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令和7年(2025年)9月5日(金) / 南から北から / 日医ニュース

古時計収集の愉(たの)しみ

 私の古時計趣味は、大学生の頃にアメリカの古い懐中時計を購入したことに始まります。女性用の金張りの懐中時計でした。値段は手頃でしたがとても美しく、大変感動したことを覚えています。内蓋(うちぶた)には、最初の持ち主への献辞が彫られており、裕福な女性の結婚の記念に夫から贈られたものだということを示していました。
 その後は古い時計と見れば手当たり次第に買った時期があったのですが、だんだん興味の方向が固まり、今はスリゲルと呼ばれる装飾的な掛時計を中心に集めるようにしています。スリゲルの中でも、日本製の明治時代や大正時代のものが好みです。
 スリゲルは側面と正面にガラスが貼られている大型の掛時計です。一般的な時計よりも高級で装飾的で、実用品というよりも見て楽しむことに重点が置かれています。
 私の好きなものは日本製の古いものです。日本製の古いスリゲルは、西洋の同じような時計の影響を強く受けていますが単純なコピーではありません。日本製のものは華奢で優しい感じがします。慣れるとヨーロッパ製か日本製かは一目で分かります。材料や技法も黒柿や黒漆、拭き漆など日本古来のものが使われており、彫刻などは日本の職人の技術が生かされています。一説には古いスリゲルの装飾は仏壇職人や欄間(らんま)職人が作ったと言われています。
 他には鳩時計も集めています。鳥が動いてさえずる『シンギングバード』と言われるからくりが付いた鳩時計を診察室に掛けています。普通の鳩時計の機能に加え、1時間ごとに鳥が動いてさえずる仕組みが付いています。シャープな彫刻の時計で、鳥の部分には実物の鳥の毛が使用されています。鳥がさえずる機能は患者さんが驚いてしまうので使用していませんが、普通の鳩時計として診察室に掛けて毎日使用しています。
 その他には置時計も集めています。実用品と言うよりも装飾的で変わったものが好きで、可愛くてユニークなものを集めるように心掛けています。
 私の医院には趣味の古時計を置いて、毎日眺めながら診察を行っています。自分の好きなものに囲まれて仕事ができるということは幸せなことだと思っています。古時計収集も開業医としての仕事も、できるだけ長く続けていきたいと思っています。

(一部省略)

滋賀県 滋賀県医師会報 第927号より

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