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令和4年(2022年)11月20日(日) / 日医ニュース

「過去の災害から得られた経験と教訓 ~現在、そして将来への課題~」をテーマに

 日本医師会主催による「過去の災害から得られた経験と教訓~現在、そして将来への課題~」をテーマとしたシンポジウムの模様が10月22日、兵庫県で行われた「防災推進国民大会2022」で、日本医師会セッションとして動画配信された。
 防災推進国民大会(主催:防災推進国民会議、防災推進協議会、内閣府)は、国民の防災に関する意識向上を目的として、さまざまな省庁、地方自治体、民間企業、団体などが出展、セッションを行っている。日本医師会も毎年、本イベントに出展しているが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、今年度は昨年度に続いて、動画の配信での参加となった。
 セッションは、細川秀一常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は、今後起こり得る南海トラフ、日本海溝、千島海溝周辺、首都直下等の地震や、豪雨災害、噴火災害等に備え、既に整備されている体制を常に見直す努力を続けていく決意を示した。

講演

 引き続き行われた講演では、まず、藤田宏史兵庫県医師会常任理事が避難所におけるメンタルヘルスケアの注意点として、自然災害における心理的経過の中で、「再建期」に精神状態が悪化する被災者がいることを説明。「それらの人々は早期からサインを出している方も少なくなく、そのサインを見落とさないためにも、早期発見・早期治療(観察)が必要になる」と強調した。
 また、①避難所を訪れる治療者は他都道府県から来ている人も多く、地元の治療者に正確に引き継ぎを行う②地域によって文化や慣習が違うことに留意する③災害の種類によって、被災地格差が生まれる可能性があるため、被災地域によって避難所を分ける―ことが求められるとした。
 山口芳裕杏林大学医学部主任教授/高度救命救急センター長は、日本医師会救急災害医療対策委員会が取りまとめた『新型コロナウイルス感染症時代の避難所マニュアル』を基に、避難所の開設、医療資器材の準備、避難者の健康状態の確認、避難所における感染対策の留意点を概説。「避難所の運営に加えて、コロナ対応を行うことは大変なことであるが、この地道な対応がその他の合併症の発症を防ぎ、ひいては避難所の安心・安全につなげることができる」とした。
 柳川忠廣日本歯科医師会副会長は、被災地での歯科保健医療支援活動の内容を時間軸で説明した他、災害時の誤嚥性肺炎の発症要因の一つに「口腔ケアの不備」があることを紹介。その発症を防ぐためにも、多職種連携による支援が必要になるとした。
 村上美也子富山県医師会副会長は、過去の災害における避難所運営では女性の視点が入っていないという問題点があったが、熊本地震以降はその改善が見られるとする一方で、妊産婦、乳幼児、医療的ケア児への配慮が大きな課題となっていると指摘。その上で、医療的ケア児に対する富山県の取り組みとして、『医療的ケアが必要な子どものための災害時対応マニュアル』の作成や実技研修会を開催し、関係者間で顔の見える関係構築に努めていること等を紹介した。
 石井美恵子日本災害医学会理事は、東日本大震災の際に、ラップ式トイレの導入や動き回らなければ生活ができないようにするなどの工夫を行った福祉避難所を設置した結果、避難者の血圧を正常値に保つことができたことなどを報告。災害の発災当初から災害関連死を防ぐ取り組みを進める必要性を強調するとともに、避難者の生存権も保障することができる避難所をいかにつくっていくかが今後の大きな課題であるとした。

ディスカッション

 その後のディスカッションでは、細川常任理事からの「被災者に対して精神科医でないからこそ質問できること」「避難所での検温の必要性」「医療的ケア児が避難所で過ごすための課題」「生存権を保障する避難所とするために必要なこと」などの質問に対して、演者が回答。また、柳川日歯副会長は指定発言として、東日本大震災の際の検視・検案活動について紹介するとともに、今後の課題として法歯科医学に関する学生教育の充実を挙げた。
 最後に茂松茂人副会長が「本日ご示唆頂いた点を今後の日本医師会のJMAT活動や災害支援活動に生かしていきたい」と総括し、セッションは終了となった。

お知らせ
220520j5.jpg 「防災推進国民大会(ぼうさいこくたい)2022」日本医師会セッションの動画は、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載されていますので、ぜひ、ご覧下さい。
https://www.youtube.com/channel/UCrZ632iTbtYlZ5S2CtGh6rA

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