横倉義武会長は8月10日、釜萢敏常任理事と共に厚生労働省を訪れ、看護基礎教育の問題について、塩崎恭久厚労大臣と会談を行った。
会談では、釜萢常任理事が資料を基に、(1)厚労省の推計では2025年に10万人程度の看護職員の不足が見込まれている中で、地域包括ケアシステムを担う看護職員の確保は、今後の超高齢社会を左右する喫緊の課題となっている、(2)看護系大学は増加しているものの、看護師(3年課程・5年一貫教育)と准看護師の卒業者数を合計しても、まだ平成10年当時の水準には至っていない、(3)看護系大学は県内就業率が平均54・3%と低い一方、看護師3年課程養成所の県内就業率は平均78・4%と高く、地域の看護職員の確保には、その地域の出身者が多い養成所が非常に大きな役割を果たしている―ことなど、看護師養成の現状について説明。
その上で、日本看護協会などが求めている看護基礎教育の大学化・4年制化については、①経済的な理由等により、看護師志望者が大きく減少する可能性が高く、社会人の志望者も減ることが考えられる②教室や専任教員の増加が必要になるが、物理的にも人材確保の点でも対応が困難であることから、養成所の閉校により、養成数の大幅な減少を招く③看護職員の需給が逼迫(ひっぱく)し、看護職員の働き方にも重大な影響を与えることになる④看護師の勤務環境の改善やワークライフバランスへの取り組みを進めるという観点からも逆行している―等の問題点を明示。「これらの点を考えても、看護基礎教育の大学化・4年制化は容認することはできない」として、理解を求めた。
これに対して、塩崎厚労大臣は、「いろいろな問題があることは、今回の説明でもよく分かった」とした上で、「わが国ではこれから多死社会となることを踏まえて、今後、どういう医療が必要になるのか、将来的なビジョンを作成する必要があると考えている。看護師の質を上げることは国民の要望でもあり、今回の問題もその中で考えていきたい」と応じた。