座長の新田理事長と坂本常任理事
座長の新田理事長と坂本常任理事
| 「第3回在宅医療シンポジウム~地域のかかりつけ医が面で支える在宅医療~」が3月1日、日本医師会館大講堂で現地とWEBのハイブリッド方式により開催された。 当日は、医療的ケア児・者とその家族が、地域の中で望む暮らしができる環境を整備するためには、地域全体でどのような包括的な支援を行うべきかといった視点で、さまざまな立場の演者から講演が行われた。 |
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本シンポジウムは在宅医療を実践する、さまざまな立場からの取り組みを取り上げることによって、今後の在宅医療の提供体制やあるべき姿などについて考えることを目的として、令和6年から開催しているものである。
坂本泰三常任理事の司会で開会。冒頭あいさつした松本吉郎会長はわが国の現状について、(1)今後、医療と介護の複合的なニーズを有する85歳以上の高齢者の増加が見込まれる他、小児や医療的ケア児などに対する在宅医療の需要も高まっている、(2)在宅医療は介護や福祉との連携なくして行うことはできず、多職種との連携・協力が不可欠である―ことなどに言及。
日本医師会は引き続き、関係者の協力の下、在宅医療の充実に向けて取り組んでいく考えを示すとともに、今回のシンポジウムが、かかりつけ医や在宅医療、介護、福祉に携わる多職種の人達にとって、実りある会となることに期待を寄せた。
第1部
座長:新田國夫医療法人社団つくし会理事長、坂本常任理事
第1部では、西嶋康浩厚生労働省医政局地域医療計画課長が「新たな地域医療構想における在宅医療及び医療・介護連携のあり方」と題して講演した。
西嶋課長は、2040年に掛けて、医療・介護の複合ニーズを有する85歳以上の高齢者の増加に伴い、救急搬送や在宅医療の需要の増加が見込まれることから、地域完結型の医療・介護の連携体制の構築が求められると指摘。一方で、在宅療養を担う在宅療養支援診療所や在宅療養支援病院のどちらもない市町村が、人口の少ない地域に多くあることが課題となっており、これらの施設を制度上で支えていく考えが新たな地域医療構想の中にも盛り込まれているとした。
また、在宅医療の圏域については、二次医療圏よりも市町村あるいは郡市区医師会単位で設定することや、高齢者が減る地域においても在宅医療を提供するために、効率的に行う観点からICT等の活用を提案。その上で、引き続き、各地域の実情に応じた体制構築に向けた協力を求めた。
座長の新田理事長は在宅医療も含め、医療と介護を一体として提供する必要があるとし、「地域の実情に応じて医療者が協力して関わることが重要である」と述べた。
第2部
座長:前田浩利医療法人財団はるたか会理事長、坂本常任理事
第2部シンポジウム「医療的ケア児・者と家族が望む暮らしを支える地域包括ケア」では、前田理事長が「医療的ケア児支援法から医療的ケア児・者支援法へ」と題して基調講演を行った。
前田理事長は、「医療的ケア児は『いのちは平等』という考えの下、生まれてきた子どもをできる限り救命する日本の小児医療システムが生み出したとも言え、その子ども達を支えることは、医療と介護、医療と福祉の連携という部分で非常に難しい」と強調。
また、医療的ケア児支援法成立の経緯にも触れた上で、本法により医療的ケア児への支援が行われるようになったが、医療的ケア児が大人になると、(1)親の離婚、病気、ケガの増加、(2)医療的ケア者本人が働くことができない、(3)社会的養護が必要になった医療的ケア児の行き場がない―等の課題があることから、「医療的ケア児・者支援法」として、支援対象の拡大やさまざまな支援体制の構築が盛り込まれた改正法案を国会に提出する準備が進められていることを報告。改正法案が成立すれば、地域が大きく変わり、日本の在宅医療が前に進むと、期待感を示した。
続いて二つのシンポジウムが行われた。
シンポジウム①「医療的ケア児から医療的ケア者への支援へ」
冨田直東京都立小児総合医療センター在宅診療科部長は「医療的ケア児支援から成人期への移行期支援の課題」と題して、成人移行の医療面における最大の課題は急性期の入院先の確保が挙げられると指摘。問題解決には、小児・成人医療双方に見合う診療報酬上の評価に加えて、「移行に向けた早期からの準備」「移行開始後も成人と小児医療機関の連携を継続する」「ACPについて日頃から本人や親と話をして成人医療に引き継ぐ」などが求められるとした。
事前収録での参加となった、是松聖悟埼玉医科大学総合医療センター小児科教授は「医療的ケア児支援から医療的ケア児・者支援へ~医療的ケア者の数と支援の現状~」と題して、自身が研究代表者として行った厚生労働科学研究の結果を基に、(1)わが国には、小児期に発症した疾患により医療的ケア者となった者が約2万人、成人期発症の疾患により医療的ケア者になった者(介護保険対象の65歳以上を除く)で、前者と同等の支援を必要としている者も約2万人存在する、(2)医療的ケア者の多くは自宅で親が介護を行い、小児期発症疾患では緊急入院先も小児科のままとする者が多い―ことが明らかになったと報告。さまざまな問題解決のためにも、医療的ケア児支援法の改正に向けて、医療、福祉施設などの整備が求められるとした。
シンポジウム②「医療的ケア児・者を支える在宅医療」
一ノ瀬英史医療法人いちのせファミリークリニック院長は「プライマリ・ケア医が支える医療的ケア児・者の地域包括ケア」と題して、プライマリ・ケア医が医療的ケア児・者へ関わるに当たって求められる役割として、「成人移行支援」「自立・自律支援」「患者家族が抱える諸問題の解決」などが挙げられると指摘。
また、小児期、思春期、成人期・高齢期のステージごとに地域包括ケアシステムを張り巡らせ、シームレスに移行させることが重要になるとの考えを示した。
小畑正孝医療法人社団ときわ理事長は「在宅専門医が支える医療的ケア児・者の地域包括ケア」と題し、小児在宅医療の課題として、「医療的ケア児・者が増加しているにもかかわらず、携わる医療従事者が少ない」「AYA世代、小児のがんに対応できる在宅医が少ない」ことなどが挙げられると説明。自身が小児在宅医療を行う際には、多職種のチームで対応していることやICTを活用していることなどを紹介し、「小児科以外の診療科でもできることはあるので、小児在宅医療に一歩を踏み出して欲しい」と呼び掛けた。
網塚貴介青森県立中央病院成育科部長は「地域で支える医療的ケア児・者の地域包括ケア」と題して、「出向く」「つなぐ」「創る(つくる)」をモットーとして支援の充実を図っている青森県小児在宅支援センターの事業内容を概説。成人医療への移行について「家族が移行を望んでいないことも多い」「その一方で移行しないことで生じる困難さを知らないことも多い」といった問題もあることを紹介した他、問題を解決するためには、成人期移行前の下準備に加えて、特に訪問診療のリソースが乏しい地域においては誰がそのかじ取りを担うのか、主体を明確化する必要があるとの考えを示した。
また、各シンポジウムの講演後には参加者から、東京における在宅ケア者の緊急時の受け入れ状況や小児在宅医療に関わる魅力をどのように発信すれば良いかなどについて質問が出され、演者から回答が行われた。
なお、本シンポジウムの動画は後日、日本医師会公式YouTubeチャンネルに掲載する予定となっている。



