定例記者会見 5月30日
横倉義武会長は、財務省の財政制度等審議会(以下、財政審)が5月23日に「新たな財政健全化計画等に関する建議」を取りまとめたことを受け、日医の考えを述べた。
同会長はまず、建議において「今後数年間にわたる具体的な歳出の伸びの目安を定めることが必要である」とされたものの、具体的な抑制目標は明記されなかった点について、「今年度予算で初めて増額された地域医療介護総合確保基金934億円を含め、国民が必要とする医療や介護を過不足なく受けられるよう、適切な財源が確保されるべきだ」と強調。また、5月29日、厚生労働省に対して2019年度政府概算要求に対する日医の要望を説明したこと(別記事参照)を報告した。
建議に盛り込まれた、(1)給付率を自動的に調整する仕組みの導入、(2)医療費の適正化に向けた地域別の診療報酬の設定等、(3)受診時定額負担の導入等―については、既に4月11日、5月1日の会見でも懸念を示しているが、問題が大きいとして改めて見解を表明した。
(1)については、当初、厳しい提案が出されたが、財政主導の観点だけでなく社会保障のあり方を踏まえた自民党の良識ある判断がなされたとし、「2040年に向けた社会保障のあり方は政争の具にしてはならず、政府のみならず各政党も含め社会全体で考えなければならない。社会保障制度改革国民会議のような協議の場をつくり、国民全体で合意の上、納得を得られる負担と給付を導き出すべきだ」と強調した。
また、2019年から2021年の3年間に健康寿命を延伸する取り組みを更に進め、医療費を削減していくべきだとの考えを示した。
(2)については、①県境における患者の動きに変化をもたらし、それに伴う医療従事者の移動によって地域における偏在が加速する②公立病院の赤字が拡大することによって都道府県の補?(ほてん)額が増加する③医療機関が設備投資できなくなり患者が最新の医療を享受できなくなる―など医療の質の低下を招く恐れがあることから容認できないとした。
(3)については、これまでも繰り返し導入に反対してきたとおり、まずは他の方法によって財政再建に取り組んでいくべきだとした。
一方、建議には、「金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの導入」など、日医と方向性を同じくする項目もあるとし、「社会保障の理念に基づき、所得や金融資産の多寡に応じた応能負担を進めていくべき」との見解を示した。
これらを踏まえ横倉会長は、社会保障を持続可能なものとするため、医療界からも積極的に提言をすべきであるとして、5月10日に開催された自民党の「財政再建に関する特命委員会」のヒアリングにおいて、①健康寿命の延伸②薬剤の適正処方に関するガイドラインの作成③保険料の上限撤廃④被用者保険の保険料率を協会けんぽ(10%)に合わせて引き上げ⑤国民負担率の引き上げ⑥企業の内部留保の給与への一部還元―など、財政再建に向けた提言を行ったことを説明。
この他、5月17日に総理官邸で開催された未来投資会議において、全ゲノム解析を利用した医療の広がりを取り上げたことに触れ、ゲノム情報を医療現場で利用するために、膨大な情報を処理し、研究者から医療従事者へ、また、医療従事者から患者やその家族へ分かりやすく伝えるような取り組みを日医としても支援していく意向を示した。
更に、同日開催された内閣官房の健康・医療戦略参与会合において、「医療の国際貢献」として、日本で来年開催される「G20」に併せた「H20(Health Professional会合)」の開催を提案したことを紹介。H20では、世界医師会加盟医師会とWHO地域事務局がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進をテーマに議論する場を提供し、各国政府にそのための財政支援を求めたいとした。
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