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平成27年(2015年)12月5日(土) / 日医ニュース

動物由来の感染症に医療と獣医療が一体となった取り組みを

動物由来の感染症に医療と獣医療が一体となった取り組みを

動物由来の感染症に医療と獣医療が一体となった取り組みを

 日医と日本獣医師会による「越境性感染症の現状と課題」をテーマとした連携シンポジウムが11月6日、日医会館大講堂で開催された。
 冒頭、横倉義武会長はあいさつ(小森貴常任理事代読)で、グローバル化が進む中、感染症の世界規模での拡散が懸念されていることから、今回のテーマに越境性感染症を掲げたことを説明。これを機に医師と獣医師とが共に知を結集し、更なる感染症対策の推進につながることを祈念しているとした。
 次に、藏内勇夫日本獣医師会長があいさつに立ち、日医と日本獣医師会の協定に伴い、26の都道府県においても医師会と獣医師会の連携体制が構築されたことを紹介するとともに、「47都道府県の全域に、人と動物の健康を守る組織を立ち上げたい」と述べた。
 続いて、森川茂国立感染症研究所獣医科学部長と丸山総一日本大学生物資源科学部教授を座長とし、4題の講演が行われた。

国際的に脅威となる感染症対策について

 まず、基調講演を行った小森常任理事は、グローバル化の時代にあって、人の移動に伴う越境性感染症の問題が世界的な課題となっていることを強調。最近の感染症流行例としてエボラ出血熱やMERSを取り上げ、日医としては、啓発ポスターを作成した他、本年3月には、「BSL4施設の早期稼働を求める声明」を公表し、流行に備えた危機管理体制の整備を訴えたことを説明した。
 また、政府においても9月に「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」が設置され、各国と協調して感染症に対応するとともに、途上国での保健システム構築に向けた支援に取り組むことが謳(うた)われたことを紹介。今後も日医と日本獣医師会が学術的に協調、連携し体制を整備していきたいとした。

中東呼吸器症候群(MERS)の現状と対策

 松山州徳国立感染症研究所ウイルス第三部第四室長は、MERSコロナウイルスが本年5月から7月にかけて韓国で感染拡大した経緯を解説。感染が次第に拡大していったような印象を受けるが、実際は短期間に病院内で起こった限定的な感染であり、(1)医師の知識不足による感染者発見の遅れ、(2)患者によるドクターショッピングの常態化、(3)多くの家族や知り合いが集中治療室にまでお見舞いに来る韓国の習慣─などがその背景にあるとした。
 MERSについては、重症化した症例の多くは糖尿病などを患っているとした他、感染者の早期発見と適切な隔離により感染拡大を防止するとともに、旅行者に中東とアフリカのラクダの危険性を周知することが重要になるとした。

獣医学領域からのSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の解明

 前田健山口大学共同獣医学部獣医微生物学教室教授は、SFTSについて、まだ国内での発生報告がなかった2012年に山口県で発熱、嘔吐(おうと)、全身倦怠感や黒色便などの症状を呈した患者が原因不明で死亡し、海外渡航歴がなかったことから、患者が飼っていた猫からの感染が疑われ、原因究明のためウイルス分離をした結果、2011年に中国で報告されたSFTSであったことが判明し、ダニが媒介したウイルスであることが分かったと報告。
 その後の研究によって日本分離株は中国分離株とは遺伝的に異なっていることから、同ウイルスは以前から国内に侵入しており、西日本にのみ患者が発生していることや、多くの動物が感染していることが明らかになったと紹介し、「野生動物だけでなく、飼育動物にも注意が必要だ」として注意を促した。

西アフリ力におけるエボラ出血熱と日本におけるSFTSの流行:求められる対策

 西條政幸国立感染症研究所ウイルス第一部部長は、エボラウイルスについて、ヒトからヒトへの伝播性は低いものの、患者の埋葬の際に感染が広がってしまうことが指摘されており、内戦などの影響で貧しい南アフリカ地域においては、教育が不十分で、感染症対策への対応が難しいことが流行した背景にあるとした上で、動物が媒介するエボラウイルスがなくなることはないが、知識を持って対応すればマネジメントが可能だと強調した。
 その上で、ダニ媒介性ウイルス感染症であるSFTSなど、ウイルス感染症の研究には病原体を封じ込める機能を有する高度安全試験検査施設「BSL4」での研究等により、対応策が見つかれば、日本のみならず国際的な貢献にもつながるとして、積極的な対策が望まれるとした。

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