若いころのおふくろは、苦労の連続だった。サモアからハワイに移住してきたおふくろは、英語も十分に話せず、そのうえ、文字どおりの“貧乏人の子だくさん(男5人、女5人)”。トイレもシャワーもない、雨もりのする小さなオンボロ家の一室で、家族が折り重なるように寝起きしていた。食事はもちろん、買物や映画も民族大移動のように、家族全員がゾロゾロと一緒だった。父親が仕事で留守がちだったので、いつも、おふくろを中心に、家族がひとつになって行動していた。おかげで家族の絆は強くなり、今でも、それは変わらない。
貧しい生活のなか、おふくろは子どもたちのために骨身をおしまず働いてくれた。朝早くから夜遅くまで働きづめで、今考えても、よく体をこわさなかったと思う。短気で厳しいけれど、陽気で太っ腹な肝っ玉かあさん、そんなおふくろの働く姿は、まるで神様のように見えた。やがて、「いつか楽にしてあげたい」という夢をもつようになった。(談)
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