第14回男女共同参画フォーラムが5月26日、高知市内で開催された。
田村章高知県医師会副会長が開会を宣言。続いてあいさつに立った横倉義武会長は、昨年、日医の男女共同参画委員会と女性医師支援センターが共同で、国内の全病院に勤務する女性医師を対象に8年ぶりに実施した「女性医師の勤務環境の現況に関する調査」について触れ、「男女共同参画は経済政策としてのみ女性の活躍を推進していくものではなく、女性であることでキャリアを断念することがないような環境を整え、共に未来の医療を支えていくことが重要である」と述べ、日医でも引き続き、男女共同参画に積極的に取り組んでいく姿勢を示した。
また、医師自らも働き方を考え、変えていく時期にきているとして、会内に「医師の働き方検討委員会」を設置して検討を重ね、4月に答申が取りまとめられたことに言及。その上で、「今後も地域医療を守り、勤務医の健康を守る制度を構築するため、会内に新たに設置した『医師の働き方検討会議』で更に検討を続け、厚生労働省の検討会等に医療界の総意として提示できるよう、しっかりと議論を行っていきたい」と述べた。
岡林弘毅高知県医師会長は、「長時間労働の改善に向けた働き方改革が論議されているが、医師も例外ではない。女性が働くための環境整備も大切であり、女性医師の活躍を後押しするためにも、その働き方や就労支援に一つひとつ対応していかなければならない」と述べた上で、本フォーラムが、医療環境の改善と地域の活性化、国民の健康増進に寄与することに期待を寄せた。
来賓の尾﨑正直高知県知事(岩城孝章高知県副知事代読)は、同県では、県の基本政策の一つとして「女性の活躍の場の拡大」を掲げており、院内保育所の運営に対する助成や、女性医師の復職に向けた研修、医療機関の勤務環境改善に積極的に取り組んでいると説明。「今回のフォーラムのメインテーマである"次世代がさらに輝ける医療環境"を目指して、今後もこうした取り組みを強化していきたい」とあいさつした。
基調講演「次世代につながる生命科学とは」
基調講演「次世代につながる生命科学とは」では、高橋淑子京都大学大学院理学研究科生物科学専攻動物学教室教授が、生命科学者の立場から、発生生物学における個体発生の仕組みやアプローチの仕方について、自身が行っている研究の様子を実際の映像を交えながら解説した。
高橋教授は、「発生生物学は、さまざまな遺伝病の解明やiPS細胞に代表されるような再生医学に大きく貢献してきたのは言うまでもない」と説明。その上で、「創造性豊かな研究こそが次世代を支える」と述べ、「若者が次世代の科学を牽引するためには、知的活動を伴う強い好奇心の醸成が必要である」と強調した。
報告
報告では、小笠原真澄日医男女共同参画委員会委員長が、同委員会が実施した具体的な取り組みや、平成28・29年度の会長諮問「医師会組織強化と女性医師」に対する答申等について概説した。
今村定臣常任理事は、女性医師バンクを始めとする日本医師会女性医師支援センター事業の運営状況を報告し、今年度は、広報活動を強化するとともに、都道府県医師会との連携の下、女性医師バンクの更なる就業実績増加、病院長等を対象とした交流会の再開、病児・病後児保育の実情把握等、女性医師支援策の一層の強化を図る予定であるとした。
シンポジウム
引き続き、「次世代がさらに輝ける医療環境をめざして~超高齢社会で若者に期待する~」をテーマとするシンポジウムが行われた。
(1)「偶然と集いの医療環境マネージメント:高知の試み」では、倉本秋高知医療再生機構理事長が、「医療従事者が高知を基盤に日本で一番の生涯学習、キャリア形成を行える環境を整えたい」との思いから、「高知にいても」から「高知にいるからこそ」勉強ができるシステムづくりを目指して、若手医師のキャリア形成支援を実施したところ、県内の研修医のマッチング数がそれまでの約1・5倍に増加したこと等を報告した。
(2)「若手医師が考える少子高齢時代のキャリア形成」では、3月まで研修医であった児玉加奈氏が、「地域枠で入学した高知大学では、日常生活、大学での講義や実習、臨床研修を通じて高齢者と接する機会が多く、少子高齢社会を実感するとともに、少子高齢社会における医療のあり方について、身近なものとして興味を持つことができた」と述べた他、「さまざまな場所でたくさんの先輩・同期・後輩に出会い、多種多様な考え方や働き方を見聞きすることは、かけがえのない経験だった」と振り返った。
研修医の岡村徹哉氏は、研修医で組織する任意団体「KOCHI RESI(コーチレジ)」が行った数々のプロモーションやイベントなどの活動内容を紹介。「ノーリスクで話し合えるコミュニティが出来上がれば、新しい世界が見えてくる。そんなヒトの輪が広がれば、さまざまな医療問題は解決すると思う」と述べ、「ヒトのつながり」の重要性を強調した。
(3)大西恵理子オレゴン健康科学大学家庭医療科助教授は、「女性医師の現状、米国オレゴン健康科学大学、家庭医療科の現場から」と題して講演し、同大学の家庭医療研修プログラムでは、ジェパディーシステム(欠席の研修医の任務をカバーする仕組み)があること、また、最近10年の統計では、女性研修医の約4人に1人が妊娠しており、男性研修医の27%が育児休暇を取っていることなどを報告した。
更に、家庭医療研修中に2回妊娠した女性は、「親になることは人間として大事なこと。医学的知識のみではなく、人間としても成長できた」と述べていたことを紹介した。
(4)「高知県医師会・高知県女医会の活動について」では、計田香子高知県医師会常任理事が、高知県医師会の男女共同参画の取り組みについて報告を行った他、昭和15年に会員相互の親睦と医道の向上を図ることを目的として、高知県の女性医師25名で発足した高知県女医会の現在の活動状況等を紹介した。
「総合討論」では、シンポジスト5名と会場の参加者とが熱心なディスカッションを行った。
続いて、第14回男女共同参画フォーラム宣言採択に移り、児玉・岡村両氏が「第14回男女共同参画フォーラム宣言(案)」を読み上げ、満場一致で採択された(別掲)。
その後、次期担当医師会の佐藤和宏宮城県医師会副会長のあいさつに続いて、臼井隆高知県医師会副会長が閉会を宣言し、フォーラムは終了となった。参加者は294名。
なお、次回は、平成31年7月27日に仙台市内で開催される予定となっている。
第14回 男女共同参画フォーラム 宣言 少子高齢化が進んだ我が国において、特に地方での医師の高齢化、医師不足、地域偏在、診療科偏在は、国民が十分な医療を受けられないという危機を引き起こしており、現在その対策が急がれているところである。
女性医師の割合は増加しており、その活躍をいかに支援するかが重要であることはもはや共通認識となっている。しかし、女性医師を取り巻く環境は改善してきている一方、意識改革についてはこれからも時間をかけて取り組まなくてはならない課題である。多様なキャリア形成を支援するには医療にかかわる全ての人々の理解が不可欠であり、早期からの教育や啓発が必要である。そして、男女の差なく若手医師が将来に希望を持ち、それぞれの地域でやりがいのある勤務環境を創ることが求められている。 私たちは、医療界においての真の男女共同参画を実現するべく、男女の相互理解のもと豊かな心を持ち、多様な価値観を受け入れ、真摯に学び続け、医療のあるべき未来を逞しく切り拓く人材を育成する体制作りを進めることをここに宣言する。 平成30年5月26日
日本医師会 第14回男女共同参画フォーラム |
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