「子育て支援フォーラムin秋田」が9月17日、日医、SBI子ども希望財団、秋田県医師会の共催により、秋田市内で開催された。
本フォーラムは、子育て支援と児童虐待防止に向けた啓発活動、情報提供を行うことを目的として、平成23年度から開催しているものである。
フォーラムは、小泉ひろみ秋田県医常任理事の司会で開会。冒頭あいさつで横倉義武会長(温泉川梅代常任理事代読)は、児童相談所における児童虐待の相談対応件数が年々増加している現状を憂慮。「虐待による死亡事例など、悲劇が繰り返されないためにも、社会全体で強い危機感を持つことが求められている」として、本フォーラムがその第一歩となることに期待を寄せた。
続いて、あいさつした小玉弘之秋田県医会長は、周産期からの子育て事業に取り組んでいることを紹介するとともに、「子どもを虐待から守るためには地域社会の手助けが必要だ」として、これまで以上に積極的な子育て支援に取り組んでいく考えを示した。
引き続き行われたシンポジウム(座長:小泉秋田県医常任理事)では、まず、平野秀人秋田県医児童虐待予防小委員会委員が、県医師会が行っている「妊娠中からの子育て支援事業」の現状を報告。今後の課題として、①事業の更なる周知②子育て支援エキスパートの育成③子ども家庭支援員や地域住民による地域ごとの子育てネットワークづくり―等を挙げた。
男鹿市健康子育て課健康班の加賀谷朱美氏は、妊娠から子育て期までの切れ目のない支援の提供を目的として、平成27年4月に開設した「おがっこネウボラ」について、「助産師・臨床心理士など専門職員を増員したことで、産後ケアの更なる充実が図れたこと」「妊婦一人ひとりの状況をチームで把握・共有することで、より具体的な支援につなげることができていること」などを紹介。今後は、多様なケースに対応できるスタッフの育成やさまざまな地域の関係機関との連携を図っていきたいとした。
あきた母乳育児を支える会の齊藤貴子氏は、今年度県内に導入された「母乳育児相談補助券」について、利用率は増加傾向にある一方、利用者からは「補助券の利用内容が理解できず、実際に母乳相談をしたい時には使用済みであった」などの意見もあることを紹介。①指導やケア内容の充実とある程度の基準化②利用枚数の検討③母親が利用しやすい環境整備―等を今後の課題とした上で、「一人でも多くの母親が母乳育児を続けることが虐待防止になると信じ、活動していきたい」と述べた。
加賀美尤祥社会福祉法人山梨立正光生園理事長/山梨県立大学人間福祉学部特任教授は、近代化がもたらした家族構造が子育ての"私的化"へとつながっているとの考えを示すとともに、児童福祉施設等の受け入れが限界を超え、90%以上の子ども達が保護できないままでいること等の問題点を指摘。
その上で、本年5月に改正された児童福祉法について、在宅支援を基本とする社会的養育を行うよう求めている他、財政的・人的基盤の整備は国の重要な責務であると記載されていることに言及。身近な地域で丁寧な子育て支援をしていくことこそが虐待防止につながると強調した。
内海裕美日本小児科医会常任理事は、「絵本の中の子ども達」と題し、子どもが望んでいることや発達の様子が的確に描かれている絵本は、さまざまな育児不安・不満、育児困難を抱える親が子どもを理解するのに非常に有用だとして、各種の絵本を紹介。「他の子と比較したりせず、自分の子どもの良いところをきちんと見てあげられる親を育てることが大切であり、医療者も忙しい時ほどじっくり診ることを心掛けることが子育て支援には欠かせない」とした。
その上で、虐待の連鎖は、親ではなく、自分を大切にしてくれる人に巡り会うことで断ち切ることができると言われていることに触れ、「地域内で日常の声掛けを行うなど、地域の中には虐待の連鎖を断ち切る力があり、身近なところから具体的な支援の手を差し伸べて欲しい」と訴えた。
なお、日医では今年度、同フォーラムを鹿児島、富山の2カ所で行う予定としている。