第38回都道府県医師会新型コロナウイルス感染症担当理事連絡協議会が2月28日、日本医師会館でWEB会議により開催された。
冒頭のあいさつで松本吉郎会長は、現在、全国的に新型コロナの新規感染者数の減少傾向となっている中で重要なこととして、「新型コロナが土着化、エンデミックに移行していく中で、いかに感染リスクを低いレベルに抑えられるか」が挙げられると指摘。現在に関しては、季節性インフルエンザの流行も続いていることから、予断の許さない状況にあるとした。
新型コロナが5月8日から感染法上で5類感染症に類型変更されることについては、「5月8日から全てがガラッと変わるわけではない」と強調。特に医療提供側では、当面は現状の体制を維持していかなければならないとの見方を示すとともに、「段階的にコロナと通常医療の医療を維持できるよう、医療現場でその受け入れの準備等を進めていく」と述べた。
また、その前提として、現在コロナ医療を行っている医療機関における継続支援や、現在診療・検査医療機関ではない医療機関での感染対策への支援などに関して、政府に対し、患者の負担とならないこと及び医療現場に混乱を来さないことを求めているとした。
松本会長は更に、「現在およそ42,000診療所・病院による発熱外来診療体制を維持しつつ、例えばこれまで季節性インフルエンザの検査・診療を行ってきた医療機関であって、コロナ対応をされていない施設のご参画により体制を強化することが非常に重要である。また、コロナ対応への一層の参画及び普段は自院に通院していない患者の受け入れなど、特に外来体制の維持・充実を要請する必要がある」として、自身の名義にて、都道府県医師会長、郡市区医師会長に対し、その協力を求める依頼文書を発出する意向を示した(2月28日付で発出済)。
当日の議事は、(1)「医療機関向けガイドライン」の運用変更等、(2)COVID-19JMAT保険の改定、(3)新型コロナウイルス感染症対応人材ネットワーク、(4)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針等、(5)かかりつけ医機能が発揮される制度整備―についてであった。
(1)では、釜萢敏常任理事が、マスク着用の考え方の見直しの適用日(3月13日)までに業種別ガイドラインを見直すよう内閣官房から要請があり、日本医師会では、同ガイドラインについてマスク運用部分だけを読み替えてもらう旨の通知の発出を予定していることを説明。また、5月8日以降は全業種において業種別ガイドラインの運用は廃止となることを受け、「医療機関においては引き続き感染防止対策を継続し、感染対応能力の向上を図ることになる」と述べた他、「みんなで安心マーク」は3月13日以降の新規発行は終了する予定であることを説明した。
(2)、(3)では、猪口雄二副会長が、2023年度の同保険について、補償内容・保険料水準の見直しはないこと及び、同人材ネットワークの運営状況として、各大学病院等での人材育成事業の実績等を報告した。
(4)では、オブザーバーとして参加した大坪寛子厚生労働省大臣官房審議官及び宮崎敦史厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部審議官が、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けの変更についての国の対応方針を説明。これまでの経緯や法律上の位置付け等を解説した上で、今後の医療提供体制について、現在保険収載されている抗ウイルス薬が高額であることから、医師が患者に処方を控えることのないような支援を検討しているとした。
また、外来医療体制の移行については、現時点で相当数の医療機関がコロナ対応をしており、それを継続するための支援とともに、現在コロナを診ていない医療機関に対応してもらうためには何が必要かも検討していると説明。入院医療についても、各医療機関で経験が積まれてきており、そうした医療機関に引き続き対応してもらえるような支援を厚労省として検討しているとした他、新型コロナワクチンの取り扱いの検討状況についても紹介し、対象者や接種回数に関する決定事項については、今後正式に通知が行われるとした。
その後の質疑応答では、類型変更に伴い、季節性インフルエンザと新型コロナの比較について、死亡率や感染力は異なるのに対して、両者に大差がないなどの誤解を招かないような正しい情報発信を国に求める声や、公費負担や入院調整が無くなった際に対応医療機関が減る懸念が示された他、5類になった後も依然としてクラスター対応や発生した際の支援は必要であるとの指摘がなされた。また、受診時などのマスク着用について、引き続き広く周知して欲しいといった意見なども出された。
(5)では、釜萢常任理事がかかりつけ医機能に関するこれまで議論を紹介するとともに、日本医師会の考え方等について説明。2月15日の定例記者会見で述べた内容を改めて強調した。
質疑応答では、かかりつけ医機能の方向性に関する質問に対し、松本会長が、その地域で不足している機能を地域としてどのように考えていくかということがベースになると説明。「一つ一つの医療機関が、かかりつけ医機能を持っているか持っていないかという話ではない」と強調した。
総括を行った松本会長は、コロナ対応に関する国の支援、患者への公費負担の必要性を指摘。発熱外来の概念が無くなったとしてもその機能は引き続き必要になるとした。
また、数字として公表されている以上にコロナ対応をしている医療機関は多いとした上で、「できる限り発熱患者等を診ていくという姿勢はこれからも続けなければならない」と述べ、そうした取り組みが国の支援の継続にもつながっていくとの見方を示した。
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