松本吉郎会長は1月11日の定例記者会見で、(1)年末年始の医療機関の取り組み、(2)直近の感染状況等、(3)季節性インフルエンザとの同時期流行の状況―について、日本医師会の見解を説明した。
松本会長は、まず、3年ぶりの行動制限のない年末年始を迎えた中で、多くの人々が「地域の感染動向を踏まえた行動」「オミクロン株対応ワクチンの接種」「基本的な感染対策の徹底」「帰省前後の検査」などの対応を継続していただいたことに感謝の意を示した。また、オミクロン株対応ワクチンの接種率については、首相官邸のデータ(1月10日)を基に、12歳以上が36.9%、65歳以上の高齢者は62.1%と、年末より接種率が上昇していることを説明し、「みなさまのご協力のおかげであり、感染拡大防止に大きく貢献している」と述べた。
加えて、コロナとの闘いが4年目となる間に、新型コロナワクチン接種率の向上や医療現場で処方できる治療薬の登場など、明るい進展も見られる一方で、XBBなどオミクロン株のさまざまな亜型が出現している状況を踏まえ、「新たなウイルスの変異等に注視しつつ、我々医療者も、新型コロナウイルス感染症が収束していくよう、引き続きオールジャパンの体制で取り組んでいく」と主張した。
(1)に関しては、発熱外来の診療体制について、各地域医師会では年末年始や1月7日からの三連休を含めて、会員の医療機関に対して、診療・検査医療機関の更なる拡充やかかりつけ患者以外への対象患者拡大、日祝日や夜間において地区医師会が運営している休日夜間診療所等への医師会員の更なる協力依頼を行うばかりでなく、多くの医師会が、地域医師会の休日夜間診療所などいわゆるセンター方式による発熱外来にて年末年始も対応したり、ゾーニング不可能やリスクの高い患者を抱えるなど、自院ではコロナ対応ができない会員も診療科を問わず幅広く出務して頂いたとして、全国の医師会、会員の先生方に謝意を述べた。
(2)では、新型コロナウイルス感染症の感染状況について、年末年始の休みが明け、検査数が増えたことから、一日当たりの感染者数の増加が見られるとするとともに、人的移動・人的交流が活発になったことや仕事や学校が始まり、多くの人が日常生活に戻ったことによる感染状況の変化に、より一層の注意が必要だとして、引き続きのマスクの着用やこまめな手洗いの継続を呼び掛けた。
年末年始の新規感染者数に関しては、国内の感染状況の全体を把握しきれていないとの指摘はあるものの、一日に20万人を超える日が数日間確認されるとともに、一日当たりの死亡者数も増加傾向にあり、1月7日には過去最多の死者数の463人となったことを報告。新規感染者数の拡大は、重症者数や入院治療等を要する人、救急搬送が必要な人の増加につながるとした上で、「現に、コロナ疑い・コロナ以外のいずれでも、救急搬送困難事案が第7波並みとなっており、病床使用率の増加による医療逼迫の可能性が大いに高まってきている。引き続き、社会経済活動と感染拡大防止の両立を図りつつ、基本的な感染防止対策を継続し、各地域において医療逼迫を起こさせず、コロナ以外の医療が必要な人にも安心して提供できるようにすることが重要」と述べた。
(3)では、季節性インフルエンザの流行状況について、昨年末に流行開始の目安の値となる定点医療機関当たり1.00を上回っており、1月6日発表データでは、定点当たり2.05となり、季節性インフルエンザが徐々に拡大している状況にあることを報告。新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザが同時期に感染拡大した際には、落ち着いて対応することが重要であるとするともに、1.国が承認した「体外診断用医薬品」または「第1類医薬品」表示のある新型コロナ抗原定性検査キットの準備する2.解熱鎮痛剤、体温計、1週間程度の食料品・日用品を準備する3.各都道府県が公表する受診・相談センターの連絡先等をあらかじめ確認する―ことなど、事前の備えを呼び掛けた。
この他、今後について、松本会長は、これまで行ってきたワクチン接種と基本的な感染防止対策の徹底の呼び掛けや、会員の先生方に、厚生労働省の「新型コロナ・インフル同時流行対策タスクフォース」で作成したリーフレット等を用いた国民のみなさんへ呼び掛けに対する協力依頼の活動を継続していく考えを示すとともに、国に対しても積極的な広報を要請。
加えて、現在、「コロナと季節性インフルエンザの同時期の流行に備えて準備しておくべきこと」「喉の痛みや発熱などの症状が出た場合の対処法」などを、釜萢敏常任理事が分かりやすく説明した動画「教えて!日医君!~この冬を乗り切るためのコロナ対策~」を日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載していることを紹介し、その視聴を呼び掛けた。
会見に同席した釜萢常任理事は、まず、年明けの新型コロナウイルス感染症の新規感染者数について、今後増加が予想される状況にあり、各地から日本医師会にも医療の逼迫状況の声が寄せられているとして、医療従事者の方々が大変厳しい状況の中で日々の診療に当たっていると強調。
また、新型コロナウイルス感染症による死亡者数が増加していることに触れ、全数把握の方法が変更されたことなどを踏まえ、サーベイランスの方法に関して、実態反映や適切な評価・分析の重要性を挙げた他、現在判明している死因としては、基礎疾患を持っている人、60歳以上の人が挙げられるとし、「これらの要因と新型コロナウイルス感染症との関連性についての評価分析も極めて重要になる」と指摘した。
今後の対応については、医療現場においては、コロナとコロナ以外の疾患の対応にしっかり対応できる体制を更に準備していくこと、医療機関を受診する人は、抗原定性検査キット等による自己検査を行うなど、限られた医療資源を有効に使っていくことが必要になると説明。日本医師会としても、引き続き社会経済活動が維持、活性化していく中で、コロナの対応を確実に行っていけるよう全力で取り組んでいくとした。
問い合わせ先
日本医師会健康医療第二課、地域医療課 TEL:03-3946-2121(代)