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令和7年(2025年)1月20日(月) / 南から北から / 日医ニュース

ファーブル昆虫記

 男子は昆虫好き、女子は植物好き。夏休みの自由研究も男子は昆虫採集、女子は押し花でほぼ決まり。わが家の女房はやたら植物に詳しいが、カメムシも知らない。そして私は昆虫には詳しいが草花には疎い。山菜採りではいつも女房にバカにされる。
 子ども向けファーブル昆虫記はそれまでも何度か読んだことがあった。いい年になって今度は原作を全巻読破しようと岩波文庫10巻を買い込んだ。が、大体3巻目くらいで挫折。なぜかその辺から面白くなくなってしまう。
 何度かチャレンジしてやっと完読したが、何か無駄な努力をしたような気分。何でかな?
 さて、昆虫記の圧巻は狩人バチ(ラングドックアナバチなど)。
 彼らはそれぞれの獲物(キリギリスモドキなど)の神経系に正確に針を刺しまひさせ、幼虫の生餌にする。獲物を与えられた幼虫は誰に教えられたわけでもないのに、獲物の体の、命に関係ない所から食べ始め、最後まで獲物を生かしたまま食べ尽くす。
 どうしてこんなことが可能なのか。ファーブルは、全能の神がそのようにしたからに違いないと考えた。そして、こんなことがダーウィンの進化論で説明できるはずがないと、進化論を否定した。
 だが、これこそが進化のたまもの。生物界の一見不思議な出来事は全て進化の過程でDNAにプログラムされたもの。最初の単細胞生物からヒトに至るまでの進化は全てDNAに残されている。そして下位生物ほどプログラムに忠実で融通が利かない。狩人バチも獲物のひげを切ったりするとそれを認識できなくなる。
 何かに似ている。そう、コンピューター。頭に来るほど融通が利かない。と思っていたら、最近はこちらが間違うと「このことでしょうか?」と聞いてくる。これはこれで何とも気味が悪い。そのうちAIに命令される時代になるのかな?

新潟県 新潟県医師会報 NO.894より

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