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令和6年(2024年)3月20日(水) / 日医ニュース

各医会の取り組み発表を基に医療界の諸問題を議論

各医会の取り組み発表を基に医療界の諸問題を議論

各医会の取り組み発表を基に医療界の諸問題を議論

 今年度2回目となる、第30回日本臨床分科医会代表者会議が2月21日、日本医師会館小講堂で開催され、日本医師会からは松本吉郎会長を始めとした役員が出席。分科医会からは日本臨床内科医会を始め12医会の会長等代表者が参加し、それぞれの意見表明や問題提起とともに質疑応答が行われ、活発な討議が交わされた。
 冒頭、あいさつした菅原正弘日本臨床内科医会長は、昨年5月に日本臨床内科医会長に就任した際、松本会長を訪問し、医会の活動状況の「日医ニュース」への掲載を依頼したエピソードを紹介。松本会長はこの要望を快諾し、前回の会議(令和5年10月26日開催)の模様が第1492号に掲載された他(別記事参照)、来年度にも全13医会の活動を紹介する記事が掲載される予定となっていることを報告した。
 続いてあいさつした松本会長は、今回の会議が医療界にとって充実した内容となることに期待感を示した。

12の医会から現状に対する問題提起を受ける

 その後、各医会から意見の表明や問題提起等が行われた。
 白根雅子日本眼科医会長は、令和6年能登半島地震の被災地に眼科医療支援車両「ビジョンバン」を派遣し、現地で90名弱の被災者を診療したことを報告。その上で、今後の災害等の発生に備え、各医会がJMAT活動に迅速に参加できる仕組みづくりを要望した。
 その他、医療機関に対するネット上の悪意ある書き込み等への日本医師会の対応について質問。長島公之常任理事は「大きな問題と捉えており、厚生労働省等を通じて問題提起を行っていく」との意向を示した。
 石渡勇日本産婦人科医会長は、依然として接種率が低い状態にあるわが国のHPVワクチン接種について、キャッチアップ接種の認知度向上に対する協力を求めるとともに、男性も接種対象とすることのメリットを説明した。
 これに対し、濵口欣也常任理事は、日本医師会として昨年12月14日、武見敬三厚労大臣に日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会との連名で「子宮頸がん排除への施策に関する要望書」を提出したことを紹介。更に、今後については予防接種事業の実施主体である地方自治体への働き掛け、個別周知の徹底、診療科の枠を超えた活動、行政及び市町村議員と協力した活動や学校への協力要請が重要との認識を示した。
 福與和正日本臨床耳鼻咽喉科医会長は、難聴の啓発キャンペーンを推進していることや、30年ぶりに改訂された『騒音障害防止のためのガイドライン』を紹介。「患者で聞き返しが増えてきたと感じた場合には耳鼻咽喉科に紹介するなど、必要な医療につなげて欲しい」と要望した。
 これに対し、神村裕子常任理事は、産業医の立場から、労働者の安全確保のためには非常に重要な改訂との認識を示し、日本医師会として今後も連携して対応していく意向を示した。
 伊藤隆一日本小児科医会長は、地方在住の子ども達が都会同様の小児医療を受けられない状態が起きていることを憂慮するとともに、出生率低下、妊産婦のメンタルヘルス、海外と比較して少ない小児健診の回数等の問題点を指摘。
 これに対し、渡辺弘司常任理事は、母子保健、小児医療に関する施策の推進のためには地域医師会への働き掛けが欠かせないと強調。母子の心の問題については、日本医師会がハブとなって文部科学省とこども家庭庁の間をつなぐなど、連携を推進していきたいとした。
 長谷川利雄日本臨床整形外科学会副理事長は、ロコモティブシンドロームとフレイルの相違と共通点を概説した他、小・中学校の児童生徒の運動能力が令和元年度から低下傾向にある要因について、新型コロナウイルス感染症の影響も考えられることを報告した。
 三木和平日本精神神経科診療所協会長は、現在、国内で600万人超とされる精神疾患患者に対応していくためには、地域でのケアの受け皿になる診療所の充実が重要との認識を示した他、精神科におけるオンライン診療について、初診は対面で行う等の原則を守り、安易なオンライン診療の拡大には反対する姿勢を示した。
 長島常任理事はオンライン診療について、中医協においては「利便性のみを重視して安易な拡大をすべきではない」という点は診療・支払両側の共通認識となっていることを報告。今後も同様の考え方で議論に臨んでいくとした。
 嘉山孝正日本臨床脳神経外科協会理事長は、各医会からの要望等を中医協につなげるシステムや、医療現場における働き方改革の推進状況を共有する仕組みの構築を求めるとともに、日本医師会がリーダーシップを発揮し、各医会からの要望等を国に伝えて欲しいと要請した。
 この要望に対して、松本会長は一定の理解を示し、国とのやり取りをしていく上では組織強化が欠かせないと強調。更に今後もデータ偏重ではない、国民のニーズに寄り添った医療を心掛け、現場の声に基づいて中医協などの場で主張していく考えを示した。
 清原久和日本臨床泌尿器科医会長は、介護・福祉施設から入院に移行する原因の第二位に「尿路感染症」があることを紹介し、予防的な観点をもって尿路感染症を起こさせない工夫が必要だと指摘。その他、男性の更年期障害について、他科から泌尿器科につなげる必要性にも言及した。
 江藤隆史日本臨床皮膚科医会長は、能登半島地震を契機として、迅速な対応が可能となるよう地域単位のチームづくりを進めている他、令和7年2月をめどに法人化を目指して定款等を作成していることを報告。また、在宅医療における皮膚科専門医と在宅医の連携について、オンラインによるD to D型の遠隔診療支援についても保険適用となるよう、厚労省と意見交換を継続していることを紹介した。
 これに対し、細川秀一常任理事は、災害援助活動への参加に感謝の意を示すとともに、JMATとして登録、参加することでJMAT保険の適用が受けられることなどを説明した。
 山田惠日本放射線科専門医会・医会理事長は、世界的に放射線科医が不足しており、日本も例外ではないことを紹介。その原因として、放射線科医を希望する研修医の少なさや働き方改革を挙げ、その解決策として、放射線技師による読影補助等が必要になるとの認識を示す一方、AIによる読影補助の広がりには警鐘を鳴らし、一定の歯止めが必要と指摘した。
 武田純三日本麻酔科医会連合代表理事は、「術中麻酔管理領域」パッケージ研修を受けた特定行為研修修了看護師(以下、特定看護師)に対し、医師が不適切な「診療の補助」の指示を行い、術中麻酔管理業務を担わせる事例が同医会連合に届けられていることを報告。同様の事態を避けるため、「麻酔関連業務における特定行為研修修了看護師の安全管理指針」を策定し、特定看護師の働き方に関する安全管理体制の構築を目指しているとした。
 菅原日本臨床内科医会長は、公費接種の実施主体が市町村であることから、郡市区等医師会の活動が非常に重要になるとした上で、郡市区等医師会単位で公費助成を受けられるシステムの構築を要望。また、同会で作成したリビングウィルを書面で明らかにするための小冊子(同会ホームページでも公開)の活用を求めた。

お知らせ
 日本臨床分科医会所属の13の医会の活動の詳細を日医ニュース4月5日号より、数回に分けて紹介していく予定です。ぜひ、ご一読願います。

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