令和8年(2026年)4月20日(月) / 日医ニュース
国民の視点に立ち、医療・介護に関する意見をさまざまな手段を通じて主張していく考えを示す 松本会長
第161回日本医師会臨時代議員会
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| 第161回日本医師会臨時代議員会が3月29日、日本医師会館大講堂で開催された。 あいさつした松本吉郎会長は「令和7年度補正予算・令和8年度診療報酬改定」等に対する日本医師会のこれまでの対応や見解を説明。引き続き、角田徹副会長より「令和8年度日本医師会事業計画及び予算の件」に関する報告をした後、代議員からの19件の質問に対して、担当役員からそれぞれ答弁を行った(答弁の概要は別記事参照参照)。 その他、当日は澤芳樹第32回日本医学会総会会頭から、総会の概要説明があり、事前登録などに対する協力が求められた。 |
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令和7年度補正予算・令和8年度診療報酬改定
令和7年度補正予算では、医療・介護合わせて約1・4兆円、厚生労働省の医療分の予算だけで1兆368億円、更に文部科学省の予算や内閣府の重点支援地方交付金も措置されるなど、大規模な補正となりました。
日本医師会は、補正予算は診療報酬改定財源の先取りではなく、補正予算を踏まえた更なる診療報酬改定への対応が必要であり、令和8年度診療報酬改定に向けて、インフレ下における賃金・物価上昇への対応として、純粋に財源を上乗せする対応が必要だと強く主張してまいりました。その結果、令和8年度診療報酬改定率は本体プラス3・09%となりました。通常の改定とは別枠で賃上げ、物価対応のための財源を一定程度確保することができ、インフレ下での今後の「道しるべ」となる極めて重要な改定となりました。
財務省の長年にわたる医療費適正化と称した医療費削減によって疲弊した医療界、医療機関は、とにかく存続することだけで精一杯だったとも言えます。そのような経営環境では「国民の生命と健康を守る」という、私どもにとって最も大切な使命を果たすことすらままなりません。日本医師会は、医療界が「大量出血」の状態にあるという表現を使用してまいりました。
今回、一息つける結果になったものの、まだ補正予算ですら行きわたっておらず、改定後の診療報酬も6月からの施行となります。夏頃にならないとどのぐらいの効果があるのか検証できませんが、補正予算でまずは「止血」し、診療報酬改定では少し前を向く余裕が生まれつつあるのではないかと思います。今後、改定で設けられた点数等をしっかりと算定できるよう、日本医師会といたしましても支援してまいります。
これらは都道府県を始め、地域医師会が一体となって取り組んだ結果であり、政府・与党始め、多くの関係者の皆様に医療機関等の厳しい経営実態をご理解いただけたものと実感し、大変感謝しております。
医療法等の改正
医療法等の一部を改正する法律が令和7年12月12日に公布され、本年4月にはその一部が施行されます。
そのうち「新たな地域医療構想」については、来たる4月15日に都道府県医師会担当理事連絡協議会を開催する予定にしております。
医師偏在対策では、外来医師過多区域に関する仕組みができますが、該当する都道府県医師会並びに郡市区医師会への説明会も先月開催いたしました。医師少数地域への医師偏在対策等についても、適宜、情報提供をさせていただきますので、地域で問題が生ずるようなことがあれば、ご報告いただきますようお願い申し上げます。
もちろん、良質かつ適切な医療提供体制の構築には、改正法だけで考えるべきではなく、医師の広域マッチングなどの新たな事業や、その財政支援策が重要であり、日本医師会といたしましても、各地の実情に応じた取り組みがなされるよう、引き続き制度の運用に関わってまいります。
健康保険法等の一部を改正する法律案
健康保険法等の一部を改正する法律案が、3月13日に閣議決定されました。今後、国会で順次審議されます。
主な内容としては、(1)OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養等について、一部保険外療養を創設、(2)出産に伴う妊婦の経済的負担を軽減するため、出産の標準的な費用に係る給付体系の見直し等、(3)国民健康保険組合に対する国庫補助について、現行の補助率の下限よりも低い補助率を例外的に適用、(4)妊婦健診に伴う妊婦の経済的負担を軽減するため、妊婦健診(望ましい基準内)の実施に係る標準額を定める等の環境の整備、(5)高額療養費の支給要件等を定める際には、特に長期療養者の家計への影響が適切に考慮されるよう、法律上明確化―などの改正が議論されますが、特に3点について触れさせていただきます。
(1)OTC医薬品との代替性が特に高い薬剤を用いた療養等について一部保険外療養を創設
いわゆるOTC類似薬については、日本医師会の強い反対により保険適用除外は阻止できたものの、保険適用内とはいえ、一定の患者自己負担が追加で発生することは間違いありません。
財務省等を中心に「大きなリスクは共助中心、小さなリスクは自助中心」という「民間保険の考え方」も一部に見受けられますが、医療は「現金給付」ではなく「現物給付」であり、公的皆保険制度として必要かつ適切な医療は保険診療により確保すべきと考えております。
子どもやがん患者、難病患者など配慮が必要な慢性疾患を抱えている方、低所得者、入院患者、医師が対象医薬品の長期使用等が医療上必要と考える方等の対応について、今後検討が行われることになりますが、こうした方々への配慮は日本医師会が繰り返し要望していたものです。在宅医療にも影響が大きいと考えており、引き続き主張してまいります。
(2)出産に伴う妊婦の経済的負担を軽減するため、出産の標準的な費用に係る給付体系の見直し等
一部には「出産の保険化」という誤解も生じておりますが、正しくは「標準的な出産費用の自己負担無償化」とともに「安全で質の高い周産期医療提供体制の確保の両立」を目的に、妊娠・出産に対する「支援の強化」を行うものです。この点はぜひ、ご理解賜りたいと思います。
議論の過程では、赤字の産科医療機関が増加し、地域医療から撤退するようなことがあっては、そもそも出産できる環境自体が消失してしまうことを、調査結果等も踏まえて主張し続けてきました。
その結果、産科医療機関の窮状は理解され、検討会の取りまとめでは、「標準的な出産費用の自己負担無償化」とともに「安全で質の高い周産期医療提供体制の確保の両立」と記載され、妊産婦の経済的支援のみならず、産科医療機関の存続を明確化させました。更にその後も議論を重ねてきたところです。
そして、2月25日に高市早苗内閣総理大臣と会談を行い、第二次高市内閣発足への祝意をお伝えした際に、出産費用の無償化に当たって国の対応を要請いたしました。
国が「安全で質の高い周産期医療提供体制の確保の両立」を明確にした以上、具体的な給付水準が今後の大変重要な課題となります。法改正を踏まえ、秋以降、本格的に議論がなされる見込みです。
なお、当分の間、現行の出産育児一時金の仕組みも併存し、施設単位で選択が可能となります。一斉に新制度への移行を求めるのではなく、可能な施設から新制度に移行していくこととされております。
(3)国民健康保険組合に対する国庫補助の見直し
国民健康保険組合に対する国庫補助の見直しにつきましては、本日、代表質問もいただいておりますが、3月24日に上野賢一郎厚労大臣に要望書を手交いたしました(別記事参照)。厚労省社会保障審議会医療保険部会においては、日本医師会として強く反対してまいりましたが、今後もしっかりと主張してまいります。
組織強化と会費の有効活用
組織強化の取り組みを継続してきた結果、全体の会員数としては過去最高を記録しております。一方で、高齢化等により、A1会員の割合は減少傾向です。会員の先生方からの貴重な会費の有効活用については、不断の見直しを続けているところです。
こうした背景や昨今のデジタル化の進展を踏まえ、会費の有効活用について、より効率的な、あるいは効果的な取り組みを進めてまいりたいと考えております。
1点目は、『日医雑誌』『日医ニュース』の電子版への更なる移行の推進です。これは、主として会員の利便性向上等に資するための取り組みとして、過去に何度か意向調査を行いながら切り替えを少しずつ進めてきたところです。本日の資料にもありますとおり、その印刷・発送には依然として大きな費用が掛かっている状況です。
MAMISの開始により、会員にご登録いただいたメールアドレスが増加していることから、プッシュ型も視野に入れてメールアドレスの有効活用を図ってまいります。
私自身も大量の資料をかばんに詰めて出張するなど、長年親しんだ紙の資料やFAX等への愛着は当然ありますが、毎週の理事会や厚労省の審議会等を始め、タブレットやパソコン等の画面で資料を見ることが非常に増えてきました。もちろん、紙媒体を希望する会員への送付は継続いたしますが、電子版への移行を更に進めることで、結果として印刷・発送の費用を新たな医師会活動への取り組みに活用できるようになると思います。ぜひ、ご理解・ご協力の程、よろしくお願いいたします。
2点目は、会内会議、各種会内委員会等におけるWEB会議の活用です。現在も委員会は原則全てハイブリッド形式で行っております。対面の重要性を否定するものではありませんが、WEB会議の活用を更に推し進めたいと考えております。今後、委員会委員の先生方にそうした話をさせていただく場面もあるかもしれませんが、日本医師会としてそうした方針であることを、都道府県医師会におかれましてもご共有いただきますよう、よろしくお願いいたします。
かかりつけ医機能報告制度
令和7年4月より「かかりつけ医機能報告制度」が開始され、本年1月より初回報告が行われております。本制度は原則ほぼ全ての医療機関が報告対象であり、日本医師会は、地域における面としてのかかりつけ医機能を発揮するためにも、対象医療機関にはしっかりと報告していただくことが極めて重要だと考えております。
一方、本制度に対しましては、「G―MISの操作が分かりにくい」「内容が煩雑である」などのご指摘を多く受けているところです。1号機能は「日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」であり、ほぼ全ての医療機関が有している機能となっております。しかし、実際は1号機能をもっているにもかかわらず、誤って「無し」と報告されている例も見受けられます。
誤った報告は、当該医療機関、地域医療にとっても非常に問題が大きく、今後更に、実態に合わないデータを基に「かかりつけ医機能」について議論等が行われる可能性もあり、そうした事態は避けなければなりません。
3月12日には、約400もの都道府県・郡市区医師会にご参加いただきまして、「かかりつけ医機能報告制度説明会」をWEBで開催し、こうした注意点や具体的な報告手順等について説明を行いました。
3月末が報告期限となりますが、引き続き4月末までにはご報告や修正報告をしていただきますよう、都道府県・郡市区医師会においてもご協力をお願いいたします。
おわりに
日本医師会では昨年11月にシンポジウム「社会保障のアップデート」を開催するなど、国民に社会保障の重要性を理解していただくよう啓発をしておりますが、シンポジウムの講師を務めていただいた清家篤先生が、政府の社会保障国民会議の有識者会議座長となられました。
社会保障国民会議ではまず、給付付き税額控除等について検討されると認識しております。将来の方向性を意識しつつ、目の前に山積している重要課題について、足元の課題を一つ一つ丁寧に根気よく解決してこそ、将来へとつながり、展望が更に開けてまいるものと考えております。
引き続き社会保障を取り巻く環境は更に厳しくなるものと予想されますが、日本医師会は医療・介護について、国民の視点に立ち、記者会見等も含め、さまざまな手段で意見を主張してまいります。
結びに当たりまして、今後とも国民の生命と健康を守るべく、本会執行部に対しまして皆様からの絶大なるご支援を賜りますよう切にお願い申し上げます。
以上、私からのあいさつとさせていただきます。



