今年10月に開催される世界医師会シカゴ総会で、横倉義武会長が第68代世界医師会長に就任する。今号では、世界医師会について紹介する。 |
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Q世界医師会とは、どのような組織ですか
A 世界医師会(World Medical Association:WMA)は、1947年9月17日、パリにおいて27カ国の医師が一堂に会し、第1回総会を開催したことを契機として設立されました。
現在の本部は、スイスのジュネーブに近いフランスのフェルネイ・ボルテアにあり、各国医師会のNGOの連合体として、政府から独立した積極的な活動を続けています。
毎年、春に中間理事会、秋に総会を開催している他、医の倫理や社会医学に関連するテーマを中心に、個別の会議が開催され、WMAの活動内容の充実を図っています。
WMAの目的は、医学教育・医学・医術及び医の倫理における国際的水準をできるだけ高め、また世界の全ての人々を対象にしたへルスケアの実現に努めながら人類に奉仕することにあります。
WMAでは、委員会、理事会、総会などの自由に討議する場において、高い水準の医の倫理の下で活発な意見交換が行われています。そして、さまざまなテーマを取り上げ、共有すべき意見を、宣言、声明、決議として広く世界の医療界に公開し、各国の医療の質の向上に資するよう奨励しています。
その他、世界保健機関(WHO)、国連、国際赤十字などの国際機関、あるいは若手医師ネットワークという世界の若い医師に意見交換の場を提供し、こうした組織と緊密な連携を保ちながら、その活動内容の拡充と充実に努めています。
これらの活動は、各国の医師の団結を一層強固なものとし、医師としての使命を共有しつつ、医師の能力を高め、あらゆる環境において患者のケアを助け、世界中の人々の保健レベルの向上に貢献しています。
Qこれまでにどのような宣言や声明を採択していますか
A WMAの宣言や声明は、幅広い領域にわたる問題をカバーしています。主なものとしては、医の倫理の根本原則を謳(うた)った「ジュネーブ宣言」「医の国際倫理綱領」、人間を対象とした医学研究に携わる医師への倫理ガイドラインとしての「ヘルシンキ宣言」、プロフェッショナル・オートノミーの重要性を述べた「ソウル宣言」、患者の権利を扱う「リスボン宣言」などがあり、その他、さまざまな文書が採択されています。
採択された宣言や声明は、時代に合わせて更新され、医療の進展を反映した内容を保持しています。
Q現在の加盟医師会数と執行部について教えて下さい
A WMAに加盟するには、その国を代表する組織でなければならず、各国ごとに1つの医師会しか加盟することができません。現在では、世界各国の112医師会が加盟しています。
執行部は、会長職(次期、現、前)、議長、副議長、財務担当の役員6名、常設委員会(医の倫理・社会医学・財務企画)の委員長3名、事務総長で構成されており、その他、理事が25名います。
QWMAと日医との関わりは
A 日医は、1951年の第5回WMAストックホルム総会において、ドイツ医師会と共にWMAに加盟しました。その後は、1975年に「医療資源の開発と配分」を、また、2004年に「先端医療と医の倫理、ITの進歩と医療」をそれぞれテーマとして、東京総会を開催しました。
また、1971年、2014年に東京理事会、2013年にWMAヘルシンキ宣言改訂専門家会議を開催しています。
現在、横倉会長が世界医師会次期会長を務めている他、3名の理事(松原謙二副会長、道永麻里常任理事、角田徹東京都医師会副会長)を擁しています。
また、151,000人と最も多くの会員数を申告しており、会費納入実績においても最大の貢献をしています。
Q日本人でWMAの会長になるのは、横倉会長で何人目ですか
A これまでに武見太郎元会長が1975年に第29代WMA会長に、坪井栄孝元会長が2000年に第52代WMA会長に就任しており、横倉会長で3人目となります。
QWMA会長としての任期は何年ですか
A 横倉会長は、本年10月のWMAシカゴ総会でWMA会長に就任しますが、会長としての任期は来年10月にアイスランドで開催されるWMAレイキャビク総会までの1年間になります。その後はWMA前会長(任期1年)に就任する予定です。