令和4年度都道府県医師会社会保険・情報システム担当理事連絡協議会が9月8日、WEBで開催された。
当日は、オンライン資格確認の趣旨と原則義務化までの経緯及び、導入補助や診療報酬上の新たな評価に関する説明などを行い、理解と協力を求めた。
長島公之常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつを行った松本吉郎会長は、まず、日本医師会が2016年に「日医IT化宣言2016」を公表し、その方針に従って医療分野のIT化に積極的に取り組んできたことを説明。同宣言では、全国の医療機関が安心・安全につながる医療専用のネットワークを構築することも大きな方針の一つとして掲げているとした。
その上で、本協議会のテーマであるオンライン資格確認について、全国の医療機関が対応することで、全国の医療機関を結ぶネットワークが形成されるとして、「これは日本医師会が提唱する医療専用ネットワークそのものと言える」と強調。日本医師会は、医療現場に極力負担を掛けないことを条件に推進に協力しているとした。
更に、原則義務化について、「医療機関の負担をできる限り少なくするために、厚生労働省にしっかりと申し入れ、導入補助金の拡充や診療報酬上の体制加算の新設などを実現できた」と述べ、中医協答申附帯意見においても、やむを得ない場合の必要な対応について検討することが書き込まれていることなどを説明した。
その上で、「対応可能な医療機関への導入の強力な推進と、やむを得ない事情を抱えている医療機関に寄り添った手厚いサポートを並行して行っていく」と強調し、引き続き各種課題にしっかりと対応していく決意を示した。
次に、伊佐進一厚労副大臣があいさつを行い、オンライン資格確認の推進や新型コロナ対応への謝意を述べた上で、オンライン資格確認の原則義務化について、「現場ではさまざまな課題が出てくると思われる。また、やむを得ない事情があることは厚労省としても重々承知している」と述べ、それらに対して政府として何ができるか検討していく姿勢を示した。
引き続き行われた議事では、(1)連絡協議会の趣旨とオンライン資格確認の原則義務化の経緯、(2)オンライン資格確認の現状と原則義務化に関する説明、(3)オンライン資格確認導入促進と課題解決に向けた取り組み(協力依頼)―について説明が行われた。
(1)では、長島常任理事がオンライン資格確認に対する日本医師会の姿勢について、まず、「日医IT化宣言2016」において「医療機関が安心・安全・安価に地域医療連携に活用できる医療専用ネットワークの構築を目指す」と記載していることを紹介。2021年にも都道府県医師会からの質問に対し、オンライン資格確認によって形成される全国の医療機関を結ぶネットワークが、今後の医療を支える重要な基盤となることは間違いないと考える旨を回答していることなどを説明した。
更に、医療機関がオンライン資格確認を導入することで、安心・安全に医療機関がつながる全国的なネットワーク「全国医療情報プラットフォーム」が形成され、薬剤情報の確認なども含めた質の高い医療提供と、かかりつけ医機能の発揮に寄与する基盤となること等を強調した。
次に、オンライン資格確認の原則義務化が決まるまでの大きなトピックとして、①自民党政務調査会「医療DX令和ビジョン2030」公表②「経済財政運営と改革の基本方針2022」閣議決定③「中医協」答申―等を挙げ、それぞれの内容を概説するとともに、それらに対して記者会見や国の審議会等で日本医師会がどのように対応してきたかを説明した。
最後に、長島常任理事は、8月24日に開催した「三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)、厚労省合同説明会」の様子がYouTubeで公開されていることに触れ、「ぜひ動画を見て頂き、(郡市区医師会の)会員の先生方にも紹介して欲しい」と呼び掛けた。
(2)では、水谷忠由厚労省保険局医療介護連携政策課長と眞鍋馨厚労省保険局医療課長が説明を行った。
水谷課長は、まず、オンライン資格確認(マイナンバーカードの保険証利用)のメリットとして、①医療機関・薬局の窓口で、患者の直近の資格情報等(加入している医療保険や自己負担限度額等)が確認できるようになり、期限切れの保険証による受診で発生する過誤請求や手入力による手間等が削減される②マイナンバーカードを用いた本人確認を行うことにより、医療機関や薬局において特定健診等の情報や薬剤情報を閲覧できるようになり、より良い医療を受けられる環境になる―ことなどを紹介した。
眞鍋課長は、具体的な診療報酬上の取り扱いとして、本年10月に新設される「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の内容や算定上の注意点などについて説明を行った。
(3)では、長島常任理事が、「都道府県医師会から郡市区医師会の担当理事への説明会をぜひ開催して欲しい」と要請。その際に必要な資料として、本協議会の資料や動画を日本医師会で提供するとした。
また、自身の医療機関が義務化の対象である場合には、導入のための見積もりを可能な限り早期に業者に依頼することの重要性を繰り返し強調するとともに、「何か疑問等があった時には、些細(ささい)なことでも相談窓口にお寄せ頂きたい」と呼び掛けた。
それぞれの説明の後、質疑応答が行われ、22府県からの事前質問並びに参加者からの質問に対し、日本医師会役員及び厚労省が回答した。
総括を行った茂松茂人副会長は、「全国医療情報プラットフォームは医療DXに欠かすことのできないものである」とした上で、「オンライン資格確認は、安心・安全で質の高い医療の提供ばかりでなく、医療機関の業務の効率化や負担軽減につながるものでなくてはならない」との認識を示し、協議会は終了となった。