

令和7年度都道府県医師会学校保健担当理事連絡協議会が1月30日、WEB会議により開催された。
座長の加藤智栄学校保健委員会委員長(山口県医師会長)の司会で開会。冒頭、ビデオメッセージであいさつを行った松本吉郎会長は、学校における健康診断は学校医が関わる重要なものであり、2年前の本協議会でも議論したことに触れるとともに、「依然として課題がある」として、今回も改めてテーマに取り上げたことを説明。その上で、本協議会が今後の学校における健康診断の質の向上、ひいては子ども達の健康と幸福につながる貴重な機会となることに期待を寄せた。
議事では、以下の四つの項目について説明が行われた。
(1)学校における持続可能な保健管理の在り方に関する検討会
赤星里佳文部科学省総合教育政策局健康教育・食育課学校保健対策専門官が調査検討会においては、「学校における健康診断の今日的意義の再確認」「児童生徒等の健康課題の変化、学校医等の確保が困難にある状況、学校における働き方改革等を踏まえた実施項目・実施方法」「児童生徒等のプライバシーへの配慮等適切な実施方法など、健康診断の実施の在り方」「養護教諭や学校医等、学校における保健管理を担う者の負担軽減」等について議論していることを報告。その他、文科省の令和7年度補正予算で「心の健康」を含めた健康診断・健康観察に係る調査研究事業を実施していること等について説明した。
(2)日本医師会「学校保健委員会」答申の方向性(学校健診WG・メンタルヘルスWG)
まず、弘瀨知江子東京都医師会理事が、学校健診WGで提言した①学校健診の期日②いわゆる重点的健康診断(重点的健診)③不登校者・通信制学校通学者の健診④学校健診を利活用した健康教育⑤学校健診において、養護教諭から医師(学校医)へ希望すること―について詳説した。
①では、「体重や身長測定など、対応可能な健診項目は6月30日までに実施し、その他の項目は年度内にできるだけ速やかに実施すべき」とする一方、適正な健診時期の確保を図る観点から、必要に応じて柔軟に学校医と教育委員会、学校との協議を進め、児童生徒の健康を最優先に考えて対応するよう求めた。
③では、不登校の児童生徒に対する学校健診の望ましい形として、学校健診の実施日に時間をずらしての受診や、学校医の診療所での健診等を挙げるとともに、「その場合には医師会、教育委員会、学校との連携や教職員の負担軽減、健診費用の問題等を事前に検討する必要がある」と指摘した。
④では、「児童生徒自身が自分の健康状態を知ること」「健診結果に基づく個別、あるいは集団への健康支援」「教職員、家庭、学校医、地域などとの連携体制の構築」「ICTを活用した健康データの利活用」が重要になると述べた。
⑤では、事前準備における連携や事後措置における情報共有、学校医と養護教諭を始めとした学校側との相互理解を深めていくこと等が求められるとした。
続いて、小林潤一郎明治学院大学教授が、メンタルヘルスWGで提言した、小学校低学年の発達障害を有する児童への支援や、5歳児健診、特別支援教育とのつながりや支援の連続性を踏まえた小学校でのメンタルヘルス対策等について説明した。
まず、児童生徒のメンタルヘルス対策については、治療から健康増進まで連続的に行うことが効果的であり、「児童生徒のメンタルヘルスを不良から良好な状態へと押し上げる取り組みのフロントラインに立っているのが学校保健と教育」であるとして、教育と医療の連携が不可欠であることを強調した。
更に、学校における児童生徒のメンタルヘルス対策の現状と課題として「メンタル不調の児童生徒にどう気付くか」「メンタル不調の児童生徒への教師の対応」「メンタル不調の児童生徒を支える教育と医療の連携」「学校全体の健康度、安心感を高める取り組み」を挙げ、それぞれ概説。
その上で、発達障害等を有する児童のメンタル不調の予防や、メンタル不調を生じ始めた児童に対応する連携の仕組みについて提案した他、小学校中学年以降、特に思春期の児童生徒に対してメンタルヘルス対策を行う上での課題についても言及した。
(3)機器を用いた側弯(そくわん)症検診の現状
新井貞男日本臨床整形外科学会顧問が、学校健診における側弯症検診の歴史を概説するとともに、日本臨床整形外科学会の運動器検診後受診アンケート調査結果に基づき、側弯症の疑いでの受診勧告が年々増加している他、側弯症と診断される件数が最多となっていること等を紹介した。
また、機器を用いた側弯症検診の導入は16都道府県にとどまってはいるものの、側弯症検診の問題点として脱衣の他、学校医は内科・小児科が主体であり、学校医として側弯症疑いの児童生徒をチェックできているかという不安を持っていることが挙げられている点を踏まえれば、「脱衣問題と学校医の負担軽減を解決する意味でも、機器を用いた側弯症検診が注目される」との考えを示した。
他方、機器を用いた側弯症検診には、検査機器、被験者、操作する側、読影者の問題により、測定誤差が生じる恐れがあることに触れた他、「各機種の特徴を理解してうまく応用する必要がある」と述べるとともに、「最終的には視触診による側弯症検診が重要になる」と指摘した。
(4)鹿児島県の学校医体制
立元千帆鹿児島県医師会常任理事が、鹿児島県の抱える問題として「広大な県域をカバーできない仕組み」「離島における医師の不在」「専門医(眼科・耳鼻科)の欠如」「本土地域での学校医不足の顕在化」「『来年度の学校医不在』相談の急増」があることを紹介。「今後、学校の定期健診において、メンタルヘルスが学校医の診察を要する必須項目に追加されると、学校医不足は更に深刻になる」として懸念を示した。
また、学校医確保の問題に関して、都市部と地方では深刻度に明確な差があるとした他、「学校医をやりたくない医師」が82%に上るとされたアンケート結果を紹介するとともに、学校医の現場では、健診時間の圧倒的不足や継続的な健康管理の困難化、専門性の不一致等の問題が起きていると指摘。その背景には「報酬の地域差・水準の低さ」「保護者対応・配慮の負担増」「本業との両立困難」「専門医の後継者不足」「『やりがい』の低下」が挙げられるとした。
更に、学校健診医不足の解決策として①成長期や思春期の節目に健診を行う「重点的健診」を導入し、健診項目を削減する②行政との協働により、集約健診センターで複数校の健診を実施する③業務量削減と報酬維持により、学校医報酬を相対的に値上げする―ことを提案するとともに、「学校健診は市町村の教育委員会が管轄しているため、各郡市医師会の対応が求められる」と述べた。
その後、渡辺弘司常任理事から、事前アンケートの結果の概略について報告が行われた後、活発な質疑応答が行われた。
最後に、茂松茂人副会長が、子ども達を取り巻く環境は大きく変化し、心身に与える影響も変わってきたとして、「健診でどのようにアプローチするか考えなければならない」と指摘するとともに、健診を通じて子ども達のヘルスリテラシーを高めることも重要だと強調。更に、「全国一律ではなく、地域の実情に応じて健診項目を考える必要がある他、いかにして少ない人材で対応するかも検討していくべき」と総括し、閉会となった。



