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令和7年(2025年)10月1日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

医療機関の窮状を踏まえた次期診療報酬改定に向けて

 松本吉郎会長は10月1日の定例記者会見で、最近の医療機関の窮状を踏まえ、令和8年度診療報酬改定について、「今後も物価・賃金等が上昇し続けていくことが予想される中、次期改定では改定2年目についても大胆な対応を求める。まずは次の改定までの2年間をしっかりと想定し対応できる改定を行うことが大切だ」と表明。物価・賃金が大きく上昇した場合に、それに応じて適切に対応する新たな仕組みの導入の検討を明確化する必要性などを強調した。

 冒頭、松本会長は、9月17日に公表した「令和7年 診療所の緊急経営調査」の結果に改めて言及した。1.診療所の直近の経営状況は減収減益で、前年度から大幅に悪化している2.診療科別の利益率は、全ての診療科で悪化している3.地域別の利益率も、医業利益率、経常利益率共に大都市から中都市、小都市、町村まで、いずれの地域においても低下している4.決算期が直近になるほど利益率が低く、経営環境の悪化が顕著に進んでいる5.近いうちに廃業を考える診療所は約14%にも及んでいる―状況を指摘。また、「診療所だけでなく病院についても、特に減益が激しい状況であり、地域医療支援病院のような大きな病院ですら、診療休止に至る例が出てきている」と危機感を示した。

 医療機関を危機的な経営状況に追い込む事態を招いているのは、「令和6年度改定において、令和7年度分の対応が不十分であったのが大きな要因の一つであったと考える」と指摘。一定の考慮がされてきたものの、医療経済実態調査(以下、実調)などのデータを基に議論できる1年目と違って、2年目は推計値で対応しなければならないとし、「特に今般のように物価・賃金等が急激に高騰している中では、結果として全くもって不十分な対応となっている」と訴えた。その上で、令和8年度診療報酬改定の前に期中改定も求められている深刻な状況であり、補助金と診療報酬の両面からの早急な対応が必要との見方を改めて示した。

 次期診療報酬改定については、「今後も物価・賃金等が上昇し続けていくことが予想される中、次期改定では改定2年目についても大胆な対応を求める。まずは次の改定までの2年間をしっかりと想定し、対応できる改定を行うことが大切だ」と主張。今回行われた第25回実調に関しては、「令和5、6年度について回答するものであり、改定年の令和8年からは2年、改定2年目の令和9年からは3年のタイムラグが生じる」と問題点を指摘した上で、「昨今の急激なインフレ下では、議論の進め方や対応を柔軟に変えていく必要が出てきているのではないか」と投げ掛けた。

 さらに、財務省はインフレ下であっても先行きは不確定であることから、改定への対応は極めて抑えた形にしようとするため、特に改定2年目には昨今のインフレ状況で大きな乖離が生じる可能性が高いとし、「(この乖離が)今年実際に生じており、大変大きな問題となっている」と述べた。

 これらの状況を踏まえ、物価・賃金が大きく上昇した場合には、それに応じて適切に対応する新たな仕組みの導入の検討を明確化しておく必要があるとし、2つの方向性を示した。

 具体的には、1.2年目は実調の調査から3年間ずれることから、物価・賃金が大きく上昇した場合には、それに応じて適切に対応する新たな仕組みの導入の検討を明確化する(次の改定までの2年間をしっかりとみた改定水準とする)2.2年目の分は物価・賃金それぞれを、基本診療料を中心に機動的に上乗せする新たな仕組みを導入し明確化する(2年目の分を2年目に確実に上乗せする改定とする)―との方向性を提示した。

 最後に、令和7年度補正予算での対応、令和8年度診療報酬改定のいずれについても、あくまで財源を純粋に上乗せする「真水」によって対応する重要性に言及。これまで10数年間にわたって、「財源の適正化」という名の下で医療費が削られ続けてきた経緯を振り返った上で、「医療機関の経営は余裕などなくギリギリで、適正化等の名目により、医療費のどこかを掘って財源を捻出する方法でこれ以上医療費が削減されれば、経営は成り立たない」と指摘。「税収(公助)」は物価が上がれば増え、「保険料(共助)」は人件費が上がれば料率はそのままでも収入は増える点にも触れた上で、「『経済成長の果実』を活用し、『真水』による思い切った緊急的な対策が必要だ」と強調した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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