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令和7年(2025年)1月5日(日) / 日医ニュース

令和7年 年頭所感

令和7年 年頭所感

令和7年 年頭所感

 明けましておめでとうございます。
 会員の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶(よろこ)び申し上げます。
 本年の干支(えと)は、「乙巳(きのとみ)」です。「乙巳」は、「努力を重ね、物事を安定させていく」という意味合いを有するようです。また、「巳(へび)」はギリシャ神話に登場する医術の神・アスクレピオスが持つ杖に巻き付いていたとして、日本医師会を始め医療関係団体のロゴに広く採用されており、巳年は医療と所縁のある年とも言えます。
 会員の先生方からのご支持により、私が率いる執行部は昨年6月に2期目を迎えました。本年も引き続き、わが国の世界に冠たる国民皆保険制度を堅持するため、努力を重ねて参ります。
 組織強化につきましては、私が日本医師会長に就任して以来、力を入れて取り組んで参りました。その結果、昨年7月末には初めて会員数が17万7000名を突破しました。ご協力頂いた全国の医師会の先生方には改めて深く感謝申し上げます。
 この組織強化の一環として、新たに医師会会員情報システム「MAMIS」(マミス)を構築いたしました。昨年10月から地域医師会への導入が順次始まっており、12月末までに全国の医師会に導入されております。これにより、これまで書類で行ってきた入会・異動等の手続きをWEB上で行えるようになり、負担が軽減されます。異動時の手続きの煩雑さは長らく退会検討理由の一つになっておりましたが、この課題は「MAMIS」の導入により解消に向かうものと考えております。
 医師会の組織強化の眼目は、現場に根差した提言をしっかりと医療政策の決定プロセスに反映させていく中で、医師の診療・生活を支援し、国民の生命と健康を守ることにあります。対外的にも医師会のプレゼンスを一段と高められるよう、日本医師会は引き続き組織強化に努めて参ります。
 昨年10月に行われた衆議院議員選挙において、与党が過半数割れとなり不安定な状態となっておりますが、本年7月には参議院議員選挙が予定され、日本医師連盟は、本会の釜萢敏副会長を組織内候補として擁立することを決定しております。
 釜萢先生は、6期11年にわたり日本医師会の常任理事・副会長として、看護職の養成や新型コロナウイルス感染症対応など、幅広い業務を担当され、医師会業務に精通しておられます。また、政治に対する造詣(ぞうけい)も深い釜萢先生は、地域医療に携わり、地域医療が抱える課題にしっかりと取り組んでおられるだけではなく、幅広い人脈をもち、今後、更に新たな人脈を築いていかれるであろうことから、余人をもって代え難い存在です。釜萢先生の政治活動を全力で応援して参りますので、会員の先生方におかれましてもご支援を賜りたく存じます。
 本年は令和8年度診療報酬改定の議論が本格化いたします。少子高齢化が進む日本において、地方では特に人口減少が激しい上、昨今の急激な人件費の増加、食材料費の高騰なども相まって、現在の医療機関の経営状況は非常に厳しく、このままでは人材確保が更に難しくなり、国民に適切な医療を提供できなくなってしまいます。
 また、医療等は公定価格で運営されており、コスト増加分を価格に転嫁することができません。人材も他産業に流出し続けるなど、地域医療が崩壊しかねない、まさに、危急存亡の状況です。
 国民が必要な医療を受けることができる地域医療の確保のため、賃金上昇、物価高騰等に直面する医療機関の経営の現状について分析を行い、政府・与党にしっかりと働き掛けるとともに、医療機関の経営の安定化に向けて取り組んで参ります。
 医療DXにつきましては、その入口となるマイナ保険証によるオンライン資格確認を基本としていくとの国の方針にのっとって、昨年12月には健康保険証の新規発行が終了いたしました。これを受けて、「マイナ保険証がなければ保険診療が受けられなくなるのではないか」という懸念が一部で生じているようですが、それは大きな誤解です。
 日本医師会は、「国民も医療者も誰一人、日本の医療制度から取り残さない」ことが医療DXを適切に進めるための大前提であると強く主張して参りました。その甲斐(かい)もあって、マイナ保険証を所持していない方には、従来の健康保険証に相当する資格確認書が自動的に発行されるなど、この大前提に従った対応が取られております。日本医師会としても、マイナ保険証の普及に引き続き努めるとともに、資格確認書でも保険診療が受けられる旨の周知を図って参ります。
 医師偏在対策につきましては、一つの手段で解決するような「魔法の杖」は存在せず、さまざまな手段を駆使して複合的に対応する必要があります。一つの施策で対応すると大鉈(なた)を振るうこととなり、地域医療が崩壊しかねません。また、若い世代だけでなく、全ての世代の医師が地域偏在に対応しなければなりません。今後、未曽有の超高齢・人口減少社会を迎える中、将来の医療を担う若手医師の声を傾聴していくことも重要です。
 昨年8月に医師偏在に対する日本医師会の考え方を公表いたしました。そのうち、令和6年度補正予算でリカレント教育と広域マッチング事業に対して、日本医師会の提言どおりの対応がなされましたが、令和7年度予算等でも引き続き医師偏在対策への対応がなされるよう、全力で取り組んで参ります。
 また、本年4月より、かかりつけ医機能報告制度が施行され、地域における面としてのかかりつけ医機能の更なる発揮に向けた取り組みが始まります。地域を面で支えるため、多くの医療機関に手を挙げて参画頂きたいと考えております。日本医師会としてもかかりつけ医機能報告制度を見据え、研修の充実等を図って参ります。
 その他にも「医薬品の安定供給」「2040年ごろを見据えた新たな地域医療構想の検討」「医師の働き方改革への対応」「自由診療の適切な運用」など、医療界には取り組むべき課題が山積しております。
 本年も日本医師会は医療界の総力を結集し、いわば「常山(じょうざん)の蛇勢(だせい)」で、攻めるところは攻め、守るところは守る、攻防一体の活動を進めて参ります。
 新しい年が会員の先生方お一人お一人にとって充実した幸多き年となりますことをご祈念申し上げ、年頭に当たってのごあいさつといたします。
 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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