平成30年(2018年)7月20日(金) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース
第Ⅸ次学術推進会議報告書「人工知能(AI)と医療」について
羽鳥裕常任理事
定例記者会見 6月20日
羽鳥裕常任理事は、第Ⅸ次学術推進会議が会長諮問「人工知能(AI)と医療」に対して、検討結果を取りまとめ、6月7日に、清水孝雄座長(前日本医学会副会長/国立国際医療研究センター理事)より横倉義武会長宛てに答申したことを報告し、その概要を説明した。
報告書は、「Ⅰ.はじめに」「Ⅱ.人工知能の基礎」「Ⅲ.人工知能と医療応用例」「Ⅳ.人工知能―医療と倫理、法、そして患者」「Ⅴ.まとめと提言」で構成されている。
Ⅱ.では、基本認識として、①人類の知能を人工知能(以下、AI)が凌駕(りょうが)する技術的特異点(シンギュラリティ)が到来するという説があり、ひとたびその臨界点を突破すると、AIの進歩を予測することは困難となることから、AIの利活用に期待する一方、悪用についての懸念もある②倫理的・法的・社会的課題(ELSI:Ethical, legal, and social issues)の検討は急務である③医療分野のさまざまな情報(臨床情報、各種検査値、画像、病理など)が構造化され、遺伝的要因と環境的素因、遺伝型(Genome)と表現型(Phenome)の膨大な情報と併せて解釈されることで、革命的変化が医療・健康領域にもたらされると考えられる④医療のAI利活用において、米・中のIT企業が日本市場を寡占化してしまうことが懸念される他、医療健康情報は一度電子化されると容易に転送可能であり、国策としての対応が急務である―などが述べられている。
Ⅳ.では、①AIの利用などデジタル医療を実現するための次世代医療基盤法の取り組みについては、臨床現場でのAIの活躍には、ディープラーニングの段階では教師データを含むデータが、機械学習の段階では品質のよいデータが大量に必要になるため、AIによる診療支援システムの開発と、品質のよいデータをできるだけ多く集め、学術のみならず、企業の研究開発にも使うことのできる社会的な仕組みは、車の両輪であるとしている。
また、②医療AIの展開とELSIについては、厚生労働省「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」報告書で指摘された、「個別のAI技術の開発が進んだ場合であっても、AIの有効性・安全性の確保が十分でなければ、実用化されるべきではない」「人の生命に関わる分野であり、有効性・安全性の確保は極めて重要」との内容は重要視されるべきであるとしている。
Ⅴ.では、①心電計・尿血液分析装置での自動診断など、AIの一部は医療領域で既に導入されており、医師の業務は大きく低減された②AIの医療領域利活用は、この数年で劇的に進み、専門領域にもよるが、医療における医師の役割は大きく変わる可能性があり、大量のビッグデータがAIにより統合的に利用・解釈・学習されることで、医療・健康領域の新たな特徴量が抽出されるかも知れないとしつつ、AIのリスク、更には限界とあるべき姿については十分に認識しておかなければならない③データを基にした診断は最終的には医師の責任で行うべきであり、患者や家族に寄り添い治療方針を提示するのもまた人間としての医師の仕事である―などの提言がなされている。
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