第60回社会保険指導者講習会(日医・厚生労働省共催)が、「アレルギー疾患のすべて」をテーマに、10月5、6の両日、日医会館大講堂で開催された。
羽鳥裕常任理事の司会で開会。冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、近年、アトピー性皮膚炎や、花粉、ハウスダストなどによるアレルギーに悩む人が増加している状況に触れ、「軽微なものから命に関わる重篤なものまでさまざまだが、軽微であってもQOLを著しく低下させることから、国民にとって身近で関心の高い疾患の一つである。迅速かつ正確な診療を行うことが、我々医師に求められている」と述べ、本講習会の活用を求めた。
また、昨年閣議決定された「骨太の方針2015」において、平成30年度までの3年間の社会保障関係費の伸びを、1兆5千億円程度に抑えることを目安とする方針が盛り込まれたことや、消費税率10%への引き上げが2年半延期されたことを取り上げ、「平成30年度に予定される医療と介護の同時改定は厳しい財源の中で行われることが予想されるが、国民の健康を守るためにも、安心で良質な医療が提供できる環境を築き上げられるよう、強い姿勢で政府と協議していく」との意向を示した。
鈴木康裕厚労省保険局長のあいさつに続き、2日間にわたって、アレルギー疾患発症のメカニズム、薬物アレルギー、アナフィラキシー、小児気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚疾患等の診断と治療に関する講演と質疑応答が行われた。
2日目の午後に行われた厚労省関係の講演では、まず、迫井正深厚労省保険局医療課長が、「社会保障を巡る課題と診療報酬での対応」と題して講演を行った。
迫井課長は、地域包括ケアシステムの構築においては、地域で必要とされるサービスを地域自身が提供することが重要であると強調。また、入院時から退院後の生活を考えて、他施設・多職種と連携するなど、個々の病院医療の枠を超えた"生活視点"が必要であり、平成28年度診療報酬改定においてもこれらの観点を重要視したことを説明した。
続いて、神田裕二厚労省医政局長が、「『地域医療構想』『療養病床』について」と題して講演した。
神田局長は、本年8月までに、約4割に当たる19都府県(計128構想区域)で地域医療構想の策定が終わっていることを報告。構想区域の設定はいずれも2次医療圏と同じであり、慢性期の推計においては、97構想区域(76%)が、療養病床の入院需要率の地域差を、全国最大値(高知)から全国中央値(滋賀)まで低下する割合を利用していたことなどを説明した。
療養病床の再編に関しては、「年末に向けて施設類型の人員配置など具体的な議論を進めるが、平成29年の通常国会に法案を提出し、診療報酬が翌年の医療・介護の同時改定で決まるというスケジュールからすると、転換においては現実的な経過措置が必要だ」との見解を示した。
高額な新薬に対する三つの対応策を提示―中川副会長
講習会の最後には、中川俊男副会長が、「高額な薬剤への対応」と題して講演した。
9月に厚労省が公表した概算医療費は、総額41・5兆円と前年度より1・5兆円増加しており、その伸びはC型肝炎治療薬など抗ウイルス剤の薬剤料の増加による影響が大きいことを解説し、社会保障の財源確保が難航する中、市場規模が極めて大きい高額な新薬の薬価収載が続いていることを懸念。高額な新薬に対しては、①治癒を目指す薬剤(ソバルディ、ハーボニー)は患者の生涯医療費との比較で考える②生活習慣病治療薬(レパーサ)は従来型治療で効果の少ない症例に限る③延命を図る薬剤(オプジーボ)は丁寧で冷静な議論をする―ことが必要だとの認識を示し、「患者が、支払い能力の差によって受ける医療、使う薬が違う、ということにならないよう厚労省の審議会等で問題提起していく」と強調した。
2日間の参加者は、延べ561名であった。