松本会長
松本会長
公益的なオンライン診療を推進する協議会が6月18日、日本医師会館小講堂とWEB会議のハイブリッド形式により開催された。
本協議会は、オンライン診療を公益的な観点で適切に推進していくため、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本郵政、日本郵便、全国郵便局長会、自治医科大学、内閣官房、総務省、厚生労働省等の関係者が一堂に会したもので、この日は各団体がオンライン診療に対する見解を述べた。
冒頭、あいさつした松本吉郎会長は、利便性や効率性のみを重視した安易なオンライン診療の拡大はすべきではないとした上で、「離島・へき地、在宅医療などでは、オンライン診療が地域のかかりつけ医による対面診療を補完することも期待される。また、災害や感染症パンデミックが発生した際も、迅速かつ適切に医療へのアクセスを確保する手段の一つになる」と述べた。
更に、医療機関への物理的なアクセスが困難な状況下においては、地域の人々が集まる公共の場であり、かつ患者のプライバシー保護等しっかりとした体制が取れる郵便局を活用することが有効的であると強調。
オンライン診療の適切な推進のため、へき地医療に多大な貢献をしてきた自治医科大学の協力も得て、医療機関や郵便局など多くの関係者と連携すべく、オンライン診療を公益的な観点で適切に推進していくとして、本協議会を設置することの意義を説明した。
また、自見はなこ参議院議員と長谷川英晴参議院議員があいさつ。自見議員は、「全国どこにいても地域格差なく医療提供サービスが確保されることが重要だが、地方では人口減少が著しく、医療従事者の高齢化などもあり大変難しい」として、13日に閣議決定された「地方創生2・0基本構想」に郵便局を用いたオンライン診療が明記されたことに期待を寄せた。
長谷川議員は、条件が厳しい地域にも郵便局が残っているのは、過疎地においても現行水準の局を維持することが法律に明記されているためであるとし、郵便局を拠点として地域を守っていくことが可能であるとした。
ビデオメッセージであいさつした永井良三自治医科大学長は、「5000人以上の医師が本学を卒業して地域医療に従事してきたが、人口減少によってへき地等で勤務する医師の確保はますます困難になると予想される」と述べ、オンライン診療が医療を提供するための重要な手段になると強調。同大では、地域医療学センターに相談窓口を設置してオンライン診療も含めた相談支援を行っていくとし、郵便局の活用状況を含め、へき地等におけるオンライン診療に関する調査を実施していることを報告した。
続いて長島公之常任理事が、本協議会設置の趣旨を説明。これまでオンライン診療は、アクセスが制限されているへき地や通院が困難な場合等において進められてきたが、今後、在宅医療の需要増などに伴ってそのニーズが高まることが見込まれるとした上で、「現在、在宅診療はもとより、郵便局など地域住民が集まる場でのオンライン診療や、移動診療車の活用などが検討されているが、全国で適切に推進していくためには、オンライン診療を実施する医療機関や郵便局等の実施主体が都道府県や市区町村、地域の医師会、歯科医師会、薬剤師会など多くの関係者と連携して進めることが効果的である」と述べた。
意見交換
佐原博之常任理事は、日本医師会の役員になる前から、石川県七尾市で郵便局のオンライン診療の実証事業に携わっていたことを説明。患者には好評であったものの、ランニングコストの負担が課題であるとした。
小野寺哲夫日本歯科医師会常務理事は、処置が中心となる歯科においては、歯科医師が歯科衛生士に指示して口腔(こうくう)衛生処置を行う形のオンライン診療が主になるとし、歯科医のいない地域も増えていることから、積極的に協議に臨む姿勢を示した。
渡邊大記日本薬剤師会副会長は、オンライン診療を受けた患者に対面で対応するのか、もしくはオンラインで服薬指導をするのか、医療安全の観点から検討を重ねていく必要があるとした。
橋本美穂日本看護協会常任理事は、へき地や離島の看護職確保が喫緊の課題だとし、へき地に必要な看護職の確保事業を今年度から開始したことを紹介。オンライン診療推進の議論の中で看護職の確保についても検討することを要望した。
根岸一行日本郵政株式会社常務執行役(現社長)は、郵便局は過疎地において今のネットワークを維持することが求められているとして、地域の人々のニーズに応じて活用すべきとし、「地域への貢献は郵便局の非常に重要な使命であり、今回の取り組みは私どもの役割に沿ったものである」との見解を示した。
小池信也日本郵便株式会社常務執行役員(現社長)は、2万4000の郵便局の運営に当たっては、地域に根ざすことを重視しているとし、地域のニーズに応じて郵便局におけるオンライン診療に協力してきたことを報告。広域的なオンライン診療の展開に向け、協議していくとした。
勝又一明全国郵便局長会長は、地域のためにある郵便局が期待に応える取り組みをしたいと述べつつも、「オンライン診療に関して、1万9000人の会員がどこまで理解しているかは不安がある」と吐露。推進に向け、郵便局長達に働き掛けていくとした。
後藤忠雄自治医科大学地域医療学センター地域医療支援部門教授は、オンライン診療の推進は医療提供側の効率性だけではなく、交通等の問題を抱える患者側にとっても意義があるとし、郵便局を含め、公民館や廃校になった学校など、さまざまな地域の資源を活用していくことを提案した。
石原大内閣官房新しい地方経済・生活環境創生本部事務局次長は、13日に閣議決定された「地方創生2・0基本構想」について、当面の人口減少を正面から受け止め、その中で豊かな地方の生活環境をつくっていくことを目指すものだと概説。その中に盛り込まれた郵便局等を活用したオンライン診療は、大きな可能性を秘めているとした。
牛山智弘総務省郵政行政部長は、オンライン診療の推進に関して同じ方向を見ているとした上で、「それにとどまらず、さまざまな住民生活支援サービスも複合的に郵便局で提供できるような"コミュニティ・ハブ"の取り組みを進めていきたい」とのビジョンを示した。
森真弘厚労省大臣官房審議官は、第217回通常国会に提出した医療法改正案の中に、郵便局におけるオンライン診療の展開を念頭に置いた規定を盛り込んでいることに言及。同規定を活用しつつ、関係各所と協力してオンライン診療を推進していきたいとした。