エナブレレWMA新会長(中央)
エナブレレWMA新会長(中央)
WMAベルリン総会が10月5日から8日を会期とし、3年ぶりに対面形式で開催され、ドイツ医師会設立75周年記念式典も同時に挙行された。
日本医師会からは、WMA理事として横倉義武名誉会長(松本吉郎会長代理)、角田徹副会長(WMA理事会副議長)、今村英仁常任理事、ジュニアドクターズネットワークから岡本真希医師が出席し、全体の参加者は57加盟各国医師会及び国際機関等から約340名であった。
理事会では、角田副会長が理事会副議長(任期は2023年4月まで)に指名され就任した。総会式典では、オサホン・エナブレレ ナイジェリア医師会元会長が第73代会長に就任した。次期会長には、クウェート医師会のルジェイン・アルゴドマニ国際担当役員が選出された。
議事では、約3年にわたる議論を経て、「WMA医の国際倫理綱領改訂」が採択されたことが特筆される。
同綱領は、世界中の医療専門職の倫理的原則の規範集として1949年に採択された文書で、今回の改訂では、患者、他の医師及び医療従事者、医師自身並びに社会全体に対する医師の専門職としての義務を定義した他、患者の自律性、医師の健康、遠隔診療、環境の持続可能性に関するセクションが初めて設けられた。
「グローバル化した世界における医の倫理」をテーマとした学術集会では「第一部:グローバリゼーションと医の倫理」「第二部:医の倫理とプロフェッショナリズム」が行われ、今村常任理事は、第一部のパネルディスカッションにパネリストとして参加し、日常診療の観点から、医の倫理の4原則(自律性の尊重、無危害、善行、公正)についてコメントを行った。
総会のオープンセッションでは、ウクライナ医師会及び同国保健省からロシアの軍事侵攻による被害状況が報告されるとともに、ウクライナ医療支援基金の設立及び医療支援活動に対して、活動を主導したエイデルマン教授(WMA元会長、イスラエル医師会)、ドイツ医師会、寄附金を通じて活動を支えた日本医師会に対し、感謝状が贈られた(写真下)。
また、平和的デモの権利を含む人権を擁護し、医師の自律性、必要に基づいて全ての人に医療を提供するという倫理的義務の尊重をイラン政府に要請する「イランにおける人権デモに関するWMA理事会決議」が採択された。
その他、代表団はイスラエル医師会から昼食会に招待され、同医師会のエイデルマン元会長、ハガイ会長と、COVID―19対策、医療技術のイノベーション等をテーマに意見交換を行った。
総会における主な議事内容は以下のとおりである。
(1)緊急決議
「イランにおける人権デモに関するWMA理事会決議」
(2)医の倫理委員会関係
採択文書
「WMA医の国際倫理綱領改訂」
「生殖補助技術に関するWMA声明修正」
「終末期医療に関するWMAベニス宣言修正」
「医師の親族の治療に関するWMA声明」
「ソーシャルメディアの専門的かつ倫理的使用に関するWMA声明修正」
(3)社会医学委員会関係
採択文書
「刑務所の環境と感染症の蔓延(まんえん)に関するWMAエジンバラ宣言修正」
「慢性非感染性疾患に関する世界的分担についてのWMA声明修正」
「患者の安全に関するWMA宣言修正」
「医療分野における職場での暴力に関するWMA声明」
「ウクライナに対する人道的支援及び医療支援に関するWMA決議」
「デジタルヘルスに関するWMA声明」
「タバコ製品とタバコ由来製品による健康被害に関するWMA声明修正」
「武力衝突その他の暴動における医療関係者の保護と尊厳に関するWMA宣言」
「環境・労働安全衛生に関するWMA声明」
「医療における人種差別に関するWMAベルリン宣言」
「医療現場での高齢者に対する差別に関するWMA宣言」
「全ての人々へのCOVID―19ワクチンの供給に関するWMA決議」
(4)財務企画委員会関係
①WMA戦略計画
2020年から2025年のWMA戦略の4分野、「倫理、アドボカシーと代表性」「パートナーシップと協力」「コミュニケーションとアウトリーチ(対象者のいる場所に出向いて働きかけること)」「オペレーショナル・エクセレンス(業務遂行力が競争上の優位性を持つレベルにまで磨き上げられた状態)」のテーマに沿って活動を行っていることが確認された。
②今後の会議開催日程
2023年:4月ナイロビ理事会(ケニア)、10月キガリ総会(ルワンダ)
2024年:4月ソウル理事会(韓国)、10月ヘルシンキ総会(フィンランド)
③新規加盟医師会の申請
西インド諸島に位置するセントルシア医師会の加盟が承認され、加盟医師会数は116となった。