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平成30年(2018年)2月5日(月) / 日医ニュース

新年に当たり、現時点における医療を巡る動きに対する所信を披瀝(ひれき)

新年に当たり、現時点における医療を巡る動きに対する所信を披瀝(ひれき)

新年に当たり、現時点における医療を巡る動きに対する所信を披瀝(ひれき)

 横倉義武会長は1月9日に記者会見を行い、新年に当たって、診療報酬改定、終末期医療、今後の社会保障費抑制のための予防・健康への取り組み、消費増税への対応、働き方改革、医師偏在対策、新たな専門医の仕組み等に対する考えを述べた。以下はその概要である。

 戌(いぬ)年には「育成」という意味もあると聞いていますが、戌年に成立した公的医療保険制度は、国民が安心して仕事をし、生活を送るための基盤として大きく育ちました。
 今後、少子高齢化が進む中で、医師会のあり方、役割が非常に重要になってきます。また、ICTやAIは日々進歩しており、それを日常の診療に取り入れていくことも不可欠です。
 改革を進めていくことは勇気が必要ですが、先人の努力によって生まれた国民皆保険をより深化させる努力を今後も続けていくことが後世への使命であると改めて決意し、本年も執行部一丸となって対応して参る所存です。

財政主導で 社会保障費の伸びが抑制されぬよう医療側から提言を行う

 現時点での医療を巡る動きとして、まず、診療報酬についてですが、平成30年度は各都道府県で策定された地域医療構想が実行に移され、2025年に向けた新しい医療提供体制へ踏み出すものであり、それに寄り添う診療報酬改定としなくてはなりません。改めて申し上げますが、地域を支える医療機関の経営は基本診療料によって成り立っており、基本診療料的な評価をしっかりとすべきです。併せて、かかりつけ医機能を更に普及させるための評価が重要になると考えています。
 一方、わが国では高齢化が一層進んでいく中で、終末期医療も重要な課題となって参りますが、日医では会内の「生命倫理懇談会」の答申を踏まえ、住民あるいは医療関係者の意識啓発を目的としたパンフレットを作成し、全ての医師会員に周知・徹底を図るとともに、医療側と住民との話し合いのきっかけの一助といたします。
 また、今後はかかりつけ医の先生方の終末期医療に対する意識をより一層高めて頂くため、「日医かかりつけ医機能研修制度」のカリキュラムに取り入れ、更なる充実と活用を図りたいと考えています。
 厳しい財政状況から、医療費が青天井で増加することを心配する声もあり、「骨太の方針2018」の取りまとめに向けて、激しい議論が行われることが予想されますが、「骨太の方針2018」では、今後の社会保障関係費の伸びをどう取り扱うかが議論の焦点になると思います。
 財政主導で社会保障費の伸びが過度に抑制されぬよう、日医は、日本老年医学会の協力の下、『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き』の作成などを行ってきましたが、今後も医療側からしっかりと提言を行っていくことが重要であり、生涯保健事業の体系化や、2万2886名の日本医師会認定健康スポーツ医が地域において積極的に活動を行うなど、今後、健康寿命の延伸などを進めるため、予防・健康の事務局部門を統合・設置し、日医としてもしっかりと取り組んで参ります。
 また、昨年12月に「新しい経済政策パッケージ」が閣議決定され、「社会保障制度をお年寄りも若者も安心できる全世代型へと改革」することが記されましたが、全世代型の社会保障の中でも当初予定された医療財源はしっかりと確保しなければなりません。
 2019年10月には10%への消費増税が予定されていますが、本年末に策定される2019年度の税制改正大綱は大変重要な意味を持ちます。医療等に係る消費税問題の解決をここでしなければなりません。三師会、四病院団体協議会で方向性をしっかりと打ち出します。
 現在、働き方改革が重要な課題となっています。日医はこれまで、医療現場の実情と「応招義務」に配慮した方策を強く求めてきましたが、会内の「医師の働き方検討委員会」で取りまとめられる予定の答申も踏まえ、地域医療の継続性、医師の健康への配慮、この二つを両立できるよう、引き続き、国に対して意見を述べていきたいと思います。
 更に、本年は医療法等の改正法案が通常国会に提出され、医師の地域偏在に対して一定の是正策が講じられる予定です。日医は、プロフェッショナル・オートノミーの下で、実効性のある対策ができるよう、努めて参ります。
 そして、本年4月からは新たな専門医の仕組みが開始されます。現在、一次登録で研修先が決まらなかった専攻医希望者を対象に、二次登録が行われています。
 専門医機構においては、迅速かつ丁寧な情報発信・共有が促進され、都道府県協議会との円滑な連携の下、地域医療への影響に配慮しつつ進めることが重要です。
 一方、専門医の養成はあくまでもプロフェッショナル・オートノミーに基づき、各地域のニーズに応じて過不足なく進められることが肝要です。加えて、新たな専門医の仕組みが、今後、医学教育、臨床研修、生涯教育と連動しながら、シームレスな医師の養成、研修につながり、より質の高い医療の提供に寄与することを期待しています。
 最後になりますが、私は国民に寄り添い、国民の健康を守ることが医師の役割であり、その医師の声を基に、国に対してさまざまな政策を提言していくことが日医の役割であると考えています。
 今後も、世界医師会長、アジア大洋州医師会連合会長として、広く世界にも目を向け、理念を高く掲げ、人々の健康、福祉の向上に努めて参ります。

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