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平成27年(2015年)9月20日(日) / 日医ニュース

日医・日本医学会合同で『HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き』を作成

横倉義武会長は8月19日、高久史麿日本医学会長、小森貴常任理事と共に記者会見を行い、日医と日本医学会が合同で『HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き』を作成したこと

 横倉会長は、『手引き』が医療機関で広く活用され、患者の適切な治療へとつながることに期待感を示した。

 日医・日本医学会合同で/『HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き』を作成(写真) 今回の『手引き』は、(1)HPVワクチン接種後に症状が生じた患者への対応、(2)協力医療機関等との連携、(3)日常生活の支援と、学校(職場)、家庭との連携─で構成。参考資料として、「診療・相談体制」「関係法令、通知、制度等」「関連ホームページ」が添付されている。

 『手引き』では、「ワクチン接種直後から、あるいは遅れて接種部位や接種部位と異なる部位の持続的な痛み、倦怠(けんたい)感、運動障害、記憶など認知機能の異常、その他の体調の変化等を訴える患者が受診した場合は、HPVワクチン接種との関連を疑って症状を訴える患者がいることを念頭に置いて診療する」等、基本的な診療姿勢を明記。

 更に、鑑別診断においては、患者の精神的な異常状態から発症する心因性の痛みも鑑別する必要があるが、「心因」という言葉が、器質的な病態の存在を全否定し、詐病的あるいは恣意(しい)的であると誤解されやすいことから、患者・家族も認める明らかな精神的問題がある特殊な場合を除き、患者に対して、「心因」という表現は用いないとしている。

 横倉会長は、記者会見で、まず、「HPVワクチンについては、ワクチン接種後に広範な慢性の疼痛、あるいは運動障害などの多様な症状が見られたため、その取り扱いを厚生労働省の予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において審議し、同年6月に積極的勧奨の差し控えが実施され、現在に至っている」とこれまでの経緯を説明。

 また、この間、さまざまな情報がメディア等で取り上げられる中、昨年8月に当時の田村憲久厚労大臣が、子宮頸がんワクチンに係る新たな対策として、(1)広範な慢性の疼痛や運動障害を中心とする多様な症状を呈する患者に対する医療体制の整備(2)ワクチン接種後の症状に係る報告制度の強化(3)予防接種法上副反応報告として提出された症例の追跡調査の実施─を表明したことを受け、日医としてもこれらの施策に協力してきたと語った。

 日医・日本医学会合同で/『HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き』を作成(写真) 更に、昨年12月10日に、日本医学会(以下、医学会)との合同シンポジウム「子宮頸がんワクチンについて考える」を開催し、さまざまな立場からの意見を拝聴するとともに、科学的エビデンスに基づく議論の必要性を訴えたことや、同シンポジウム終了後の記者会見において、高久医学会長と共に、現にHPVワクチン接種後にさまざまな症状で苦しんでいる方の診療に対する支援が求められており、日医、医学会が協力して診療ガイドラインを作成するなどの対応も必要との認識を示したことに言及。そうした経緯から、日医と医学会は、本年2月に編集会議を立ち上げ、ようやく今回の『HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き』が完成したことを報告するとともに、「この『手引き』が広く全国各地域の医療機関で活用され、更に患者さんの適切な治療に結び付くことを切に望む」と述べた。

 高久医学会長は、「さまざまな症状をもつ患者さんに対する臨床現場での適切な対応を促すという視点で、いろいろなお考えの専門家のご意見をこのような形で取りまとめた」と説明した。

 続いて、小森常任理事が、『手引き』の内容等について、詳細に解説。「今回の『手引き』の目的は、病態像や病因を明らかにすることではなく、あくまでもワクチン接種後の症状で悩む患者を支援することにある」と強調した。

 なお、『手引き』は、日医のホームページからもダウンロードが可能となっている他、日医Libにも掲載されている。

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