厚生労働省「新たな地域医療構想等に関する検討会」等で議論が進む『新たな地域医療構想』について、その対応等に関する意見交換を行うため、昨年12月2日に全国知事会との意見交換会をWEB会議で開催し、医師会と都道府県の連携の重要性を確認した。
地域の実情に応じた構想の策定を―松本会長
冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、新たな地域医療構想について、「各地で人口変動や医療資源等の状況が異なる中で、国のガイドライン等だけをよりどころにするのではなく、それぞれの地域の実情に応じて構想が策定されなければならない」と述べた。
続いてあいさつした村井嘉浩全国知事会長/宮城県知事は、医師会の地域医療への貢献と令和6年能登半島地震での支援に感謝するとともに、「都道府県はこれまで以上の役割を担い、地域ごとの医療ニーズに対応し、質の高い医療を効率的に提供する体制を整え、地域医療構想を実現していかなければならない」との考えを示した。
引き続き行われた意見交換の中では、まず、日本医師会の出席者がそれぞれ意見を述べた。
茂松茂人副会長は、大学病院が担う広域診療機能の重要性と、若手医師を地域で育てる地域医療の研修システムの構築の必要性を強調。「医師偏在対策については、医師過疎地域へ派遣された医師が派遣期間終了後にはきちんと戻ってくることができる仕組みの構築が重要である」と主張した。
角田徹副会長は東京都を例に、超高齢社会で医療・介護の担い手が不足している現状を懸念。今までとは異なり、入院病床の確保ばかりでなく、外来・在宅・介護も含めたその地域での医療の将来の姿をしっかりと見据えた計画を立てる必要があるとした。
釜萢敏副会長は、それぞれの地域に合った形で計画を立て、準備をしておく必要があると述べた上で、都道府県医師会長から「新たな地域医療構想を策定し、実行に移すまでに事態が悪化してしまうのではないか」といった声が上がっていることを紹介。早い段階で策定し、速やかに実行に移すことが極めて重要になると強調した。
江澤和彦常任理事は、医療機関の経営状況や介護施設・高齢者向け施設の利用状況などのデータを示しながら説明した上で、「地域のことはその地域の関係者が一番分かっているので、新たな地域医療構想の策定に当たっては、地域の特性や社会資源、住民の医療のかかり方などを尊重しながら議論すべき」と厚労省の検討会での議論の際にも要望していることを説明した。
今村英仁常任理事は、医学部定員数の調整や初期臨床研修におけるマッチングによる調整等の規制的手法について言及。「下手に強制的に行おうとせず、若手医師の気持ちも組み入れて検討していくことが非常に重要になる」と強調した。
続いて、全国知事会の出席者もそれぞれ意見を述べた。
平井伸治全国知事会副会長/鳥取県知事は、東日本と西日本での医師分布の格差を指摘した上で、単純に指標を設けて医師偏在の是正を図ることの問題点を指摘。「現場の医師の立場に立って、働く環境を整えていくことが重要ではないか」とした。
内堀雅雄全国知事会社会保障常任委員会委員長/福島県知事は、実効性の確保のために、全国画一的な取り組みとするのではなく、医療ニーズや医療資源の状況に応じた検討が必要とした他、「現場の医療機関や自治体など、関係者の負担軽減についても検討する必要がある」と述べた。
吉村美栄子同副委員長/山形県知事は、(1)地域の入院医療の確保に向けた地域の病院が進める再編・統合などの取り組み、(2)経営の厳しい公立・公的病院、(3)在宅医療等を進めるための設備整備、(4)地域医療介護総合確保基金―に対する国の財政支援を求めた。
阿部守一全国知事会国民運動本部長/長野県知事は、介護分野との連携のためにも、介護関係者とも連携を図りながら議論していくべきとした他、中山間地域が多い地域においては、オンライン診療等のデジタル技術の活用も重要になるとの認識を示した。
村井全国知事会長は、都道府県が3分の1を負担する地域医療介護総合確保基金について、財政力の弱い県にとっては非常に負担になっているとした上で、国に対する財源確保に向けた要望活動への協力を求めた。
その後は、内堀社会保障常任委員会委員長と松本会長により総括が行われ、会議は終了となった。
キーワード:新たな地域医療構想とは |
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現行の地域医療構想が2025年までの取り組みであることから、2040年頃を見据え、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め、地域の医療提供体制全体について検討されている構想。 |