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平成28年(2016年)2月5日(金) / 日医ニュース

お金がないので、入院をキャンセルさせて下さい

 受付に患者さんから申し出があった。担当医の私にその連絡が届いた時には本人は既に帰宅。一家の大黒柱が椎間板ヘルニアによる激痛で、歩行どころか起立も困難となり、家族の弁では肉団子のようにほぼ寝たきりとなっていた。この病気は保存療法で手術を回避できる例も多いが、この方は麻薬の内服や神経ブロックでも効果がなく、手術のために入院する予定であった。
 お金が理由のキャンセルと知り、切なくなった。同時に、痛む足腰を引きずりながら、わざわざ来院された律義さに感心し、これは何とかしなければと、医事課に直ちに対応するように指示した。高額療養費制度があること、それでも無理なら医療費は分割でも延納でもよい等、ケースワーカーから本人に電話で伝えた。
 翌日入院され、計画どおりの手術を行うことができた。患者さんは激痛から解放され、抜糸を待たずにスタスタ歩いて退院された。こちらも嬉(うれ)しかった。
 入院や手術でなくとも、お金が理由で適切な医療が提供できない場面がジワリと増えている気がする。「薬は1週間分だけにして欲しい」「MRIもCTも結構です」などである。社会情勢に鑑みると、我々が知るのは氷山の一角であろう。どこにも受診せず、家でひたすら我慢している人も少なくないと思われる。
 必要な医療は金の心配をせずに受けられる社会を遠ざけてはならないと強く感じている。

(骨コツ)

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