第153回日本医師会臨時代議員会にご出席を頂き、誠にありがとうございます。
また、日頃より日本医師会の会務運営に特段のご理解とご支援を頂いておりますことに対し、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
本日の臨時代議員会では、来年度の事業計画及び予算の報告に加え、1件の議案を上程いたしております。慎重にご審議の上、何卒ご承認賜りますよう、お願い申し上げます。
今年度、国内では雪害や風水害等の災害がありましたが、世界で最も大きなものはトルコ・シリアで起こった大地震でした。
日本医師会では、特定非営利活動法人AMDAを通じて支援を行いましたが、会員の先生方より7000万円を超えるご寄附を頂きましたことに感謝申し上げます。
更に、ウクライナへの医療支援に向けた支援金につきましても、引き続きご支援頂きましたこと重ねて御礼申し上げます。
さて、本臨時代議員会の開催に当たりまして、若干の所感を申し上げたいと存じます。
情報発信ツール「日本医師会の方針」
昨年6月の会長就任以降、全国各地を回らせて頂きましたが、多くの先生方とお話しする機会を得る中で、改めて日本医師会の方針や取り組み等を迅速かつ丁寧にお伝えしていくことの重要性を感じました。
そうした思いから、全国の先生方に直接情報を発信するツールとして、「日本医師会の方針」を、本年2月に第1報としてお送りさせて頂きました。
本取り組みの趣旨にご賛同の上、ご登録頂きました先生方に対し、この場をお借りして深く感謝申し上げます。運用に当たっては、お忙しい先生方にもお読み頂けるよう、簡潔明瞭な発信を心掛けて参ります。
かかりつけ医機能
「日本医師会の方針」の第2報として、「全世代社会保障法案における『かかりつけ医機能が発揮される制度整備』について」をお送りしました。
かかりつけ医機能につきましては本日ご議論頂きますが、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」は、国民医療を守るため、地域医療を面として支える医療が確保されるよう、医療機関が自主的に医療機能を報告し、国民が適切な医療機関を自ら選択できるよう分かりやすく示すとともに、それを基に必要に応じて地域で協議するものであります。
地域に根差して診療している医師は、地域住民の健康を守るため、それぞれの地域を面として支えており、地域医師会はそれに深く関与して運営しています。不足している機能の充足に向けては医師会を中心として、それぞれの地域で検討することが求められるであろうと考えております。
「かかりつけ医」と「かかりつけ医以外の医師」を区別するものではなく、国民が望んでいない「人頭払い」「登録制」「認定」への懸念は払拭でき、あくまでも「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」であり、「かかりつけ医制度」にはなっておりません。
医師会の組織強化
「日本医師会の方針」の第3報として、「医師会組織強化に向けて」をお送りしました。
組織強化につきましては、本執行部が発足した当初から取り組んで参りました。
この後もご議論頂きますが、既にご案内のとおり、現在、臨床研修医を対象に行っております会費の減免を、令和5年度からは医学部卒後5年間まで延長いたします。
この取り組みの実効性を高めるため、現在、全国の医師会にも同様の取り組みをお願いしているところでありますが、代議員の先生方におかれましても、特段のお力添えをお願いいたします。
また、今般、増大し、かつ多様化する会務に当たるための有能な人材を全国から広く役員に登用し、適材適所に配置することは、会務遂行能力の一段の向上につながるものと考えます。そのため、昨年12月に取りまとめて頂きました定款・諸規程検討委員会の答申どおり、常任理事4名の増員に向けた定款改正(案)を、議題として上程いたしました。
医師会組織強化の目的は、国民視点に立った医療の実現にあります。地域医師会と日本医師会との連携をより一層緊密にする中で、地域の声を踏まえた政策提言を行い、医師の期待に応えられる医師会、そして、国民の信頼を得られる医師会へとつなげて参ります。
物価高騰への対応
「日本医師会の方針」の第4報、第5報として、「物価高騰への対応」をお送りしました。
医療機関・介護事業所等における光熱費等の物価高騰に対する支援については3月17日に、日本医師会を始めとする10医療・介護団体の連名による要望書を加藤勝信厚生労働大臣に手交いたしました。
その結果、3月22日に、政府の「物価・賃金・生活総合対策本部」におきまして、事業者並びに生活者の支援として、地方創生臨時交付金の7000億円の増額が決定され、その推奨事業メニューにおきまして、「医療機関等への支援」が、事業者支援の筆頭に挙げられております。
これを受けまして、今後は各地方公共団体において、この交付金を活用した支援事業を確実に実施して頂くことが重要となります。都道府県医師会におかれましては、地方公共団体とのご協議等に格別のご尽力を賜りますよう、お願い申し上げます。
日本医師会は、物価高騰下においても国民に安心・安全で質の高い医療を提供できるよう、引き続き取り組んで参ります。
トリプル改定
2024年度は、診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬のトリプル改定が行われる他、医療計画(医師確保計画、外来医療計画)、介護保険事業(支援)計画、健康増進計画等が開始され、更には医師の働き方改革として時間外労働の上限規制の適用が始まるなど、医療界にとって大変重要な年となります。
また、年末に行われる予算編成では、その財源確保が重要な課題となります。
まずは2022年度診療報酬改定が医療現場に与えた影響を検証した上で、2024年度改定を考えることが基本です。併せて、エネルギーを始めとした物価高騰や、賃上げもあり、そういった問題を考慮した視点も大変重要です。
トリプル改定に向けて、中医協、社会保障審議会医療保険部会、社会保障審議会医療部会を始めとする審議会、検討会には日本医師会から役員が参画しており、議論を積み重ねていく中でしっかりと主張して参ります。
2023年度の薬価中間年改定では、昨年末に行われた大臣折衝により、平均乖離(かいり)率7・0%の0・625倍、すなわち乖離率4・375%を超える品目が対象となりました。平均乖離率0・625倍超で当初は影響額▲4900億円と試算されておりましたが、▲3100億円の削減まで圧縮されました。
更に診療報酬上の対応として、オンライン資格確認の導入・普及の徹底の観点から、初診時・調剤時における追加的な加算、再診時における加算等、また、医薬品の供給が不安定な中での、患者への適切な薬剤処方の実施などの観点から、一般名処方、後発品の使用体制に係る加算などが講じられ、技術料へ一定の還元がなされました。
極めて高度な政治的判断となりましたが、政府・与党始め多くの関係者の方々に、実態をご理解頂き、ご配慮を頂いたものと一定の評価をしております。
新型コロナウイルス感染症対応
さて、わが国で最初の新型コロナの感染者が確認されてから3年以上が経ちました。
長きにわたり地域で陣頭指揮に当たって頂いております都道府県医師会、郡市区等医師会の先生方、そして現場でコロナ患者対応やワクチン接種に当たっておられます医療従事者の皆様に、改めまして心からの感謝を申し上げます。
5月8日に新型コロナは5類感染症となりますが、類型変更以降も感染拡大の波は繰り返していくものと考えられ、再燃の可能性もあり、引き続き十分な対策が必要です。
今後も感染状況を注視しながら、当面は医療機関の感染対策と現在の新型コロナの医療提供体制を維持しつつ、更に幅広く患者さんを受け入れる体制が必要であり、改めて日本医師会から、更なるご協力をお願いさせて頂きました。
更に、日本医師会では、各地のコロナ対応、またコロナと通常医療との両立という現場の努力は、適切に評価されるべきであると考え、類型変更後の医療機関への支援等について岸田文雄内閣総理大臣、加藤厚生労働大臣等へ要請を行いました。
これにより、診療報酬の特例、病床確保料が継続され、また、入院調整や「地域包括ケア病棟」等での高齢者等の受け入れが新たに診療報酬に位置付けられております。
日本医師会としましても、これからも地域の医療現場をしっかりと支えて参る所存でありますので、引き続きご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
医師の働き方改革
一方、医師の働き方については、医療機関勤務環境評価センターの指定法人として、昨年10月から、B水準、連携B水準、C―1水準、C―2水準といった、いわゆる特例水準の取得を目指す医療機関からの受審申込を受け付けています。3月24日時点で33の医療機関から申し込みがあり、順次サーベイヤーが調査を行っています。
働き方改革における大きな課題の一つであった宿日直許可の取得については、日本医師会が厚労省に繰り返し働き掛けを行った結果、令和4年の許可取得件数は令和3年に比べて約6倍の1369件となりました。
2024年4月の新制度施行に向け、医療機関の医師の働き方改革の取り組みを支援していくという観点で、引き続き取り組んで参る所存です。
C―2水準は、日本専門医機構の定める基本19領域において、高度な技能を有する医師の育成が公益上、特に必要と認められる医療の分野を言いますが、先進医療だけを指しているわけではありません。
良質かつ安全な医療を提供し続けるために、個々の医師が独立して実施可能なレベルまで修得・維持しておく必要があるものの、基本領域の専門医取得だけでは、そのレベルに到達が困難とされる技能もC―2水準です。
つまり、B水準との区分けはしっかり行う必要がありますが、先進医療に限らず、広く医療の質の維持・向上に資する技能もC―2水準となります。
B水準、連携B水準は地域医療をしっかり守っていくための仕組みで、C―2水準は、将来の日本の医療の発展のために不可欠な仕組みです。大学病院、基幹病院、学会の先生方、そして志のある若い医師の皆様には、C―2水準の申請を改めて検討して頂きたいと考えております。
医療DXの推進
医療DXの推進につきましても、オンライン資格確認の原則義務化も踏まえ、この後ご議論頂きますが、本日、代議員の皆様の出欠の受付にも利用させて頂いた医師資格証については、2021年7月から会館1階エントランスに専用の通行ゲートを設けて活用しており、今後も会内で利用できる機会を増やして参ります。
更に、本年1月に運用開始となった電子処方箋(せん)を発行するためには、紙の場合の押印の代わりとして、この医師資格証を用いて電子署名することが必要になります。現在、非常に多くの申請を頂いておりますが、全ての会員、そして全ての医師への普及を目指してこれからもその推進に努めて参ります。
広報活動
広報活動としては、日本医師会の歴史や主な活動について、クイズを交えながら説明した国民向け動画「教えて! 日医君! 知って欲しい! 日本医師会」を制作し、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載していますが、これまでに7万6000回を超えるご視聴を頂いています。
また、組織強化策の一環として、この動画に「医師会への入会方法」「日本医師会医師賠償責任保険制度」「医師年金」などの説明を加えた「医学生・研修医向け」の動画も制作し、日本医師会の公式YouTubeチャンネルに限定公開で掲載したURLと動画データを、都道府県医師会宛にお送りしていますので、ぜひ、日本医師会への入会促進活動等においてご活用頂ければと思います。
第31回日本医学会総会2023東京
最後になりますが、「第31回日本医学会総会2023東京」が、いよいよ4月21日より開催されます。
「ビッグデータが拓く未来の医学と医療~豊かな人生100年時代を求めて~」をメインテーマに掲げる本総会では、現地開催とオンライン開催を組み合わせ、さまざまな分野の医療関係者が一堂に会し、医学や医療をめぐる課題について総合的に議論がなされるよう準備が進んでおります。
東日本大震災により、2011年の東京での総会が開催形態の変更を余儀なくされたことを考えますと、東京での本格的な開催は実に24年ぶりになります。
専門分化が進む昨今において、このような分野横断的な知見が得られる機会は大変貴重であり、かつ多くの医療関係者と国民とが未来の医学、医療について共に考える絶好の機会であると考えております。
総会の事前参加登録は4月7日まで可能となっております。ぜひ一人でも多くの先生方にご参加頂き、この4年に1度の日本医学会総会が盛会となりますよう、代議員各位のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
結びとなりますが、今後とも日本医師会の会務遂行に当たり、皆様からの絶大なるご支援を賜りますよう改めて切にお願い申し上げまして、私の所信とさせて頂きます。