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令和5年(2023年)6月20日(火) / 日医ニュース

トリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を「骨太の方針」に明記するとともに必要な財源の確保を求める決議を採択

トリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を「骨太の方針」に明記するとともに必要な財源の確保を求める決議を採択

トリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を「骨太の方針」に明記するとともに必要な財源の確保を求める決議を採択

 第17回国民医療推進協議会(以下、国医協)総会が5月31日、日本医師会館小講堂で構成団体(41団体)のうち39団体の参加の下、急きょ、WEB会議により開催され、6月に閣議決定される予定のいわゆる「骨太の方針」に令和6年度のトリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を明記するとともに、そのために必要な財源の確保を求める決議(別掲)を全会一致で採択した。

 今回の総会は、昨今のエネルギー価格の高騰や人件費の上昇を始めとする急激な物価高騰・賃金上昇により、医科歯科医療機関、薬局、介護施設等が厳しい経営状況に陥っていることを受けて、日本医師会の呼び掛けにより、急きょ開催されたものである。
 総会は釜萢敏日本医師会常任理事の司会で開会。冒頭、国医協会長としてあいさつを行った松本吉郎日本医師会長は、まず、全国の医療関係者に対して、「本来の役割を超えて新型コロナ対応に尽力して頂いた」として、感謝の意を表明。今回の総会については、「6月の閣議決定に向けて『骨太の方針』に関する議論が本格化してきているが、国民の生命と健康を守るためにも、この『骨太の方針』に、医療・介護分野等における物価高騰と賃上げへの対応について明記してもらい、必要な財源を確保しなければならない」と強調。その実現に向けた協力を求めた。
 続いて、国医協の3名の副会長からそれぞれあいさつが行われた。
 堀憲郎国医協副会長(日本歯科医師会長)は、「歯科では個人立の診療所が約75%を占めているため、物価高騰の影響は極めて大きなものになっている」と指摘。また、この問題は医療・介護分野全体に関わる問題であることから、総会でこの問題を構成団体で共有し、決議を採択する意義は極めて大きいとした。
 山本信夫国医協副会長(日本薬剤師会長)は、「経営基盤が脆弱(ぜいじゃく)な薬局はコロナ禍において大変厳しい経営状況にあったが、今回の物価高騰の影響でその厳しさは更に増している」とし、「その対応のためにも財源をしっかり確保することは極めて重要になる」と述べた。
 福井トシ子国医協副会長〔日本看護協会長(当時)〕は、「物価高騰により、医療機関、訪問看護ステーションは大きな影響を受けている。各施設では経営努力により、その場をしのいできたが、それも限界にきている」と主張。国民が安心して医療を受けられるためにも、診療報酬上の評価が必要だと訴えた。
 議事では、釜萢日本医師会常任理事が今回の総会の開催趣旨を説明した。
 その中では、(1)政府が物価高騰に対する追加策として、「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」の積み増しを行うとともに、引き続き「医療・介護・保育施設、学校施設、公衆浴場等に対する物価高騰対策支援」を価格高騰への対応に効果的と考えられる推奨事業メニューとしたが、都道府県等の対応によって地域でばらつきが生じている他、地方創生臨時交付金が届くまでに一定の期間を要するなどの課題がある、(2)現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻等による世界的なエネルギー価格の高騰や、それと相まって人件費の上昇を始めとする急激な物価高騰・賃金上昇の状況にあるが、公定価格により運営する医科歯科医療機関、薬局、介護施設等は価格に転嫁することができず、物価高騰と賃上げへの対応には十分な原資が必要となっている、(3)多くの介護施設においても、コロナ禍及び物価高騰の影響によって経営上の収支が悪化し、更に元々不足している介護従事者が、比較的賃金の高い他産業へ流出してしまうことが増えており、これらにより施設の維持に支障、困難を来す状況となっている―こと等を説明。
 更に、こども・子育て、少子化対策の財源を捻出するため、診療報酬の抑制、医療機関収支の適正化等を行うべきとの意見があることにも触れ、「こども・子育て、少子化対策は大変重要な政策であるが、病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはならない」とした。
 その上で、「労働力人口6900万人の約12%に当たる、約800万人の全国の医療・介護従事者の賃上げを喫緊に実現するためにも、令和6年度のトリプル改定で物価高騰と賃上げへの対応を『骨太の方針』に明記し、必要財源を確保するよう、強く要望する必要がある」と述べ、今回の総会で国医協の総意として、決議を取りまとめることへの理解を求めた。
 引き続き、協議に移り、決議案は全会一致で採択され、総会は終了となった。
 今後、国医協では本決議を基に、関係各方面に対してその実現を強く求めていくことにしている。

医療介護12団体で合同声明まとめる

 なお、この問題について、日本医師会では、総会の開催に先立つ5月25日には、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会、全国医学部長病院長会議、全国老人保健施設協会、全国老人福祉施設協議会、日本認知症グループホーム協会と共に、「医療・介護における物価高騰・賃金上昇への対応を求める合同声明」を取りまとめ、公表した(声明の全文は日本医師会ホームページを参照)。

決議
 エネルギー価格の高騰や、それと相まって人件費の上昇をはじめとする急激な物価・賃金高騰の状況にある。しかしながら、公定価格により運営する医科歯科医療機関、薬局、介護施設等は、価格に転嫁することができず、物価高騰と賃上げへの対応には十分な原資が必要である。
 一方で、こども・子育て、少子化対策は大変重要な政策であるが、病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはならない。
 国民の生命と健康を守るため、全就業者の約12%(約800万人)を占める医療・介護分野の就業者がしっかりと役割を果たせるよう、医療・介護分野における物価高騰・賃金上昇に対する取組を進め、国民に不可欠な医療・介護を確保する必要がある。
 よって、「骨太の方針」に、令和6年度のトリプル改定での物価高騰と賃上げへの対応を明記していただき、必要財源を確保することを、本協議会の総意として、強く要望する。
以上、決議する。
令和5年5月31日
国民医療推進協議会
キーワード:国民医療推進協議会とは
181105e2.jpg 平成16年10月、「国民の健康の増進と福祉の向上を図るため、医療・介護・保健及び福祉行政の拡充強化をめざし、積極的に諸活動を推進すること」を目的に、日本医師会が各医療関係団体等に呼び掛け、発足したものである。
 これまで、国民皆保険制度を守るための活動や禁煙推進運動などの活動を行ってきた。
 現在は41団体が参加しており、日本医師会の松本吉郎会長が会長を務めている。

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