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平成29年(2017年)1月20日(金) / プレスリリース / 日医ニュース

経済財政諮問会議における民間議員の発言に強く抗議する声明を公表

 横倉義武会長は昨年12月22日、前日に開催された経済財政諮問会議において、民間議員から「薬価の議論と併せて診療報酬の改定についても諮問会議で議論すべき」との発言がなされたことについて、「大それた発言であり、極めて遺憾」として強く抗議するとともに、「診療報酬は中医協で議論すべき」とする声明を公表した。
 更に、横倉会長は28日に記者会見を行い、安倍晋三内閣総理大臣にもその趣旨を電話で伝えたことを報告。「民間議員の発言は薬価の効果を知りたいとの趣旨であり、診療報酬については中医協で議論していく」との回答を得たことを明らかにした。

声明(全文)

 12月21日に開催された経済財政諮問会議後の会見において、石原伸晃経済財政政策担当大臣より、民間議員から「薬価の議論と併せて診療報酬の改定についても諮問会議で議論すべき」との意見があったと報告がありました。そして、追加説明をした黒田岳士内閣府参事官より、民間議員から、「院内、院外処方の在り方や技術料の在り方などについてもしっかりと諮問会議で議論していくべき」との意見があったことが報告されました。
 そして、質疑応答では石原大臣が、「諮問会議は日本のマクロ経済の司令塔です。一方で、中医協は厚生労働大臣の諮問機関で、厚労行政や薬価等々に関わることについて各界からメンバーが入って決められる、言わば現場です。ですから、整合性に齟齬(そご)が出るというようなご指摘は何ら当たらないのではないでしょうか。また、二重であるというようなご指摘は全く当たらないと考えています」と述べられました。
 日医では、薬価算定の仕組みの際にも中医協が議論の場であると定例記者会見で繰り返し述べて参りました。
 今回、経済財政諮問会議の民間議員から、診療報酬の改定についても経済財政諮問会議で議論すべきという大それた発言がありました。まさに青天の霹靂(へきれき)であり、極めて遺憾です。診療報酬は当然、中医協で議論すべきであります。
 中医協は、1961年の社会保険医療協議会法の一部改正以降、診療側委員と支払側委員とが保険契約の両当事者として協議し、公益委員がこの両者を調整するという三者構成をとっています。診療報酬の在り方については、これらの委員が一堂に会して議論しており、極めて民主的な会議となっています。こうした状況の下で、中医協は、先進的な医療技術の進歩を迅速に保険診療として採り入れ、技術進歩の恩恵を国民に提供するという、重要な役割を果たして参りました。
 また、中医協は、社会保険医療協議会法において、診療報酬等に関する事項について、厚労大臣の諮問に応じて審議し、文書をもって答申する他、自ら厚労大臣に文書をもって建議することができる場であることが定められています。一方、諮問会議は、内閣府設置法で内閣総理大臣の諮問に対して、調査・審議し、意見を述べる場と定められています。
 従って、診療報酬の基本骨格を議論する場は中医協であり、経済財政諮問会議が診療報酬体系について踏み込んだ議論を行うことは、法令上の観点から見ても大きな問題です。
 宇沢弘文先生は、2010年の著書『社会的共通資本としての医療を考える』の中で、「医を経済に合わせるのではなく、経済を医に合わせるのが、社会的共通資本としての医療を考えるときの基本的視点である」と述べています。
 更に、「『政府』の役割はあくまでも、これらの医療機関が供給する医療サービスが、医学的な観点から最適なものであり、かつ社会的な観点から公正なものであり、更に経済的な観点から効率的となるような制度的、財政的措置を講ずることであって、医療の実質的内容に立ち入って、介入ないしは管理は決して行なってはならない」とされ、社会的共通資本としての医療制度は、「国家官僚によって、国家の統治機構の一環としてつくられ、管理されるものであってはならないし、また儲(もう)けを基準とする市場的メカニズムに任せるものであってはならない。それはあくまでも、医療に関わる職業的専門家が中心になり、医学に関わる科学的知見に基づき、医療に関わる職業的規律・倫理に忠実なものでなければならない」と述べており、まさに宇沢先生が警鐘を鳴らしたとおりです。
 医療に対する経済の論理を強めてはなりません。国民に必要な医療を提供するには、財政の立場のみで議論することは言語道断です。日本の医療を誤った方向へ導いてはなりません。
 診療報酬こそ、まさに中医協で議論すべきことであることを強く主張いたします。

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