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平成29年(2017年)11月5日(日) / 南から北から / 日医ニュース

オープンカーのネコ

 私の車の屋根は布製である。オープンカーというやつである。
 ある日、職場の駐車場に戻ると、その屋根に白い動物の毛がびっしりついていた。よくよく見ると毛は白一色ではなく、白と茶が混ざっている。フロントウインドーには肉球の足跡が点々とついていた。
 これはネコに間違いないと思った。ネコは嫌いではないが、車を汚されるのは困る。ブラシで毛を取ろうとしたが、なかなかうまく取れない。週末に時間をかけて奇麗にしたが、月曜日の夜にはまた毛だらけになっているのである。1週間放っておいたら屋根が白く見えるほどになってしまった。
 困った時にはホームセンターである。粘着テープでゴミをとる「コロコロ」という掃除道具を見つけた。早速購入して屋根をコロコロしてみた。すると、面白いように毛が取れるのである。ブラシやハタキよりはるかに簡単である。あっという間に奇麗になった。それからは帰宅前にコロコロすれば、朝には奇麗な屋根で通勤できるようになった。
 そして、ついに犯人を見つけた。やはりネコである。気持ちよさそうに昼寝している。布製の屋根のフワフワした感じがハンモックのようでネコに好まれるのだそうである(ネットで調べると同じような悩みを持つオープンカー乗りが結構いた)。
 帰宅時にまだ寝ていることもあった。つついてみたが、チラッとこちらを見るだけで起きようとしない。エンジンをかけたらやっと下りてくれた。かなり図々しいやつである。
 でも、「コロコロ」があればいくら毛がついても平気である。昼間は彼のべッドとして愛車を提供することにした。
 やがて、当院の建て替え工事が始まった。私が使っていた駐車場は真っ先に使用不可となり、少し離れた駐車場に移ることになった。その日以来、屋根にネコの毛がつくことはなくなった。掃除の手間は無くなったが、一方では何となく寂しくも感じた。大量に購入した「コロコロ」も車のトランクに詰め込んだままである。
 それから1年あまりたったある日、黒い屋根にまた白い毛を見つけた!
 以前と違い、ずいぶん長い毛である。どんなやつだろうと思っていた矢先、屋根の上に白い塊がいるのを見つけた。やはりネコである。毛足のすごく長い、高級キャットフードのCMに出てきそうなネコが寝ているのである。
 彼(彼女?)は私を見つけると近くの家に逃げ込んだ。前のやつほど図々しくはないようだが、やはり、毎日のように毛がつき始めた。布製の屋根はネコに人気のようである。再び「コロコロ」が活躍する日々が始まり、それが楽しみな毎日である。

愛媛県 松山市医師会報 第313号より

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