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令和6年(2024年)1月5日(金) / 日医ニュース

令和6年度診療報酬改定に関する意見書まとまる

令和6年度診療報酬改定に関する意見書まとまる

令和6年度診療報酬改定に関する意見書まとまる

 中医協総会が昨年12月8、13の両日、都内で開催された。8日の総会では診療・支払両側から令和6年度診療報酬改定に対する意見表明が行われた他、13日には公益側から令和6年度診療報酬改定に関する中医協としての意見書案が提示され、了承された。

総会(8日)

 8日の総会で診療側を代表して意見を述べた長島公之常任理事は、冒頭、診療報酬について、「厚生労働大臣によって全国一律の公定価格により定められ、国民にとって安全かつ安心できる医療を提供する原資になるものであり、医学の進歩・高度化に対応するための設備投資、患者ニーズの多様化に応える医療従事者の雇用及び拡充に不可欠なコストを賄うものである」とし、原則2年ごとに改定される診療報酬は、改定間の賃金や物価の動向を反映するものでなければならないと強調。「医療機関・薬局は新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染拡大前と比較しても厳しい経営を強いられている」として、医療の質の向上と、賃上げの好循環を医療従事者に行き渡らせるためにも、令和6年度の診療報酬改定においては従来以上の大幅なプラス改定が必要と改めて主張した。
 その上で、同常任理事はコロナに関する診療報酬上の特例や補助金、掛かり増し経費の影響を排除した病院・診療所の損益率を見ると、コロナ後3年間の平均は、コロナ前の平均を下回っているとするとともに、コロナ禍における診療報酬上の特例や補助金は一過性の収益に過ぎないと指摘。更に、全ての医療機関がこれらの収益を得たわけでもないことにも言及し、これらの影響を除いた上で令和6年度診療報酬改定の議論を行うべきと主張した。
 また、コロナ関係補助金を除いた上で令和4年度の損益率を見ると、一般病院の7割弱、一般診療所の約3割が赤字であり、物価高騰、賃金上昇が続く中、既に大幅に縮小されているコロナ特例が廃止されることになれば、赤字施設の割合が更に増えることを懸念。それにより、地域医療体制の維持が困難となる可能性を示唆した。
 続けて、同常任理事は、(1)医療における賃上げが人材確保を支え、経済の好循環、地方創生をも生み出す、(2)食材料費・光熱費等の物価高騰への対応、(3)医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進、(4)ICT活用や医療の高度化は、政府の成長戦略として必須、(5)薬価改定財源も併せ、異例の診療報酬改定を乗り切る―について、それぞれ考えを説明した。
 (1)では、「この3年間、多くの医療機関等では、不眠不休で未知のウイルスに立ち向かい、時間外に発熱外来やワクチン接種、自宅・宿泊療養者の健康観察などを担ってきた」とするとともに、その際の補助金や診療報酬上の特例による一時的な収入増は、コロナ流行時に適切な対応をしてきた証でもあると強調。コロナ禍という特殊な状況下で生まれたストックを賃上げの原資とするのは不適当であり、診療報酬を引き上げることで生じるフローによって賃上げに対応することが適当と改めて主張した。
 更に、公定価格で運営される医療・介護分野の賃金上昇率は、他の分野に比べて遅れを取っていることに言及し、医療分野からの人材流出を防ぐのみならず、雇用の拡大や地方創生につなげる意味でも、恒久的に賃金を引き上げるための原資を確保する必要性があると指摘した。
 (2)では、今般の食材料費、光熱費等の物価高騰は、医療機関に大きな影響を及ぼしているとし、特に、入院中の食事療養費については、約30年間も据え置かれたままで、経営努力のみで良質な食事を提供することは困難であると指摘。更に、病院給食委託単価は、令和3年時点で既に公定価格の単価(3食分で1920円)を上回る状況で、令和4年度にはその差が更に広がっているとし、「患者への良質な食事提供を継続していくための対応は待ったなし」と主張した。
 (3)では、令和6年4月から始まる医師の働き方改革を目的として設定された「地域医療体制確保加算」や、医師から他の医療関係職へのタスク・シフト/シェアに活用された「医師事務作業補助体制加算」に言及。これらの診療報酬項目は、これから始まる働き方改革の確実な実行において効果を発揮するものであり、次期改定においてもこの歩みを着実に継続し、更に加速させていくため、現場で有効に活用されるような見直しと評価の継続が求められるとした。
 (4)では、医療の高度化や、AI、ICT等の技術の医療への活用は、医療の質の向上のみならず、医療従事者の負担軽減を図り、更なる効率化につながることが期待されると指摘。患者にとってもサービスの向上として感じられるものであり、診療報酬改定ごとに不断に医療技術として取り入れる必要性を強調するとともに、ICTの活用を進めるためのインフラの整備に係る経費については、診療報酬でその原資を担保する必要があるとした。
 (5)では、まず、薬剤料には、薬価制度発足時に十分な技術評価ができなかった不足分に相当する潜在的技術料が含まれていることを説明。その上で、平成26年度で薬価改定財源が消費税対応に活用され、その後、薬価改定財源は診療報酬本体に活用されていないことを指摘し、「診療報酬と薬価は不可分一体の関係にある」と強調した。
 また、次期改定はこれまでの改定時とは明らかに状況が異なるとし、賃金上昇及び医療DX対応に向けた環境整備への対応には、薬価改定により生じる財源を充てるべきと主張した他、人材の紹介手数料の上昇により、医療業界における人材確保に関して厳しい状況が続いていることについても理解を求めた。

消費税上乗せ分の見直しは行わないことを了承

 その他、8日の総会では、(1)令和6年度診療報酬改定における消費税負担の上乗せ点数の見直し、(2)入院時食事療養費の見直し―に関しても議論が行われた。
 (1)に関しては、昨年12月6日に開催された「中医協医療機関等における消費税負担に関する分科会」においても議論が行われ、厚労省事務局が令和3年度・4年度の控除対象外消費税の診療報酬による補塡(ほてん)状況に関する調査結果を報告。同分科会では医科、歯科、調剤を合わせた全体の補塡率は、令和3年度が104・5%、令和4年度が106・1%だったことを踏まえ、「医科全体、歯科で補塡不足になっておらず、調剤でも令和3年度から4年度にかけて改善がみられている」として、令和6年度診療報酬改定においては、消費税上乗せ分の診療報酬点数の見直しは行わない方針が提案され、おおむね了承されていた。
 総会では、分科会での議論を踏まえ、厚労省事務局は見直しを行わないこととし、引き続き補填状況を検証することを提案。議論の結果、了承された。
 また、(2)では、事務局から「昨今の食材費等は特に足下で大きく高騰している」「介護保険の食費の自己負担1食当たり約482円と比べても22円の差がある」ことなどを示して、食材費等の高騰を踏まえた対応を行う観点から、入院時の食費を30円引き上げることを提案。診療・支払両側から異論は出ず、了承された。
 議論の中で、長島常任理事は、①経営努力のみでは食事療養の提供が難しい②病気治療の一環として重要な食事療養の質が下がることは、医療の質の低下を意味する―ことなどを説明。引き上げに理解を求めるとともに、その実施に当たって、丁寧な周知を求めた。
 また、診療側の池端幸彦委員は、自己負担が30円上昇することになることから、低所得者に対する丁寧な対応を検討するよう要請した。

総会(13日)

 13日の総会では、公益側委員から、医療経済実態調査、薬価調査及び材料価格調査の結果等を受けて行われた審議を踏まえて作成した、令和6年度診療報酬改定に関する意見書案が示された。
 その中では、世界に冠たる国民皆保険を堅持し、あらゆる世代の国民一人一人が安全・安心で効率的・効果的な質の高い医療を受けられるようにすることが必要であり、医療を取り巻く環境の変化や多様な国民のニーズに柔軟に対応することが重要とした上で、中医協として、社会保障審議会医療保険部会及び医療部会が取りまとめた「令和6年度診療報酬改定の基本方針」に基づき、全ての国民が質の高い医療を受け続けるために必要な取り組みについて協議を真摯(しんし)に進めていくとの基本認識については、診療・支払両側委員の意見の一致が見られたと指摘。その一方で、令和6年度診療報酬改定に臨む考え方には意見の相違が見られるとして、診療・支払両側の意見を両論併記した。
 議論の中では、診療・支払両側からは異論は示されず、意見書案は了承され、小塩隆志中医協会長から武見敬三厚労大臣〔代理:須田俊孝大臣官房審議官(医療介護連携等担当)〕に提出された。

認知症治療薬の保険適用を了承

 その他、13日は認知症治療薬「レケンビ点滴静注200mg」「同500mg」(一般名=レカネマブ)について、薬価を200mgは1瓶4万5777円、500mgは1瓶11万4443円として、保険適用することが提案され、了承された。
 本薬の効能・効果は「アルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認知症の進行抑制」となっており、ピーク時(2031年)の市場規模は、年間の患者数が3・2万人、売り上げが986億円と予測されている。
 今後は、投与対象の患者要件と医師・施設要件などを定めた最適使用推進ガイドラインを策定、その内容を基に保険診療上の注意事項を定めた留意事項通知が発出されることになっている。
 了承するに当たって、長島常任理事は「他の薬剤とは異なり、市場規模が大きくなる可能性も否定できない上、介護費用の軽減に関する検討が求められていることなどを踏まえ、費用対効果評価の扱いについては個別に検討する必要がある」とした。

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