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令和6年(2024年)1月20日(土) / 日医ニュース

「新たな潮流のなかで母体保護法指定医師が取り組むべきこと」をテーマに開催

「新たな潮流のなかで母体保護法指定医師が取り組むべきこと」をテーマに開催

「新たな潮流のなかで母体保護法指定医師が取り組むべきこと」をテーマに開催

 令和5年度家族計画・母体保護法指導者講習会が昨年12月2日、WEB会議で開催された。
 講習会は渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭、ビデオメッセージであいさつを行った松本吉郎会長は、現在、日本は急速な出生率の低下による少子化社会を迎えており、少子高齢化は社会状況を左右する極めて重大な課題であるとした。その上で、「こども家庭庁でもさまざまな取り組みが行われているが、日本医師会としても、社会全体で妊娠期から切れ目のない支援を受けられる体制整備が図られるよう、実効性のある政策の実現に向けて積極的に政策提言を行っていく」と主張するとともに、本講習会が実り多きものとなることに期待を寄せた。
 引き続き、渡辺由美子こども家庭庁長官(木庭愛こども家庭庁成育局母子保健課長代読)並びに石渡勇日本産婦人科医会長があいさつした。
 その後、「新たな潮流のなかで母体保護法指定医師が取り組むべきこと」をテーマとした講演が行われた。
 石谷健日本産婦人科医会常務理事/日本鋼管病院産婦人科部長は、「経口中絶薬の有効性・安全性は確立されており、手術リスクのあるケースでは有用である」とする一方で、「排出時期が一定でないことなど、治療を受ける側の十分な理解も必要である」と説明。今後の課題としては、「安全な初期人工妊娠中絶治療にアクセスするための啓発」「母体保護法指定医師制度や運用方法の改善」などが挙げられるとした。
 水谷歩日医総研主任研究員/弁護士は、令和5年7月に施行となった改正刑法の性犯罪関係の部分に関して、その改正の経緯や内容について、海外の法制度と比較しながら、法務省の「性犯罪関係の法改正等Q&A」を基に概説。その他、産婦人科診療に関連する問題点について解説した。
 その上で、水谷主任研究員は、「令和5年の改正においても、明治時代に制定された当時の文言が使用されている部分もあり、更なる改正を行う必要はないのか検討すべき」とした。
 落合和彦日本医師会母体保護法に関するWG委員長/東京都医師会理事は、昨年5月に実施された「都道府県医師会における母体保護法指定医師制度運用に関するアンケート」の結果や、母体保護法指定医師の指定基準(日医モデル)策定の歴史的背景について概説した。
 落合委員長は本アンケートの結果を基に、各都道府県の現状と日医モデルとの違いや運用上の問題点を指摘するとともに、日医モデルの課題として、母体保護法指定医師の取得要件の「技能」の項目において、経口中絶薬のみの場合に関する取り扱いが定まっていないことを挙げ、早急に改正案を作成し、今春をめどに第一弾として発出する予定であることを報告した他、配偶者同意に関する事項や経口中絶薬の運用上の問題点等は継続的に検討していく考えを示した。
 指定発言では、木庭課長が母子保健の最近の動向として、こども家庭庁が実施している「妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワーク構築事業」「新生児マススクリーニング検査に関する実証事業」「『1か月児』及び『5歳児』健康診査支援事業」などの取り組みの内容を説明。また、経口中絶薬に関しては、「海外の状況や課題を基に、円滑な運用に努めていく」と述べ、引き続きの協力を求めた。
 閉会のあいさつを行った濵口欣也常任理事は、「本講習会で得た知識や内容を各々の都道府県医師会で開催される伝達会等で広く周知して欲しい」と述べ、講習会は終了となった。

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