松本吉郎会長は、6月19日の記者会見で、同月11日に開催された令和6年度第8回経済財政諮問会議において、「経済財政運営と改革の基本方針2024」(「骨太の方針2024」)の原案が示されたことを受けて、日本医師会の考えを表明した。
松本会長は、6月中に閣議決定が予定されている「骨太の方針2024原案」の中の、(1)いわゆる「歳出の目安」、(2)賃上げ、(3)医療DX、(4)医師偏在対策―についてそれぞれ説明。
(1)では、「財政健全化目標と予算編成の基本的考え方」の中で、「予算編成においては、集中的に改革を講ずる2025年度から2027年度までの3年間について、上記の基本的考え方の下、これまでの歳出改革努力を継続する。」という文言が記載されたことについて、この記載が示す意味を解説するとともに日本医師会の主張を改めて説明。「歳出の目安」はデフレ下の遺物であり、社会保障関係費を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめるということは、政府がコストカット型経済からの脱却を目指している中、人件費に上限を設けるようなものであり、政府が重要政策として位置付ける賃上げを阻むものであるとした。
また、物価高騰・賃上げのインフレ下では、税収も保険料収入も増加するので、高齢化の伸びというシーリングに制約された「歳出の目安」という考え方を改める必要があるとした上で、日本医師会がこうした主張を続けてきた結果、注釈部分に「その具体的な内容については、日本経済が新しいステージに入りつつある中で、経済・物価動向等に配慮しながら、各年度の予算編成過程において検討する。」という文言が記載されたことを紹介。閣議決定までに注釈ではなく本文に記載することも検討されているとした。
その上で松本会長は、この文言は社会保障にも適用されるものとの見方を示し、「半歩程度の前進が見られたと思うが、まだまだ不十分だ」と述べるとともに、次年度の「骨太の方針」は令和8年度診療報酬改定の議論に向けて大変重要な位置付けとなることから、「新しいステージに入りつつある経済・物価動向等」について、日本医師会としても情報発信を続けていく姿勢を示した。
(2)では、「賃上げの促進」に関して、「...医療・福祉分野等における賃上げを着実に実施する。」「...ベースアップ評価料等の仕組みを活用した賃上げを実現するため、賃上げの状況等について実態を把握しつつ、賃上げに向けた要請を継続する。」と記載されている他、「当面の経済財政運営」について、「...医療・介護など、公的価格に基づく賃金の引上げ、最低賃金の引上げを実行する。」と記載されていることに言及。本年1月19日には岸田文雄内閣総理大臣、5月24日には武見敬三厚生労働大臣と医療界の賃上げについて意見交換したことに触れた上で、「日本医師会として、引き続き診療報酬の加算措置や賃上げ促進税制の活用等を効果的に組み合わせるなど、賃上げの促進に全面的に協力していきたい」と述べた。
(3)では、「医療・介護DXを推進し、医療費適正化の取組を強化するための必要な法整備を行う。」という記載について、医療DXはそもそも医療費削減を目指すのではなく、「国民・患者への安心・安全でより質の高い医療提供」と「医療現場の負担軽減」の実現に資するものでなければならないことを指摘。「医療DXを医療費適正化と結びつけるような記載となっていることは到底容認できない」と強調するとともに、「閣議決定に向けて、この文言は当然修正されると思うが、医療DXの推進を医療費適正化のみの視点から進めるという発想自体が言語道断だ」と述べた。
(4)では、医師の偏在対策に関する文言が記載されたことに対しては、「医師偏在対策は、まずは不足している地域の声に耳を傾け、それに対し国が必要な支援や好事例の横展開、研修等でそれを支えることが基本であり、自主的な気運の醸成や働きやすい環境の整備等が必要である」と再度強調。財務省による都市部の報酬単価を下げるといった主張は言語道断であるとした上で、ディスインセンティブで行うのではなく、補助金によるインセンティブを設けるのが大前提との考えを示した。
松本会長は最後に、年末の予算編成までの流れを説明し、「日本医師会は引き続き、『国民の生命と健康を守る』という医師の使命を果たせるような予算確保が実現するよう、政府に働き掛けていく」との決意を示した。
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