横倉義武会長は6月8日の定例記者会見で、今後の日医の医療分野のIT化における取り組みの指針となる「日医IT化宣言2016」を公表、同宣言を基に、従来以上に力を入れて、医療分野のIT化に取り組んでいく考えを示した。 |
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日医では、平成13年11月、当時の坪井執行部が「日医IT化宣言」を公表している。
同宣言は、日医が医療の専門家集団として、自ら先頭に立って医療現場のIT化を推進するため、土台となるネットワークづくりのイニシアチブを取る決意を高らかに宣言したものであったが、その中心となる具体策が、各医療現場に標準化されたオンライン診療レセプトシステムを導入し、互換性のある医療情報をやり取りできるようにする計画、すなわち「ORCAプロジェクト」の推進であった。
その後、日医では、同プロジェクトの推進に努め、その成果である「日医標準レセプトソフト」(通称ORCA)は、現在では1万5000を超える医療機関で運用されるようになり、昨年には更なる発展のため、新たに「日本医師会ORCA管理機構株式会社」を設立し、業務委託を開始している。
その他、日医では日医認証局を運営する会内の付属機関として設置した「日本医師会電子認証センター」の運営にも力を入れるとともに、今後のITを使った地域医療連携で必須となる、医師の国家資格を電子の世界で証明する「医師資格証」の普及に努め、総申請数は5月現在で5000件を超えている。
このように、日医ではさまざまな取り組みを行ってきたが、医療分野のIT化を取り巻く状況は従来以上に急激な変化を見せ始めている。
その流れに対応するため、横倉会長は、「平成26・27年度医療IT委員会」(川出靖彦委員長/岐阜県医師会副会長)に対して、「地域医療連携推進のための新たな日医IT化宣言と医療・介護における多職種連携のあり方」について諮問。同委員会では2年間にわたり鋭意検討を行い、5月19日に川出委員長から横倉会長に「日医IT化宣言2016(案)」を含めた答申を提出した。
日医IT化宣言2016
・日本医師会は、安全なネットワークを構築するとともに、個人のプライバシーを守ります。 ・日本医師会は、医療の質の向上と安全の確保をITで支えます。 ・日本医師会は、国民皆保険をITで支えます。 ・日本医師会は、地域医療連携・多職種連携をITで支えます。 ・日本医師会は、電子化された医療情報を電子認証技術で守ります。 2016年6月 公益社団法人 日本医師会
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今回、公表した宣言は、この宣言案を基に、平成28年度第6回常任理事会(5月31日開催)において協議を行い、一部文言の変更を行うことで了承されたものである。
宣言は、5つの項目(別掲上)からなっており、各項目の内容は別掲下のようなものを想定している。
会見で宣言を公表した横倉会長は、「新たな宣言は、従来の『ORCAプロジェクト』の推進のみの内容にとどまることなく、医療分野のIT政策全体を包括する内容になっている」と説明するとともに、同宣言を基に、従来以上に力を入れて、医療分野のIT化に取り組んでいく考えを示した。
なお、当日の会見では、石川広己常任理事から、医療IT委員会が取りまとめた答申の内容についても説明が行われた。
その中で、同常任理事は、医介連携にSNS(Social Network Service)を利用する場合について、「LINEなどの公開型のパブリックSNSではなく、栃木県が採用しているような非公開型かつ医介連携専用のプライベートSNSを利用すること」「個人所有の機器を持ち込んで業務に用いる、いわゆるBYOD(Bring Your Own Device)はすべきではないこと」などの注意点を答申から引用して説明するなど、医介連携にセキュリティが確保されていないシステムや通信経路、端末を安易に利用することに対して警鐘を鳴らした。
また、宣言の中でも触れられている「医療等分野専用ネットワークの構築」についても言及。「このネットワークが実現すれば、高いセキュリティを確保したネットワークが実現し、医療機関においても安心して電子紹介状などのやり取りができる環境整備が可能となる」とした上で、「現在活用されているネットワークのインフラも最大限活用し、その実現に向けて取り組んでいきたい」と述べた。
【各項目の内容】
○日本医師会は、安全なネットワークを構築するとともに、個人のプライバシーを守ります。・マイナンバー制度のインフラを活用した医療等ID制度を確立させる。 ・医療等IDを活用して、国民・患者が安心できる地域医療連携を実現する。 ・医療機関が安心・安全・安価に地域医療連携に活用できる医療専用ネットワークの構築を目指す。 ○日本医師会は、医療の質の向上と安全の確保をITで支えます。 ・患者の同意に基づいて収集した医療情報を研究・分析して、医療の質の向上及び患者の安全確保に努める。 ○日本医師会は、国民皆保険をITで支えます。 ・日医が開発するレセプト処理システムを電子カルテメーカーに提供、普及させることで、保険医療機関経営の原資となる診療報酬を請求するためのインフラ整備を行い、国民皆保険を堅持する。 ○日本医師会は、地域医療連携・多職種連携をITで支えます。 ・電子カルテのない医療機関でも、電子化された医療情報で地域医療連携を行うことができるようなツールを開発、提供する。 ○日本医師会は、電子化された医療情報を電子認証技術で守ります。 ・全ての医師に「医師資格証」を普及させる。 ・保健医療福祉分野の電子認証局(HPKI)の事業発展と安定した運用を行う。 ・「医師資格証」のユースケース拡大を図るとともに、身分証明書としての認知度も向上させる。 |
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