎重に判断していただけるよう最大限支援したいと考えています。

 以上4点の大きな問題以外にも、財政審の建議ではその他各論の中でも多々問題がありますが、今後日本医師会は政府の審議会等で、しっかりとした意見を述べていく所存です。

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