松本吉郎会長は10月26日の定例記者会見で、新型コロナウイルス感染症の再拡大や季節性インフルエンザとの同時期流行への懸念を述べた上で、オミクロン株対応ワクチンの接種促進や発熱外来診療体制の拡充等の日本医師会の取り組みを説明した。
松本会長は、まず、新型コロナウイルス感染症の感染状況について、新規感染者数は増加に転じてきているとして、社会経済活動がより活発化していることによる感染状況への影響や諸外国の状況、新たな変異株の動向等も含め、引き続きの注視が必要と指摘。今後の感染状況に関しては、不確実性はあるが増加傾向が続く可能性が示唆されていることを説明するとともに、新型コロナウイルス感染症の流行拡大がより早期に始まる可能性やインフルエンザとの「同時期の流行」が懸念されるとして、「引き続き、状況に応じて必要な基本的な感染対策の徹底とワクチン接種の促進が重要である」と強調した。
「オミクロン株対応ワクチン」に関しては、初回接種を完了した全ての12歳以上の人が接種対象となっていることに触れ、BA.1対応型ワクチンとBA.4-5対応型ワクチンのいずれもBA系統に対しての効果が期待できるとして、「希望する人は速やかにワクチン接種を受けて頂きたい」と呼び掛けるとともに、速やかに接種を受けられるよう、全国の医療機関で、新型コロナワクチンと季節性インフルエンザワクチンの接種体制を構築していると説明。「今後も季節性インフルエンザの流行に備えて、全国の地域の医療機関において、インフルエンザの患者の検査、診療もしっかりと対応頂くよう呼び掛けていく」とした。
発熱外来診療体制の拡充に向けた取り組みについては、都道府県医師会、郡市区等医師会を通した要請は再三にわたり行ってきたが、改めて機関紙である日医ニュース11月5日号を使用して、医師会員に対して、診療・検査医療機関の増加、公表率のアップ、休日夜間の発熱外来、かかりつけ患者以外の患者への対応、医師会の検査センターへの参加等の働き掛けを行っていくことを明らかにした。
また、松本会長は、「災害が頻発、激甚化する中、新型コロナウイルス感染症対策は避難所での感染防護など、災害時の医療支援活動においても重要だ」と強調し、日本環境感染学会と「災害時感染制御支援チーム(DICT)」に関する協定を締結した他、「新型コロナウイルス感染症時代の避難所マニュアル」を今年3月に山口芳裕救急災害医療対策委員会委員長/杏林大学主任教授に作成してもらい、ホームページから無料ダウンロードが可能となっていることを概説。加えて、10月22、23日に「防災推進国民大会2022」が開催され、日本医師会は「避難所マニュアル」も題材にしたシンポジウムをオンラインで行ったとして、その模様を「ぼうさいこくたい」のWEBサイトや日本医師会公式YouTubeチャンネルにて、当分の間、公開していることを紹介し、その視聴を呼び掛けた。(下記QRコード参照)。
会見に同席した釜萢敏常任理事は、まず、直近の感染状況について、10月26日開催の「新型コロナウイルス感染症アドバイザリーボード」で提出された資料を基に、10月25日時点で全国的に感染状況が下げ止まりあるいは増加傾向にあることが示されたことを報告し、「感染状況は今後大きく変化することもあるため、しっかり注視する必要がある」と強調。新たな変異株に関しては、現時点ではBA.5系統のものがほとんど占めており、諸外国からさまざまな変異株についての情報が寄せられているが、今後の感染拡大に大きな影響を及ぼす変異株は特定されていないことなどを説明した。
また、季節性インフルエンザとの同時期の流行については、「昨年のインフルエンザの報告数と比較して、今年の報告数は少し増加はしているものの非常に少ない値となっており、インフルエンザの注意喚起・注意警報が発出されるレベルにはない」とした上で、「インフルエンザに関する情報を今後もしっかり踏まえながらその対応を考えていく必要があり、引き続き注意していかなければならない」と主張した。
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