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令和5年(2023年)8月20日(日) / 日医ニュース

オンライン資格確認の課題と対応状況などを説明

オンライン資格確認の課題と対応状況などを説明

オンライン資格確認の課題と対応状況などを説明

 令和5年度都道府県医師会社会保険・情報システム担当理事連絡協議会が7月20日、日本医師会館とテレビ会議のハイブリッドで開催された。
 長島公之常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつを行った松本吉郎会長は、国が推進するオンライン資格確認を基盤とする医療DXが、日本医師会の目指す「国民・患者の皆様への安心・安全でより質の高い医療の提供」や「医療現場の負担軽減」の実現に資するものと判断し、全面的に協力してきたとする一方で、原則義務化されたにもかかわらず、マイナ保険証のひも付けの誤りや、何らかの原因で資格確認できない場合の対応方法が明確ではなかったことにより、国民・患者、医療現場に不安と混乱が生じていることを指摘。「これらの不安と混乱の払拭(ふっしょく)はまさに喫緊の課題である」と強調した。
 更に、社会保障審議会医療保険部会において、これらの点の対応策等が示されたことに触れ、「特に、何らかの事由で資格確認できない場合でも、患者については『保険料を払っていれば必要な自己負担で必要な保険診療を受けられるようにすること』、医療機関については『経済的負担(未収金等)が発生しないようにすること』が明確化されたことは、大きな前進だと捉えている」と述べた。

課題を丁寧に解決していく―加藤厚労大臣

 次に、加藤勝信厚生労働大臣がビデオメッセージであいさつを行い、オンライン資格確認の推進に対する医療界の尽力に感謝の意を示した上で、「マイナンバーカードによるオンライン資格確認には、本人の受診履歴に基づいた質の高い医療や効率的な医療システムの実現に資するなど、さまざまなメリットがある」と説明。医療機関の事務負担の軽減に加え、安心・安全で質の高い医療を提供するための医療DXの基盤整備につながるとした他、国民にオンライン資格確認のメリットを実感してもらうためには、データが正確に登録され、医療現場において安心・安全に利用できるものでなければならないとの見方を示した。
 また、これまで明確になっていなかった、マイナンバーカードで医療機関などを受診する際、何らかの事情でその場でオンライン資格確認を行えない場合の自己負担などの取り扱いについて、既に通知を発出し、遅くとも8月から保険料を支払っている人が医療費の3割分等の負担で必要な保険診療を受けられるよう、周知に努めていくとした。
 加藤厚労大臣は最後に、「新たな課題について、指摘があればしっかりと受け止めて、一つ一つ丁寧に解決していくという姿勢で臨んでいく」と述べ、医療現場の理解・協力を改めて要請した。
 引き続き行われた議事では、(1)連絡協議会の趣旨など、(2)オンライン資格確認の現状と今後の対応―について説明が行われた。

日本の医療は世界のトップに立てる―長島常任理事

 (1)では、長島常任理事が、まず、現在、オンライン資格確認の義務化対象施設の約85%が既に運用を開始しており、数にして医科、歯科、薬局で計18万施設に上ることを紹介し、「医療DXは未来の話ではなく、既に始まっている」と述べた。
 その上で、日本医師会が目指す医療DXは、適切な情報連携や業務の効率化などを進めることで、国民・患者への安心・安全でより質の高い医療の提供と同時に医療現場の負担軽減につながるものであり、国が推進するオンライン資格確認を基盤とする医療DXは、これらの実現に資すると判断し、日本医師会として全面的に協力していると説明した。
 併せて、医療DXが必要となる背景を解説。日本の医療は今後、地域・全国連携の必要性が高まり、医療情報の量及び業務・費用負担が増大するとともに、地域医療連携や地域包括ケアシステム、地域を面としてつなぐかかりつけ医機能の発揮等も求められることから、災害やパンデミックなどへの対応も含め、いつでも(24時間365日)、どこでも(全国どの医療機関でも)対応が望まれるとして、「従来のアナログ的方法だけでは実現不可能であり、デジタル技術を活用した『適切な情報連携』と『効率化』が必須」と述べた。
 次に、日本の医療のIT化については、「個々の医療機関内部のIT化、デジタル化は進んでいるものの、医療機関がITネットワークでつながっていないことがこれまでの最大の弱点だった」と指摘。
 今後医療DXによって、日本の医療の長所を継続させながら時代の変化に対応し、日本中の優れた「個」をネットワークでつながる「チーム」とすることで、「日本の医療は世界のトップに立てる」との見方を示した他、個々の医療機関だけではなく、日本全体の医療システムの負担軽減にもつながるとした。
 また、国が進める医療DXの三つの柱についても解説。
 電車の運用に例え、「国は①全国医療情報プラットフォーム:全国に同じ規格の線路網を引く②電子カルテ情報の標準化等:電車の規格を一つに決める③診療報酬改定DX:電車(標準型レセコン・電子カルテ)を提供する―ことを進めているがその路線、電車を、それぞれの地域のニーズに合わせてどう活用するかが含まれていないため、日本医師会や都道府県医師会からの提案が必要となる」と述べ、会内の医療IT委員会でも検討を進めていること等を紹介した。
 (2)では、水谷忠由厚生労働省保険局医療介護連携政策課長が、主に、オンライン資格確認における、①保険者による迅速かつ正確なデータ登録の確保②マイナンバーカードでオンライン資格確認を行うことができない場合の対応―について説明を行った。
 ①では、現在、「被保険者の資格取得から保険者のデータ登録までに時間がかかる」「個人番号未提出者の場合、保険者が自ら調査し、被保険者の資格データを登録しているが、特定できない場合や誤りが生じる場合がある」ことが課題となっているとした上で、省令改正によってデータ登録のタイムラグ及びデータ未登録の解消を図るとともに、誤登録防止チェックの強化も進めているとした。
 また、オンライン資格確認における登録データの正確性の確保に関して、新規の誤り事案の発生防止のため、資格取得の届出における被保険者の個人番号等の記載義務を法令上明確化するなど、新規登録データの正確性確保に向けた省令改正を行った他、システムの改修を行い、来年度から新規登録データの全件チェックを始める予定であることを明らかにした。
 併せて、登録済みデータの点検についても、全保険者による点検を要請するとともに、本年7月末までに作業結果を報告することを求めており、異なる個人番号が登録されている疑いがあるものについては、本人に送付する等により確認を行う方針であることを説明。オンライン資格確認の疑問を含めたマイナンバー関連の問題が生じた場合には、マイナンバー総合フリーダイヤル(TEL:0120-95-0178)を活用して欲しいと呼び掛けた他、オンライン資格確認等システムを活用した薬剤情報等の閲覧により診療等を実施する場合における本人確認の徹底について、改めて協力を要請した。
 ②では、マイナンバーカードでオンライン資格確認できないのは、大きく分けて、「転職等のタイムラグにより、新しい有効な保険証が発行されていない場合」「保険証は発行されているが、システムへのデータ登録が完了していない場合」「保険証は発行されており、システムへのデータ登録は完了しているが、機器不良等のトラブルによりオンライン資格確認ができない場合」に分けられるとした上で、それぞれに対して、現在どのような対応を行っているかを解説。加えて、各種関連通知の要点を説明し、仮に被保険者資格が不詳の場合であっても、なるべく医療機関の事務的な負担を軽減し、金銭的な損失(いわゆる未収金)が発生することのないよう進めていることを強調した。
 更に今後、被用者保険における加入者に対する周知を進めるため、転職等により新しい健康保険証が交付される際に、保険者がオンライン資格確認等システムへのデータ登録状況を併せて知らせる取り組みを進めていくとともに、そうした仕組みが整うまでの間も、オンライン資格確認ができない場合等の対応について周知を行っていく方針を示した。
 協議では、事前に寄せられた6都府県からの質問・意見に対し、長島常任理事及び厚労省が回答。発熱外来等で動線の関係上資格確認ができない時の考え方や、機器のランニングコスト、故障時の対応、被保険者資格を偽った不正受診、サイバーセキュリティなどについて懸念する意見などが出された。
 総括した角田徹副会長は、「オンライン資格確認を導入することで形成されるネットワークは、医療DXを実現するために欠かすことのできないものである」と述べるとともに、各都道府県医師会からの質問や意見を踏まえ、医療機関の負担をできる限り減らすため、これまで以上に真摯(しんし)に取り組んでいく姿勢を示し、協議会は終了となった。

お知らせ
 本連絡協議会を撮影した動画や資料につきましては、日本医師会ホームページのメンバーズルームに掲載されていますので、ぜひ、ご活用願います。

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