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令和7年(2025年)3月5日(水) / 日医ニュース

「出産から育児までの健康管理」をテーマとして開催

「出産から育児までの健康管理」をテーマとして開催

「出産から育児までの健康管理」をテーマとして開催

 令和6年度母子保健講習会が2月9日、日本医師会館大講堂で開催された。
 講習会は渡辺弘司常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長は、政府がわが国で急速に進む少子化を「静かな有事」と捉え、異次元の対策に取り組んでいることに触れ、日本医師会としても次世代を担うこども達の未来を見据え、わが国の母子保健が更に改善されるよう、引き続き積極的に政策提言をしていく考えを示した。
 引き続き、福田稠熊本県医師会長/日本医師会母子保健検討委員会委員長、三牧正和帝京大学医学部小児科学講座主任教授/同委員会副委員長を座長として、4題の講演が行われた。
 是松聖悟埼玉医科大学総合医療センター小児科教授は、こどもの健康管理環境が大きく様変わりする中で発達障害や医療的ケア児など、新たな課題も見えてきている現状を説明した上で、5歳児健診が実際に行われている大分県の竹田市や津久見市の例を紹介。地域でこども達を育てていこうという意識が高まるばかりでなく、不登校児の減少も見られているとして、5歳児健診の意義を強調した。
 また、「小江戸・こども支援推進協議会」の設立や小・中学生向けの「親となるための教育プログラム」の開発など、自身の取り組みについても言及し、ライフ・ステージは継代されていくものであり、出産から育児までの健康管理の際には、親となるこどもを育てるという視点が重要になるとの考えを示した。
 濵口欣也常任理事は、妊産婦の抑うつや不安は妊産婦の自殺ばかりでなく、児童虐待、こどもの成長にも悪影響を及ぼす恐れがあることから、妊産婦のメンタルヘルスケアがますます重要になっていると指摘。その対策として、『妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル』の作成や「母と子のメンタルヘルスケア研修会」の開催など、日本産婦人科医会が行っている事業を紹介した。
 更に、大分県や北九州市で実施されている「ペリネイタルビジット事業」や、令和3年度にその実施が市町村の努力義務となった「産後ケア事業」についても触れ、「それらを通じて、産科と小児科が連携していくことが求められる」と述べるとともに、今後の課題として、精神科との連携の強化を挙げた。
 髙橋駿こども家庭庁成育局母子保健課課長補佐は、1カ月児健診について、医療機関が独自に行っているところが多く、実施方法も標準化されていないことから、実施体制の整備を図るため、令和6年度の補正予算において10億円の予算が確保されたことを報告。「国では健診医の研修事業も行うことになっており、ぜひ、活用して欲しい」と述べた。
 また、昨年12月に公表した『1か月児健康診査マニュアル』の内容についても紹介し、マニュアルに書かれた問診票や健康診査票の項目を基に、健診の際に注意すべき事項などを解説。「こども達に健康に成長してもらうためにも1カ月児健診の全国展開を目指していきたい」として、更なる協力を求めた。
 永光信一郎福岡大学医学部小児科主任教授は、5歳児健診の実施率が低い理由について、(1)健診医の不足、(2)発達の評価の実施方法が分からない医師が多い、(3)健診で要フォローとされたこどもに対するフォローアップ体制の構築の難しさ―などが考えられると指摘。また、自治体に対して行ったアンケート結果についても紹介し、本調査からも多くの自治体が医師の確保に困っていることが明らかになったとして、医師会に医師確保に向けた協力を求めた。
 その他、5歳児健診を全国展開するため、自身がポータルサイトを開設したことや、心理発達相談や睡眠保健指導の内容を紹介。5歳児健診の実施率を高めるためにも、その目的はこどもが安心して、小学校に入学できるように早期に支援を始められるようにすることにあり、小児科医を始め、地域でこども達に関わる全ての人々がその担い手であることを、多くの関係者に理解してもらう必要があるとの考えを示した。
 その後に行われた討議では演者と参加者との間で、「産後ケアの質の担保や医師に関わってもらうための方策」「1カ月児健診の実施体制」などについて、活発な討議が行われた。
 最後にあいさつを行った釜萢敏副会長は出産・育児に産婦人科医、小児科医がしっかり関わってもらうためにも医師会、行政の役割が重要になると強調。5歳児健診については、「それぞれの地域の実情に合った形で進められるよう努めていきたい」と述べ、講習会は終了となった。

お知らせ
 『1か月児健康診査マニュアル』はこども家庭庁のホームページにも掲載されていますので、ご活用下さい。
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d4a9b67b-acbd-4e2a-a27a-7e8f2d6106dd/d1e17788/20250107_policies_boshihoken_tsuuchi_2024_113.pdf

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