閉じる

令和7年(2025年)10月20日(月) / 南から北から / 日医ニュース

サウナで「ととのう」

 昨年腰を痛めゴルフができなくなった。イップスになり、何とかしようと躍起になって練習している最中に腰を痛めた。しばらくブロック注射に通ったが、悪いことばかりでもなかった。
 動けるようになると、腰の療養も兼ね温泉に行くようになった。元来早風呂であったが、温泉にゆっくり入る気持ち良さを知った。時間を見付けては温泉に通った。
 行きつけの温泉にサウナがあった。それまではサウナはただ熱いだけの印象しかなかった。ある時、サウナ後水風呂に入って椅子に座ってぼーっとして気持ち良さそうにしている人を見て興味を抱くようになりサウナに入ってみた。「熱い」。すぐに出たかったが、自分の前に入った人が出るまでは耐えようと決めた。2、3分してもその人は動かない。私は耐えることにした。12分計が半周したところでその人が動いた。私は後を追うようにサウナから出た。
 その人は水風呂の前に座り頭から水をかぶっていた。私も水をかぶった。「冷たい」。水の温度は18度程であった。冷たいに決まっている。しかし、その人はためらわず水風呂に。私もゆっくりと水風呂へ。「凍る」。体感は氷水であった。すぐに上がろうと思ったが我慢した。しばらくすると体が慣れてきた。その人は30秒程浸かると、ザーッと水風呂から上がり体の水を拭き取り、浴室の椅子に座った。私も慌てて上がり椅子へ。
 水風呂でかなり体は冷えたはずなのにしばらくすると体がほんわかと温かくなり軽くなったような、何とも言えない心地良さに包まれた。後で調べたらこの感覚を「サウナトランス」と表現している人がいた。漫画「サ道」の作者タナカカツキさんである。
 この日からサウナに魅せられ、私の「サ道」が始まった。ドラマ「サ道」のシリーズと特番を全て視聴。ドラマの主人公である、なかちゃんさんこと原田泰造さんは根っからのサウナファンで、なかちゃんさん達サウナーを見てサウナの入り方を学んだ。
 まず洗い場で体を清め、お風呂で温まった後サウナヘ。サウナの時間は好き好きであるがおおむね10分程度、その後水風呂に30秒から1分、そしてベンチで10分程休憩する。これがワンセットで、それを3~4回繰り返す。そうすると先程のサウナトランスを経験できるという。
 そうは毎回最高に良い気持ち、なかちゃんの言う「ととのった」までにはなれない。しかし、サウナに通ううちに自分に合ったサウナの入り方が分かるようになり、「ととのった」に近い気分を時々味わうことができるようになってきた。
 サウナを医学的に研究している方も多くいることを知った。サウナで体を熱し、水風呂や外気で冷ますことを「温冷交代浴」と言う。温浴から冷浴による温度差で交感神経を刺激し、その後の休憩での副交感神経亢進によって、自律神経バランス調整がスムーズに行えるようになり、リラックス効果、睡眠の質の向上につながる。また血流改善、血管の伸展性の改善にも効果があるという研究論文もあった。
 難しいことはさて置き、サウナを上手に使えるようになると体も気分も「ととのう」ことができる。無論、サウナは強烈なストレスを体に与えるわけなので、自分の健康状態と相談しながら利用するべきである。
 昨今のサウナブームにわが家も乗っかった。昨年の誕生日祝いに娘達からサウナハットをもらった。日頃は家内と近隣の温浴施設に行き、娘達が帰省した時には一緒にサウナヘ行く。気が付くと体の調子も整い、最近はゴルフもできるようになってきた。
 ただ、残念なことにサウナではイップスは治療できないようであるが、ミスショットしてもイライラすることが減ったのは、もしかするとサウナの効果かも知れない。ラウンドしていても頭の中はゴルフ後のサウナの事を考えているわけだから。

(一部省略)

新潟県 長岡市医師会たより NO.543より

戻る

シェア

ページトップへ

閉じる