記者会見 5月1日
横倉義武会長は、4月11日と25日に開催された財務省の財政制度等審議会財政制度分科会において提示された社会保障に関する23の改革項目のうち、特に(1)医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入、(2)地域別診療報酬の活用、(3)受診時定額負担の導入―の3点に対する日医の見解を述べた。
同会長は、(1)について、「経済成長ができなかった場合、給付率で患者のみに負担を押し付けようという財務省や財政審の提案はあまりにも無責任である」と指摘。その上で、「わが国はヨーロッパ諸国に比べて国民負担率が低いという現状がある。経済成長ができなかった場合には、患者だけでなく、社会全体の負担率を調整することでカバーすべきである」と述べた。併せて、「社会全体で支えるために、働き方改革や一億総活躍社会の実現によって、元気な高齢者が活躍できるような社会をつくり、支え手を増加させることも必要である」とした。
また、医療に関しては、2年に1度、診療報酬改定が行われ、新たな医療技術を取り入れるなど医療の効率化も行われていることに言及。「現金給付である年金とは異なり、医療は現物給付であることからも、総合的に不断の見直しを行うことにより対応すべき」とした他、「財政審が指摘するように、リスクの全てを保険者などが負っているのではなく、これまでも十分に議論された上で、低所得者への配慮をしつつ患者負担も上昇している」とその現状を説明した。
(2)については、既に4月11日の定例記者会見で問題点を指摘しているが(別記事参照)、「都道府県ごとの診療報酬の設定は、県境における患者の動きに変化をもたらし、それに伴う医療従事者の移動によって地域における偏在が加速することで医療の質の低下を招く恐れがある」として、改めて反対の姿勢を示した。
(3)については、日医ではこれまでも繰り返し反対しているが、「受診時定額負担が導入されれば、かかりつけ医の普及に水を差すことになり、今後の医療提供に重大な影響を及ぼす」と指摘する一方で、「大病院と中小病院・診療所の外来の機能分化の観点からは、大病院の直接受診については是正も必要ではないか」と述べた。
また、かかりつけ薬剤師・薬局以外への定額負担については、「そもそも薬局のあり方自体をまず議論することが重要である」と主張。「国民の保険料、税金、患者自己負担が原資となっている社会保障費が社会保障の再生産に回るのではなく、株主に還元されることは大きな問題である」とした上で、「例えば、社会保障財源で事業を行う法人のあり方や、保険調剤における収支決算を別途開示すること等、関係審議会等で検討していくべきである」と指摘した。
更に、財政審が「費用対効果が″悪い"ものについては、保険収載を見送るべき」としていることについては、「費用対効果は、保険償還の可否には用いるべきではない」と強調。「生活習慣病治療薬や抗がん剤などには『最適使用推進ガイドライン』が定められているが、医療側も患者の症状や特性に応じてコスト意識を持った上で、まずはプロフェッショナル・オートノミーに委ねるべきである。その上で、更に極めて高額な医療を行う場合には、例えば更生医療給付のように、医学的・社会的観点も踏まえた意見を聞くことも必要ではないか」と述べた。
最後に、横倉会長は、「先に医療費削減ありきではなく、健康増進を目的とした政策の結果として医療費が削減されるという取り組みを地域において進めていくことが重要である」と改めて強調。その上で、日本健康会議の取り組みが各都道府県に波及することを目的として、日医で6月15日に都道府県医師会予防・健康づくり(公衆衛生)担当理事連絡協議会を開催することを明らかにするとともに、引き続き、国民の疾病等の予防・健康づくりを支援していく考えを示した。
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