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令和5年(2023年)1月5日(木) / 日医ニュース

「令和5年度薬価改定の骨子(案)」を了承

「令和5年度薬価改定の骨子(案)」を了承

「令和5年度薬価改定の骨子(案)」を了承

 中医協総会が昨年12月21日、WEB会議で開催され、「令和5年度薬価改定の骨子(案)」を了承した。
 本骨子案は、これまでの薬価専門部会の議論、12月16日に行われた松野博一内閣官房長官、鈴木俊一財務大臣、加藤勝信厚生労働大臣の三大臣合意、当日に行われた大臣折衝の結果などを踏まえて、作成されたものである。
 その中では、改定の対象範囲について、薬価調査に基づく平均乖離率7・0%の「0・625倍超」に当たる、乖離(かいり)率4・375%超の品目(全医薬品の69%)を対象とするとしている他、急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、不採算品再算定について臨時・特例的に全品を対象に適用するとともに、イノベーションに配慮する観点から、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の加算額を臨時・特例的に増額、従前の薬価と遜色ない水準とする対応も実施するとしている。
 改定の対象については、薬価専門部会において、これまで製薬団体からヒアリングなどを行いながら議論を続けてきた。
 12月16日に開催された同部会の議論の中で、長島公之常任理事は「医療現場では、物価高騰や医薬品の安定供給上の課題が日常診療に大変大きな負担を与えている状況において、前回の中間年薬価改定と同様の改定対象及び範囲とされたことは非常に厳しい」と指摘するとともに、現在、安定供給に支障がある中で、医療現場に与える影響が更に大きくなることに強い懸念を表明。臨時・特例的な対応については、「医薬品の安定供給に向けた一定の対応がなされることはやむを得ない部分もある」とする一方、今回の問題は企業の不適切な対応がきっかけとなったものだとし、「安定供給が可能となる産業構造やビジネスモデルに再構築していく作業も並行して実施していくべきである」と主張した。
 また、イノベーションに配慮した対応に関しては、「本来は中間年改定で対応すべきものではない。ドラッグ・ラグや、物価高騰等の影響への懸念の声があることを踏まえた極めて例外的な措置だ」と述べた他、医薬品の安定供給への対応については、薬価上の対応だけでは不十分であるとして、供給体制全体を考えた対応を強く求めた。

オンライン資格確認導入の原則義務付けに係る経過措置等について加藤厚労大臣から諮問

 その他、総会では、当日の大臣折衝事項を踏まえ、加藤厚労大臣から小塩隆士中医協会長に対して、「医療DXの基盤となるオンライン資格確認の導入の原則義務付けに係る経過措置、医療情報・システム基盤整備体制充実加算の取扱い及び医薬品の安定供給に係る取組の推進に向けた診療報酬上の加算の取扱い」に関する諮問がなされ、議論が行われた。
 今回の諮問は、(1)昨年8月10日に取りまとめられた中医協答申の附帯意見に、「オンライン資格確認について、令和4年末頃の導入の状況について点検を行い、地域医療に支障を生じる等、やむを得ない場合の必要な対応について、その期限も含め、検討を行う」旨が明記されていたこと、(2)当日の大臣折衝において、令和5年度予算における診療報酬上の対応(①オンライン資格確認の導入・普及の徹底の観点から、令和5年12月末までの間、初診時・調剤時における追加的な加算、再診時における加算を設定するとともに、加算に係るオンライン請求の要件を緩和する②医薬品の供給が不安定な中、患者への適切な薬剤処方実施や薬局の地域における協力促進などの観点から、令和5年12月末までの間、一般名処方、後発品の使用体制に係る加算、薬局における地域支援体制に係る加算について上乗せ措置を講ずる)の実施について合意された―ことを受けて、行われたものである。
 諮問の議論に当たって、厚労省事務局は医療DXへの対応として、オンライン資格確認導入の原則義務化を免除される、やむを得ない事情の具体例やその期限の案を提示。また、オンライン資格確認の導入を促進させるための診療報酬上の対応として、昨年10月に新設された「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」の評価を一定期間見直すとともに、再診時についての評価を新設することなどを提案した。
 一方、医薬品の安定供給問題については、診療報酬上で一定期間、「患者への丁寧な説明及び適切な薬剤の処方・調剤を行う体制を推進する観点から、一般名による処方の更なる推進を評価する」「後発医薬品の推進を図りながら医薬品の安定供給に資する取り組みを、一般名処方だけでなく、入院、院内処方である場合も評価する」―ことなどを示した。

初再診時の評価見直しは必要な措置 ―長島常任理事

 議論の中で、長島常任理事は医療DXへの対応について、「オンライン資格確認は安心・安全で質の高い医療提供、かかりつけ医機能の発揮に寄与する基盤となるものである」と強調。「最終的には全ての医療機関で導入されることが望ましい」とした上で、日本医師会がA①会員を対象として、令和4年11月15日から30日の期間に実施した「日本医師会オンライン資格確認等システム導入の経過措置等要望のためのアンケート調査」の結果を、都道府県・郡市区等の地域医師会が独自に行った同様の調査結果と併せて紹介。日本医師会の調査では、(1)WEB、FAXにより1万8914件の回答が寄せられた、(2)2023年4月からの義務化に間に合わない理由として、「ベンダーの作業が間に合わない」「顔認証カードリーダーが届かない」など、医療機関側以外の理由が多い―ことなどを説明した。
 その上で、今回の提案については、現状では期限までに業者の対応が確実に完了することが担保されていないことから、システム事業者に強力に働き掛けるだけでなく、それでもなお期限内の完了が難しい場合には特段の配慮を要求。また、接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない医療機関については、環境が整備されてから導入準備を開始すればよい旨の周知の他、義務化に対応できない理由はさまざまであることを踏まえたきめ細やかな対応を求めた。
 更に、診療報酬上の対応については、「医療機関の負担は増大している。初再診時の評価を一定期間、見直すことは当然であり、オンライン資格確認の導入を加速させるためにも必要な措置である」と強調した。
 一方、医薬品の安定供給問題を踏まえた診療報酬上の対応に関しては、医薬品の供給不足は深刻な状況になっており、医師の処方に関する負担がこれまで以上に増大している実情を説明。「一般名処方加算や後発医薬品使用体制加算などについては既にこれまで以上の取り組みがなされていることを踏まえ、このタイミングを捉えて評価の見直しを行って欲しい」と強く要望を行った。
 支払側からは、「大臣折衝の結果を尊重する」とする一方で、突然診療報酬上の見直しを行い、結果的に患者負担増となることに反対する意見も出されたが、引き続き2022年内の答申取りまとめを目指して議論を行っていくことになった。

お知らせ
 令和4年12月23日に開催された中医協総会の模様は編集の都合上、本紙1月20日号に掲載する予定としております。

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