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令和8年(2026年)3月20日(金) / 南から北から / 日医ニュース

老人の筋トレ

 先日ある老健施設に行った時、こんなことがありました。椅子に腰掛けた時、キャスター付きの椅子だったためか、椅子が滑り、体のバランスを崩しました。後ろにのけ反ったので頭を打つなと思いました。そばにいた女性職員がキャーッと声を出しました。その直後、私の体は起き上がりこぼしのように元の姿勢に戻り、転倒を免れました。「すごい!」と歓声が上がりました。拍手までは起きませんでした。何が起こったのか分かりませんでしたが、つらつら考えると、筋トレの効果ではないかと思い至りました。
 私は3年半前から週に2回トレーニングジムに通い、筋トレを行っています。その成果が出たのではと思いました。とっさの反射神経と筋力が体を持ち上げてくれたのではと思いました。後日ジムの先生にその話をしたら「そうなんですよ」と言われました。
 老人の筋トレは若者の筋トレとは違います。目的が違います。若者はマッチョな体づくりを目指しますが、老人は転倒防止が第一の目的です。ジムの看板には「転ばぬ先の筋肉」と書いてあります。今更、隆々とした筋肉は必要ありません。転ばないようにさえなればいいのです。老人の転倒の大きな特徴に顔を擦りむくことがあります。若者のように反射的に顔を守ることができないのです。サッカーの中田英寿は転ばないことで有名でした。試合中に激しく攻撃されても、転ばずに耐え抜き戦い続けました。ロッカールームで同僚が中田の体を見て驚嘆したそうです。鍛えられた筋肉には、そのようなことができるのだと思ったものでした。
 3年以上ジムに通っても、私の体には大きな変化はありません。両前腕が均等に少し太くなったぐらいで、美しい筋肉ははるかかなたです。腹も立派に出ています。トレーニングの最中に腕立て伏せをやることがあります。いつも10回やるよう指示されますが、先日速いテンポで20回やってみせました。トレーニングの先生が「おうパワフル!」と喜びました。トレーニングマシーンには錘(おもり)がついています。力がついてきたら錘を増すことによりトレーニング効果を上げるようになっています。私は10キロから15キロの重さでやっていましたが、最近先生が20キロに上げたところ、難なくできました。3年程経ったが、あまり代わり映えはしないなあと思っていましたが、実は徐々に筋力がついていたようです。
 文頭に挙げたエピソードは、それまで見えなかった効果が表に出てきたものと思われ、感慨新たというところです。今後患者さんや周辺の高齢者に自信を持ってアドバイスできそうです。「筋肉があなたを守る」と。

宮城県 石巻市医師会報 NO.333より

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