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令和7年(2025年)7月5日(土) / 日医ニュース

「がん対策~予防、医療、共生~」をテーマに開催

鶴田課長鶴田課長

鶴田課長鶴田課長

 「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」第4回シンポジウムが5月25日、「がん対策~予防、医療、共生~」をテーマに、日本医師会館大講堂とWEB会議のハイブリッド形式により開催された。
 当日は渡辺弘司常任理事の司会により開会。冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、本シンポジウムのテーマであるがんについて、日本人の死因の第1位であり、現在では年間約40万人が亡くなっていることに言及。「日本医師会及び全国の医師会は、がんで亡くなる人を一人でも減らすため、がん対策を始め地域保健・公衆衛生活動に真摯(しんし)に取り組んでおり、本シンポジウムを通じて、そうした取り組みへの理解が深まることを期待したい」と述べた。
 続いて、基調講演(座長:渡辺常任理事)として鶴田真也厚生労働省健康局がん・疾病対策課長が、日本のがん対策の歴史や現状、第4期がん対策推進基本計画について説明。がん対策には、検診やワクチン接種による予防、がん診療連携拠点病院による医療の均てん化、緩和ケアの充実等が求められるとした。
 また、治療と仕事の両立を支援する取り組みが進められていることにも触れ、「がん患者や家族の声を反映しながら、誰一人取り残さない対策を実現するためにも医師会や地域との連携が重要になる」と述べた。

250705b2.jpg 次に、黒瀬巌常任理事が日本医師会のがん対策について説明。がん対策は「予防・治療・共生」の三本柱で成り立っており、一次予防から三次予防、そして治療を継続しながら病と共に生きる「共生」が重要になると強調。また、地域のかかりつけ医が中心となり、専門医や多職種と連携して支援を行う体制の必要性や、がん診療連携拠点病院の地域偏在の課題にも触れながら、今後も三層構造の医師会が連携し、地域に根差したがん対策を推進していくべきとの考えを示した。

講演1:一次予防

 講演1では村上美也子富山県医師会長を座長として、2題の講演が行われた。

250705b3.jpg 桶谷薫鹿児島県医師会副会長は、がん対策の入口である「予防」に関する鹿児島県医師会と自治体の連携による取り組みを紹介。離島も多い地理的特性を持つことから、検診車をフェリーで運ぶなど工夫を凝らし、住民全体に公平な検診機会を提供しているとした。
 また、生活習慣の改善によるがん予防の重要性を科学的根拠に基づいて伝え、手ばかり法や簡単な運動など、継続しやすい健康支援を実施していることを報告。
 更に、多職種による支援体制づくりや、子どもへのがん教育にも注力しており、今後も「予防に勝る治療なし」との考えの下、地域全体で予防に取り組む姿勢を強調した。

250705b4.jpg 村上富山県医師会長は、HPVワクチン接種推進における自治体との連携について、情報不足等による接種控えを防ぐため、診療体制を整備するばかりでなく、リーフレットの配布や講演、大学生への啓発活動、キャンパスでの集団接種などを展開していることを報告。今後については、接種率を毎月集計・共有するなど、自治体と協力して接種率向上を図ることにより、定期接種とがん検診を通じた子宮頸がん予防に努めていくとした。

250705b5.jpg 指定発言を行った釜萢敏副会長は、富山県医師会の取り組みを称賛した上で、子宮頸がんの多くはHPV感染が原因であり、ワクチン接種により予防が可能であることを強調。接種と検診の両立が重要であるとする一方、「本人が理解をした上で、自身の判断で接種することが大原則である」とした。
 また、日本医師会としても情報提供や広報活動を通じ、接種率の向上に努めてきたとし、今後は男性への接種も視野に入れ、接種体制の整備を進めていく考えを示した。

講演2:二次予防と治療

 続いて、講演2では松山正春岡山県医師会長を座長として、2題の講演が行われた。

250705b6.jpg 萩原弘一大宮医師会メディカルセンター長は、医師会共同利用施設について説明。医療機関の連携や医療スタッフの教育研修、健診・検診の推進を目的として、地域医師会が設立・運営しており、特に肺がん・胃がん検診では専門医による二重読影を行うなど、がん検診の質を高めているとした。
 また、非常時には医師会のネットワークの中心として機能する重要な役割も担っているとし、「今後は設備やICT体制の強化を進め、司令塔としての役割も果たすことが求められている」と述べた。

250705b7.jpg 広瀬真紀福井県医師会副会長は、がん診療連携拠点病院と連携するネットワークの重要性について詳説。福井県では、「がん連携パス」や相談支援センター、緩和ケア研修などを通じて連携拠点病院との連携を強化することによって、県内のどこに住んでいても均質な検診を受けることができているとした。
 更に、がん教育や新しいがん登録制度にも協力することで、患者の負担軽減と早期発見・治療の充実を目指しているとした他、今後は検診の受診率向上や職域検診の推進のための取り組みも計画中であることを明らかにした。

講演3:共生

 講演3では引き続き、松山岡山県医師会長が座長を務め、2題の講演が行われた。

250705b8.jpg 松山岡山県医師会長は会長就任以降、県民との対話のために少人数での座談会「移動会長室事業」を実施していることを報告。受動喫煙防止や感染症対策、医療のかかり方などをテーマに、これまで計117回実施し、約6700人と意見を交換。特に将来の変化に備え、将来の医療やケアを本人の意思で決める「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の普及に努めており、中高生への教育も試みているとした。
 また、ACPについては、本人や家族が尊厳を持って生き方・死に方を話し合う継続的なプロセスであるため、今後は学校教育との連携を強化し、ACPの理解と実践を促進していく意向を示した。

250705b9.jpg 磯崎哲男神奈川県医師会理事は、がん患者への在宅医療の必要性を、高齢化や死亡場所の変化に関連付けて説明。現在、自宅で最期を迎えたいという希望が多い一方、現実には病院死が約7割と多くなっているが、今後は訪問診療の需要が増大すると分析。技術等の進歩により、重症患者でも在宅療養が可能となってきていることから、これからの地域包括ケアには診療報酬等制度面の整備に加えて、多様な職種との連携が不可欠になると強調した。
 その後のディスカッションでは、黒瀬常任理事の司会の下に、演者と座長による活発な意見交換が行われ、茂松茂人副会長の総括により閉会となった。

お知らせ
 「地域に根ざした医師会活動プロジェクト」第4回シンポジウムの模様は右記の特設サイト並びに日本医師会公式YouTubeチャンネルでご覧頂けますのでぜひ、ご覧下さい。
特設サイト:https://www.med.or.jp/people/chiiki-pj/

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